2021.06.08

ケガから復帰の福大大濠・岩下准平…気迫あるプレーでチームを夏の全国へと導く

福大大濠は岩下らの活躍でインターハイの出場権を獲得した[写真]=三上太
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

勝ちたい気持ちをプレーで体現

 福岡大学附属大濠高校のガード、岩下准平(3年)がコートに戻ってきた。2020年の7月下旬に左ヒザの前十字時靱帯を断裂して以来、約10カ月ぶりの復帰である。

「1カ月くらい前、中部ブロック予選のときも練習の5対5には入っていたんですけど、病院の先生もから『前十字靱帯の断裂は10カ月でも短い。1年くらいかけないといけない』と言われていたんです。それでも絶対にインターハイに行かなければいけないから、(許可をいただいて)1カ月で試合感覚を戻してきました」(岩下)

 迎えたインターハイ福岡県予選。復帰戦となった5月29日の東福岡戦、30日の九産大九州戦、そして6月5日の宗像戦を乗り切った岩下が挑むのは、彼にとって約1年ぶりとなる福岡第一との決勝戦。新潟県で開催される「令和3年度 全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の出場権をかけた頂上決戦である。

 1年生のときは河村勇輝(東海大学2年)を擁する福岡第一に行く手を阻まれた。昨年は新型コロナウィルスの影響で大会そのものが中止に。だからこそ、高校生活最後のインターハイは彼にとって、「絶対に行かなければいけない」大会だと捉えていたわけだ。

 その強い意志は第1クォーター、最初のオフェンスに表れていた。副島成翔(2年)からハンドオフでボールを受けると、福岡第一のディフェンスとのズレができた瞬間を見逃さず、ドライブを決める。「最初の得点は気持ちの点だったと思います。絶対に勝つという気持ちでドライブを仕掛けて決めることができた2点でした」

 チームを率いる片峯聡太コーチは、岩下の復帰をこう評している。
「バスケットに対して真摯に、ひたむきに臨むことができるので、そういう意味でもチームの中心です。また私が信頼を寄せている選手がそういう在り方をしてくれるので、チーム全体が『准平がやっているなら』という緊張感も自然と生まれます。『准平よりも頑張らないと、あのレベルに近づけない』という、人に対してもいい効果が出ています」

 その言葉どおり、岩下のドライブに引っ張られた福大大濠は、エースの湧川颯斗(2年)、ベンチスタートの針間大知(3年)、注目ルーキーの川島悠翔(1年)が積極的にアタックし、次々に得点を重ねていく。「いつもだったらメンタル的にグッと押されてゲームに入って、ずっとリードされて、なんとなく追いつくけど、最終的には追い越せない。それが最近の負けパターンだったんです。そういった意味で最初に先行できたことは、あとのベンチワークがやりやすかったなと思います」(片峯コーチ)

 結果的には1点差に迫られる接戦になるのだが、序盤に大きなリードを奪い、ゲームを掌中に収めながら進めることができたのは、間違いなく岩下のオープニングドライブだった。

夏の日本一に向けてさらなる飛躍を誓う

 3年ぶりのインターハイ出場に大きく貢献した岩下だが、まだまだ“完全復活”とは言い切れない。それは他ならぬ彼自身が認めるところでもある。最大21点のリードを奪いながら最後は1点差にまで攻められたゲームを、後半に足がつった岩下はこう反省している。

「自分の足がつっていなければ、いいところでボールをもらえて、いいタイミングでブレイクも出せたと思いますし、(終盤ターンオーバーから1点差に詰められた場面も)ハーフコートに入って自分が(本山)遼樹(3年)にボールを託してしまって、ターンオーバーになったんです。あそこは自分が責任を持って、ボールをキープしなければいけませんでした」

 復帰して1カ月。体力的にも苦しく、ゲーム感覚を養うこともできていない中での福岡第一戦。「緊張もしていたけれど、ワクワクのほうが強く、楽しめましたた」とは言うものの、どこかで彼の身体を削っていたようだ。しかし、だからこそ、インターハイ出場を決めた岩下が、どこまで復活しているか注目したい。

「今回は練習試合もできていなくて、試合勘を戻すのが難しかったけれど、その中でも福大大濠での練習が一番の試合勘を戻すことにつながったと思うので、インターハイではどこと当たるかわからないけど、一つ一つ勝っていき、日本一につなげられたらと思います」

 4年ぶりの日本一へ。岩下准平の完全復活は欠かせない。

写真・文=三上太

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