2025.11.20
3大会連続となるワールドカップ出場に向けて、絶対に落とせなかったチャイニーズ・タイペイ代表(FIBAランキング67位)戦。この試合の重要性を日本代表(同22位)の選手たちはわかっていた。今夏の『FIBAアジアカップ2025』では見られなかったディフェンスの強度と速いテンポを仕掛けることで主導権を握り、90-64で快勝した。
「絶対に勝たなければいけない試合」で攻守に大活躍だったのはインサイドの2人、ジョシュ・ホーキンソンと渡邊雄太だ。
チャイニーズ・タイペイは今回のWindow1では、パワーフォワードやスラッシャーの主力選手を招集できなかった事情もあってサイズの面で劣り、インサイドの帰化選手であるブランドン・ギルベックに頼らざるを得なかった。そのギルベックは試合の途中で足を攣っては、何度もベンチに下がって治療を続けながらプレーを強いられる。それほどまでに相手を追い込めたのも、日本のインサイド陣がプレッシャーをかけ続けたからだろう。日本はインサイドで主導権を握ったことでどっしりとした「軸」ができ、崩れることがなかった。
そして、大黒柱たちが存在感を示したその脇で、自身の役割を全うした仕事人がいた。ディフェンスで存在感を見せた馬場雄大と、オフェンスでアクセントとなった富永啓生だ。
この2人は、8月のアジアカップで不完全燃焼の悔しさを味わった選手たちだ。相手に強いプレッシャーをかけられると判断が悪くなって足が止まってしまう。これを勝負のイラン戦とレバノン戦で露呈したのが今夏の日本だった。アジアカップのすべての試合が終わったときに馬場は言っていた。「この悔しさはもう繰り返してはならない」と。

試合前から相手のガードに対する守備が注目されていた[写真]=吉田孝光
日本は起点となる180センチのチェンに対して馬場をマッチアップさせ、もう一人のハンドラー兼得点源のシューティングガード、192センチの林庭謙(リン・ティンチィエン)を齋藤拓実にマッチアップさせる布陣でスタートした。
通常であれば、身長からいって馬場と齋藤のマッチアップは逆になるだろう。それでも、何よりも起点を封じることが馬場に課せられた命題だったのだ。インサイドで主導権を握ったうえに、もうひとつのミッションである司令塔を封じたことで、日本は一気にリズムに乗った。トム・ホーバスヘッドコーチも「相手のエースをリングまでアタックさせなかった」と馬場のディフェンスを賞賛した。
馬場自身、ディフェンスで役割を果たしたことで、オフェンスでもいい流れがめぐってきた。これは長崎ヴェルカでの役割やプレーぶりとまったく同じで、本人も「トム監督が僕を信用してくれたので気持ちを出すことができたし、相手にストレスを与えるプレーができたと思う」とコメント。14得点、3スティールを叩き出し、指揮官の信頼に応えるプレーを発揮した。

途中出場で日本を勢いづけた富永[写真]=吉田孝光
「相手がどういうディフェンスをするか確認しながらゲームに入りました。そこで雄太さんにアシストしたりしているうちに、相手が緩んだところを意識してシュートを打ちました。今日はシュートタッチがすごく良かったので、打った瞬間に入るなと思うシュートが打てました」と言うように、ゲームの展開が読める余裕があったのも、スタートの選手たちが作ったディフェンスの流れを引き継ぐことができたからだろう。
馬場は第1クォーター、富永は第2クォーターのエンドに度肝を抜くブザービーター3ポイントを決めているが、攻守で躍動した2人は、チームを勢いづかせる仕事もやってのけたのだ。
もう一つ、チャイニーズ・タイペイ戦で見せた富永の変化は3ポイント以外に2点を取ることや、アシストやリバウンドで貢献したことだった。2点を取りにいくプレーはネブラスカ大学でも披露していたことだが、これまでの代表活動ではホーバスHCから求められていることとマッチせず、その攻撃力に迷いが見えた。それが変わり出したのは、今夏のアジアカップで得点源を任され、リバウンドに絡むようになってきたからだった。
今では「レバンガ(北海道)で3ポイント以外のプレーで貢献できていることで成長できていると思うし、日本代表でも3ポイント以外のプレーをもっと出していきたい」と手応えをつかみ始めている。

ホームで白星スタートをきった日本[写真]=吉田孝光
文=小永吉陽子
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