2021.06.07

高校バスケ界の“竜虎決戦”は福大大濠が福岡第一に勝利…3年ぶりのインターハイへ

今年の福岡県予選は77−76で福大大濠が勝利。インターハイ出場を決めた [写真]=三上太

エースガードの復帰で福大大濠がリード

福大大濠は湧川颯斗も積極的にリングにアタック [写真]=三上太


 今夏、新潟県で行われる北信越インターハイに出場するのは福岡第一高校か、福岡大学附属大濠高校か。もちろん他校の可能性もあったわけだが、6月6日のインターハイ福岡県予選の決勝戦に進んだのは、やはり両校だった。

 この2チームは5月9日に行われた福岡県の中部ブロック予選でも一度対戦していて、そのときは59−48で福岡第一が勝っている。そして今シーズン2度目となる福岡県が誇る“竜虎”決戦は、福大大濠が77−76で福岡第一を振り切り、3年ぶりインターハイ出場を決めた。

 オープニングシュートは昨年7月下旬に左ヒザの前十字靱帯を断裂し、1週間前にコートに戻ってきたばかりの福大大濠のポイントガード、岩下准平(3年)のドライブだった。「最初の得点は気持ちの得点だったと思います。絶対に勝つという気持ちでドライブを仕掛けて、決めることができた2点でした」。福大大濠の片峯聡太コーチも「ボールの落ち着きどころができる」と信頼を置くポイントガードの復帰で、序盤から福大大濠があらゆるポジションから得点を重ねていく。エースの湧川颯斗(2年)が積極的にアタックし、ベンチスタートの針間大知(3年)もミスマッチを突く1対1で得点を重ねていった。

 一方の福岡第一は福大大濠の勢いを止めきれず、得意とする速い展開に持ち込めない。井手口孝コーチが「オールコートで仕掛けるのか、どうするのか、中途半端になっていました」と言うとおり、その隙を福大大濠にこじ開けられていく。第2クォーターの中盤、ようやくオールコートディフェンスが機能しはじめ、2年生ガードの轟琉維がコースト・トゥ・コーストからバスケットカウントを決め、さらに小田健太(2年)もファストブレイクを決めるが、片峯コーチのタイムアウトに流れを断ち切られてしまう。

 それでも前半のラストプレーでダンクシュートをたたき込んだ福岡第一のヌンビ・マトゥンガ・マイク(2年)が後半最初のシュートを決めると、星賀舞也(3年)の1対1、轟の3ポイントシュートなどで、少しずつ点差を縮めていく。しかし要所でミスを連発し、福大大濠を慌てさせるまでには至らない。

福岡第一の激しい追い込みも1点届かず

福岡第一の追い込みも福大大濠に追いつくことができず [写真]=三上太


 後半の立ち上がりこそ失点を重ねた福大大濠だったが、苦しい状況を救ったのはセンターの副島成翔(2年)だった。高さのある留学生を相手にオフェンスリバウンドからの得点をねじ込むなど、相手に傾きかけた流れを呼び戻すパフォーマンスを見せた。片峯コーチも「今日で一皮どころか“八皮”くらい剥けたんじゃないかな」と絶賛していたほどだ。

 第3クォーターを終えたところで福大大濠が12点リード。第4クォーターの残り6分21秒でも10点のリード。ただそこで簡単に終わらないのがライバル決戦。

 残り5分、福岡第一はマイクのダンクシュートで7点差にまで詰め寄り、流れを断ち切ろうとした福大大濠のタイムアウトのときにガードの城戸賢心(2年)を投入。佐藤涼成(3年)、轟と「スリーガード」を組ませてオールコートディフェンスを仕掛けると、それが見事に的中する。

 残り2分13秒、轟の1対1で2点差。福大大濠の針間と湧川の連続レイアップで6点差に押し返されるが、轟が3ポイントシュートを決め返して3点差とし、残り33秒には佐藤がドライブを決めて1点差。直後のオールコートディフェンスで星賀がスティール。ドリブルで持ち込もうとするが、そこで痛恨のターンオーバーを犯してしまう。

 ラストプレーで同点に追いつくチャンスがなかったわけではない福岡第一だったが、井手口コーチは「起こってはいけないミスが多すぎました」と敗因を語る。

 一方の福大大濠・片峯コーチは「中部ブロック予選ではトランジションの中でどれだけやれるかをテーマにしていたので、ハーフコートオフェンスが少しおざなりになっていたんです。ただ今回は岩下が復帰することでセカンドブレイクのような得点の部分と、ハーフコートの点数の取り方……岩下を中心に取るパターンと、湧川や針間のミスマッチを突いた点数の取り方に重きを置きました」と語る。終盤、ターンオーバーから猛追されてしまったが、強力なディフェンスを持ち味とする福岡第一のディフェンスから77得点をあげたことが勝因の一つといえるだろう。

 今回は福大大濠がインターハイの切符を手に入れたが、福岡第一もこれで終わるチームではない。ライバルの存在を意識しながら切磋琢磨していくことで、彼らはお互いにまだまだ伸びていく。福岡“竜虎”対決はやはり見応え十分である。

文・写真=三上太

インターハイ2021のバックナンバー