2019.12.27

「自分を信じてくれてありがとう」――野本美佳子が東京成徳大の中高6年間に閉幕

高校3年目となった今年はキャプテンを務めた野本[写真]=新井賢一
フリーライター

シュートが入らない中、「リズムをつかめると思い、ディフェンスから頑張りました」と奮戦

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」(以降、ウインターカップ)の女子3回戦、東京成徳大学高校(東京都/開催地)は聖カタリナ学園高校(愛媛県)の前に61-67で敗れた。

 もっとも、試合の大部分でリードを保持していたのは東京成徳大学だった。小関笑(3年)が25得点12リバウンド、山田葵(2年)が15得点を奪う活躍で主導権を握った。

 ディフェンスでは野本美佳子が池松美波(ともに3年)を、山田が森美月(3年)をガード。「3ポイントシュートを打たせないように守り、ドライブに対してはみんなでヘルプしようと話をしていました」と森のディフェンダーという大役を務めた山田は言う。

山田(左)は後半途中まで、森(右)へ好ディフェンスを見せていた[写真]=新井賢一

 そしてキャプテンの野本はこの試合、10本放ったショットが全てリングに嫌われていた。そのため、フリースロー2本の2得点に終わったが、「ディフェンスから頑張っていけば、シュートのリズムをつかめると思っていました。相手は4番(池松)と5番(森)で点を取りにくるので、外周りの選手で止めることが大事だと思い、ディフェンスでは絶対に守ろうと思っていました」とコート上を率先して動き回っていた。

 ところが、東京成徳大学は後半途中までリバウンドやルーズボールの争いで優位に立っていたものの、後半途中から徐々に聖カタリナ学園へと流れが変わる。試合が終盤に差し掛かるにつれて、森のシュートが入り出した。

「3クォーター中盤から特にリバウンドを奪いに行けなかったり、遅れたりというのが続いてしまい、オフェンスも少し消極的になってしまった。追い上げられている展開の中、バスケットカウントやシュートファウルをもらった時に切り替えてギアを上げていければ良かったのですが、相手が逆にギアを上げてきて、そこに付いていけなかったです」と遠香周平コーチ。

 山田は「前半自分たちが勝ってて、『行けるかも』というのが心のどこかにあったので、そういう気持ちがコートに出てしまったのかもしれません」と悔やんだ。

東京成徳大学高校の指揮官を務める遠香コーチ(左)[写真]=新井賢一

「遠香先生が自分を信じてくれたことに感謝を伝えたい」という野本へ遠香コーチが送った言葉とは

「もっとできたかなと思うところが多かったです。最後の試合も、積極的に点を取れるところもあったし、ディフェンスでプレッシャーをかけていればとか、そういった色々な後悔が今は大きいです」と振り返ったのは、中学から高校まで東京成徳大学で6年間プレーし、最後の1年間はキャプテンを務めた野本。

 キャプテンとしてプレーしたことで「練習でもすごく追い込まれるし、試合でも厳しい局面で私がリードしてやっていかなければいけないので、メンタルが強くなりました」と言う野本は、チームメートと遠香コーチへこんな言葉を残していた。

「私の意思疎通ができていなくて、チームが沈んだり、迷惑をかけてしまったりすることが多かったのですが、みんなが最後までついてきてくれたこと、遠香先生が自分を信じてくれて最後までスタートとして使ってくれたことに感謝の気持ちを伝えたいです」。

ショットを決めることができなかったものの、ディフェンスで率先して動き回ってチームを支えた野本(右)[写真]=新井賢一

 そんな野本について、遠香コーチは「ガツガツと引っ張る選手ではなく、自分の頑張りを見せる中で引っ張るという職人タイプ。もともとはシューターではなかったけれど、真面目に練習して、3ポイントシュートを打つシューターになりました」と野本の成長を評価した。

 さらに「キャプテンとしてもう少し厳しさもあってもいいのかなと思うけれど、要所できちんと言うことはインターハイが終わってからできるようになってきて、本当にチームがまとまりました。感謝しています」と野本の頑張りを称えた。

 高校3年生たちにとって、ウインターカップはバスケットボールにおける集大成の場。今年から出場チームが男女それぞれ50校から60校に増えた一方、3位決定戦がなくなったため、出場チームの120校のうち最後に勝利して終えることができるチームは男女各1チームのみだ。

 この一発勝負という大舞台で、東京成徳大学は3回戦を突破することができず、惜しくも涙をのんだが、来年は「またこのコートに来て、絶対リベンジしたいです」と力強く発した山田など新3年生を中心に、東京成徳大学は新たなストーリーを作り上げてくれることだろう。

取材・文=秋山裕之