2017.12.26

開志国際の藤永を止めた広島皆実が八雲の奥山“封じ”に使った秘策とは!?

広島皆実は八雲学園のエース、奥山理々嘉に対して、1人の選手がべったりマークにつくボックス&1を敢行した[写真]=大澤智子
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

 12月26日、「ウインターカップ2017 平成29年度 第70回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は女子ベスト8が激突。Cコートの第1試合には3回戦の徳山商工戦で女子の大会記録となる62得点をゲットした奥山理々嘉(2年)が率いる八雲学園(東京)が登場し、2回戦で開志国際を破った広島皆実(広島)と対戦した。

 試合の焦点は広島皆実のディフェンスが奥山をいかに抑えるかにかかっていた。「八雲が勝った郡山商と徳山商工は力のあるチーム。八雲には奥山さん以外も注意しなければいけない選手もいて、普通に戦ってはダメだと思っていた」広島皆実の村井幸太郎コーチは、「これまでしたことのない」ボックス&1やトライアングル&2で奥山を徹底マークすることを選択した。

 試合の出だしはそれが奏功して、広島皆実は一進一退の展開に持ち込む。第1クォーター、先にタイムアウトを請求したのは八雲学園ベンチ。村井コーチはベンチに戻ってくる選手に向かって「よし! OK!」と声をかけた。さらに第2クォーターでは、西野梨奈(3年)、高木葵(3年)の3ポイントシュートで同点に追いついた。

 とにかく点を取られても、どこかで八雲学園の運動量が落ちるはずと激しく当たるディフェンスを試みた広島皆実。しかし、次第にファウルの数も増えていき、奥山をマークした選手たちが次々とファウルトラブルに陥った。「(新しいディフェンスを)急にやらせても徹底できないもの」と村井コーチが語った裏には、全国大会の審判の笛に適応できずに、ディフェンスのプレッシャーを調整できなかった悔しさも伝わってきた。

それまで21得点17リバウンドの活躍を見せていた三輪瑠衣(広島皆実3年)だが第4クォーターにファウルアウト[写真]=大澤智子

 第4クォーターに入ると、西野や三輪瑠衣(3年)が次々とファウルアウトしていき、広島皆実は追撃する術を失った。結局、八雲学園がこの試合でも100点ゲームを達成。100-79で準決勝へ進出した。

 試合後、村井コーチに大会を振り返ってもらった。「現在のチームとしてはやれるだけのことはやったと思う。3年生は気が強い選手が多くて、インターハイでは試合中にケンカをするのではないかというくらいだった。その後もチームはバラバラになったが、ウインターカップに向けて練習していく中でチームとしてのまとまりができ、今ではハイタッチで相手を褒めあうまでになった。いいチームになって終えたことで、これを後輩が引き継いでくれればと思う」。

 バスケットボールはマンツーマンディフェンスでのがっぷり四つの展開も見るのも醍醐味だが、相手の弱点を探り、それに焦点を絞ったゾーンディフェンスなどで本来の実力を出させない守り方を見るのも楽しい。ましてや選手の能力が劣っていたとしても、チームでいろいろなディフェンスを仕掛けることで勝利をたぐり寄せることもできる。

 広島皆実は2-2-1のゾーンプレスや1-3-1のハーフコートゾーンを駆使して、開志国際のエース、藤永真悠子(3年)を封じ込ませるなどして、今回のウインターカップにしっかりと爪痕を残したと言えるだろう。バスケットボールの奥深さを感じさせてくれるチームだった。

「今できることをすべてやってくれた」と、広島皆実の村井幸太郎コーチは選手たちを称えた[写真]=大澤智子

文=入江美紀雄

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