2020.12.28

準決勝の勝利後に流した悔し涙。決勝では自らの役割に徹して優勝に貢献した桜花学園・前田芽衣

キャプテンの江村とともにこの一年間、チームを引っ張った副キャプテンの前田[写真]=日本バスケットボール協会
フリーライター

  表彰台に立つ選手たちの笑顔がはじけた――。

「SoftBank ウインターカップ2020 令和2年度 第73回全国高等学校バスケットボール選手権大会」女子決勝、11年ぶりの顔合わせとなったこのカードは、前半からリードを奪った桜花学園(愛知県)が東京成徳大学(東京都)を相手に89-65と勝利。2年連続23回目の優勝を飾った。

「昨日(準決勝)、自分の調子があまりよくなくて落ち込んでしまったのですが、(決勝は)3年生最後の試合、私は1年生の時から井上先生にはディフェンスが仕事と言われていたので、オフェンスではなく、まずはディフェンスから頑張ろうと思って試合に臨みました」

 優勝会見の席で試合の感想をこう語ったのは桜花学園のシューティングガードを務める前田芽衣(3年)。

 決勝では東京成徳大のエースガードである山田葵(3年)をマークし、「東京成徳大は自分たちが得点を決めた後、すぐにボール出しから勢いをつけて点を取ってくるチーム。先生からは4番の山田さんに前からしっかりついて相手のリズムに乗せないようにという指示だったので、それをやりました」(前田)と、成徳の攻撃の要である山田に前からプレッシャーを与え続け、容易に攻撃をさせなかった。

 前田は、40分の出場で8得点6リバウンド。爆発的に得点を奪ったわけではないが、要所でのドライブや3ポイントシュートが光った。特に3ポイントシュートでは第4クォーターの残り3分半、追う東京成徳大が連続でシュートを決めた後に前田が3ポイントシュートを沈め、流れを引き戻す働きをした。

「昨日、全然自分のシュートが当たっていなくて、自信がなくなるところもあったのですが、先生が『今日なら前田は入るだろう』と言ってくれたので、今日(決勝)は自信を持って打つことができました」と前田。

 井上コーチは「3ポイントシュートが入らなかったら最初にジャンプシュートに行くように。それで入るようになったら3ポイントシュートに行くように」と前田にアドバイスを送ったことを試合後に語ってくれた。

ディフェンスに定評のある前田。数字に表れない貢献も大きい[写真]=日本バスケットボール協会

 実は前田、前日の準決勝では勝利後にロッカールームへ戻る際、まるで敗者かのように涙を流していた。役割を果たし切れなかったことへの悔しさだろう。勝ったことに満足するのではなく、自分自身の出来を泣くほどまでに悔やんだのだ。

 それでも決勝では、攻防ともに与えられた仕事をこなした前田。「ディフェンスマンとしてかっている」と井上コーチ。準決勝の出来には「3ポイントシュートを2本入れたしね」と及第点を与えていた。

 前田とともに昨年からスターターを江村もまた、優勝後に「ミスが多くてポイントガードとしての仕事が果たせませんでした。(大会として)試合の内容は良くなくて、ディフェンスの部分で課題が残りました」と言う。

 内容にこだわり、勝ってもなお満足しない。そういった勝利のために役割を果たそうとする姿勢や意識の高さが桜花学園の伝統であり、強さの源となっている。準決勝後に流した前田の涙は、改めてそのことを感じさせるものとなった。

文=田島早苗

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