2022.12.28

U17日本代表キャプテン・石口直を生んだ東海大諏訪での3年間

準々決勝で開志国際高校(新潟県)に敗れた東海大諏訪の石口[写真]=伊藤大允
フリーライター

 この3年間、石口直(3年)はバスケットにすべてを捧げてきた。そのことに嘘偽りが一切ないからこそ、本人の口からも「努力しきった」「全部やってきた」「本当に死ぬ気でやってきたので落ち度はない」と力強い言葉が並ぶ。

 しかし、それはあくまで個人的な話である。東海大学付属諏訪高校(長野県)を先頭で引っ張るキャプテンとしては、「SoftBank ウインターカップ2022 令和4年度 第75回全国高等学校バスケットボール選手権大会」準々決勝でチームを勝たせることができず。石口は、「自分の仕事はできたのかなと思ったんですけど、キャプテンとしてはチームに気持ちや喝を入れられなかったので、まだまだ自分はダメなんだなと思いました」と自身を責めた。

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今大会の4試合では平均5.0アシストを記録すると、計14本の3ポイントを沈めるなど得点源としても活躍した[写真]=バスケットボールキング

 今年、石口はU16とU17日本代表メンバーに選ばれ、代表チームでもキャプテンに抜擢された。銀メダルを獲得した「FIBA U16 アジア選手権大会 2022」では全体2位となる平均5.2アシストを記録し、大会ベストファイブにも選出されている。

「個人としてはすごい成功」とこの1年を振り返ったが、石口は「チームを勝たせられたかというと、失敗です」と真のリーダーになれなかった自分に納得がいかない。石口はさばさばとした口調で、こうも話した。

「そのリーダーとしては全然足りなかったんだなってこの試合で思いました。個人としては、どんどん努力ができるんですけど、逆にチームを努力させることはできなかったんだなって。情熱が足りなかったというよりは、 チームを勝たせられるリーダーじゃなかった。そういう単純な自分の力不足です」

キャプテンとしてチームをけん引し続けた石口だが、「リーダーとして力不足」と自身に厳しい評価を下した[写真]=バスケットボールキング

「自分では努力できる」と言い張る東海大諏訪のキャプテンだが、実は元々できたわけではないらしい。石口を超がつくほどの努力家にしたのは、マネージャーを務める屋代和希(3年)。屋代は1年生の頃からずっと石口を支えてくれていたという。

「本当に諦めそうになったんですけど、『頑張るぞ』と言ってくれた和希に付いていったから今の自分があります。この3年間で思ったのは、自分のやりたいことに命かけてできる人間てすごく少ないなと。でも、それを可能にする日々の過ごし方とかメンタルを和希に教えてもらってここまで来れました」

 高校最後の大舞台で、石口は「どういうリーダーになれればチームが勝てるか」を改めて考えさせられた。そこは今後、大学へ進学してからの宿題となるが、その答えのヒントは3年間自分を信じて鼓舞し続けてくれた屋代和希の行動力にある。

「自分としては、それぞれの人生があるので人のことは変えられないと思ってるんですけど、そこを変えなきゃいけないんだなと。あいつが自分にやってくれたように、『一緒に頑張ろう』ってみんなを自分のレールにどんどんはめていかないとダメなんだと気づきました」

 石口が求める自分なりリーダーシップを手に入れる日は、そう遠くないかもしれない。

文=小沼克年