2024.09.25

アランマーレ秋田の大物ルーキー樋口鈴乃…背番号74に込められた中学時代の約束

高い得点能力を発揮してチームを引っ張る樋口 [写真]=Wリーグ
フリーライター

ユナイテッドカップでは樋口が29得点の活躍で日立ハイテクを撃破

 今シーズンよりプレミアリーグとフューチャーリーグの2部制となるWリーグ。昨シーズンの成績をもとに上位8チームがプレミア、9位以降の6チームがフューチャーに属することとなった。

 そのような中、9月21、22日にはプレミアとフューチャーとが参戦するトーナメント戦、「Wリーグ ユナイテッドカップ 2024−25」のEASTグループステージが国立代々木競技場 第二体育館にて行われた。迎えた1回戦ではフューチャーに属するプレステージ・インターナショナル アランマーレ(以下アランマーレ秋田/昨シーズン13位)が昨シーズン7位でプレミア所属の日立ハイテククーガーズに接戦の末に勝利と、大会を大いに盛り上げた。

 この試合は、序盤から日立ハイテクを追う形となったアランマーレ秋田が、第2クォーター終盤に逆転に成功すると、45−38で前半を終える。しかし、第3クォーター序盤に日立ハイテクに追いつかれてからは接戦の様相に。残り約5分の時点では7点ビハインドと苦しい状況となったが、それまでも得点で引っ張っていた樋口鈴乃がさらに加速。3ポイントシュートなど小気味よく放ったシュートが次々とリングに吸い込まれていった。そして残り約1分で同点に追いつくと試合は延長へ。延長では残り3分を切って樋口が無念のファウルアウトとなったが、キャリアのある平松飛鳥らを中心に粘り強く戦ったアランマーレ秋田が、内藤唯の活躍もあり、最後は81ー79で日立ハイテクに競り勝った。

OTの末、アランマーレが日立ハイテクに勝利 [写真]=Wリーグ


「(7月の)サマーキャンプで負けていて、絶対にリベンジしようとチームとしてやってきたので、勝ててすごくうれしいです」と、試合を振り返ったのは、3ポイントシュート5本を含む29得点で勝利の立役者となった樋口。今シーズンからWリーグの舞台でプレーするルーキーが最後はベンチから戦況を見守ったが、約40分の出場で巧みな1対1や大事な場面でのシュートなどで会場を沸かせた。

 ただ、樋口本人は自らの出来について「シュートのアテンプトがチームの中で一番多いので、もっとシュートの精度を上げないといけないと思うし、勝負所でのシュートももっと決めないといけないので、まだまだです」と、言う。また、「今は、まず点を取ることを考えています」とも現状を語った。

 というのも、白鷗大学時代はチームメートにセンターのオコンクウォ スーザン アマカ(現・白鷗大4年)やシューティングガードの三浦舞華(現・トヨタ自動車アンテロープス)といった点取り屋たちがいたため、司令塔として「アシストが基準にあった4年間だったし、シュートアテンプトもチームで一番少なかった」。だが、アランマーレ秋田では得点での役割が大きいため、「得点の方にシフトチェンジしないといけない」と考えているのだ。

「こんなにも得点にこだわったことがバスケットをやってきて今まででなかった」という樋口だが、「でも、点を取ることを求められている中でシュートが入ったらうれしいし、そういう楽しさを見つけることができています」と、笑顔をのぞかせる。それだけに、「得点とアシストをバランスよくできるようになれば」と、今後に向けての思いも語った。

中学時代のチームメートである日立ハイテク・國井の存在

 樋口は、バスケット王国ともいえる福岡県でバスケットを始めた。福岡市立長丘中学校のときは県でベスト4となったが、上位2チームまでしか九州大会に進めなかったため、全国大会や九州大会を経験したことはなかった。このとき、同級生でチームメートだったのが今回対戦した日立ハイテクに同じく今シーズンからプレーする國井仁奈梨だ。「毎日一緒にいた」(樋口)という2人は、このころ、「一緒にWリーグに行けたらいいね」と、目標を語り合ったという。

 中学卒業後は、樋口が精華女子高校、國井が中村学園女子高校と、同じ福岡県のチームではあったものの、別の道を歩むことに。樋口はこの高校時代に、大学でもともに日本一を目指す三浦と出会う。三浦の1対1のスキルを見ながら学んだことや、高校の恩師である大上晴司コーチからの指導で「1対1やハンドリングが良くなったと思います」と、振り返る。

 三浦とともに精華女子の柱として戦った3年間。3年生のときにはインターハイ、ウインターカップともにベスト8という成績も残した。そして、進学した白鷗大では頼もしい仲間とともに4年生のときには春のトーナメント戦、秋のリーグ戦、そしてインカレを制した。中でも4年生のインカレ決勝では、3年間決勝で敗れてきた東京医療保健大学を相手に21得点と爆発。チームを日本一へとけん引した。

 一方の國井も名門の愛知学泉大学に入学すると、下級生のころから試合経験を積み、大学界の注目選手の一人という存在へ成長する。大学時代も福岡に帰省したときには会っていたという2人。中学時代から掲げていた目標がブレることなく、今年、2人そろって念願のWリーグ入りを果たしたのだ。

 2人が大学時代から付けている背番号の『74』は、中学時代に國井が『7』、樋口が『4』を付けていたことから来ているという。そしてWリーグでもこの『74』を背負う。チームは違えど、國井とはこれからも目標を共有し、時に刺激し合う仲であることは変わらないだろう。

Wリーグ入り後も「74」を付けてプレーする國井(左)と樋口(右) [写真]=Wリーグ


「(今シーズンは)18得点10アシストを目標にしているので、その中で得点とアシストのバランスが取れれば。あとは…(苦手な)左ドライブを練習したいと思います(笑)」

 笑顔の似合うアランマーレ秋田のエースは、来たる1年目のシーズンに向けて気持ちを新たにしていた。

文=田島早苗

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