2023.07.29

女王返り咲きまであと1勝…桜花学園の司令塔・黒川心音は2年分の想いを「全部出しきる」

チームを決勝に導く活躍を見せた黒川心音 [写真]=伊藤大允
フリーライター

 2年ぶりの女王返り咲きを目指す桜花学園高校(愛知県)が、「令和5年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の決勝進出一番乗りを決めた。

 同校は大阪薫英女学院高校(大阪府)に苦しめられるも、最後は74-59と引き離して準決勝を突破。立ち上がりからチームのギアを上げたのは、チームキャプテンの黒川心音(3年)だ。

 初戦からの3試合、黒川は先発ポイントガードとしてコートに立つも、自身の強みである得点は「2」、「0」、「2」と不調が続いた。

 しかし、準決勝では「ここまで全く点を取れていなかったので、どんどん点を取りにいかないといけない」と果敢にリングへアタック。大阪薫英の守りを自身のドライブ、パス、シュートでこじ開け、試合を通して挙げた12得点4アシストのうち10得点2アシストを前半で稼いだ。

「今日は出だしから点を取りにいっていましたし、全面的に気持ちを出していました。キャプテンシーをすごく発揮してくれたと思います」

 指揮を執る長門明日香コーチも、この日の黒川の出来を満足そうに振り返った。当の本人は、いつも支えてくれる方の力だと感謝の言葉を送った。

「試合前も試合中も、チームメートやコーチ陣、応援してくれる人たちが『絶対勝てる』とかの声掛けをしてくれるので、そのおかげで自分も点を取ることができたのかなって思います」

出だしから積極性を示して勝利に貢献[写真]=伊藤大允


 ただ、試合を通して5つのターンオーバーを犯したことも事実。これは両チームで最も多く、「もっとチームに求められていることは大きいので、今日以上のプレーをやらなければいけないです」と気を引き締める。

 彼女は攻撃型ガードでありながら、司令塔として攻撃のコントロールもしなければならない。今年の桜花学園はシューティングガードに点取り屋の田中こころ(3年)、インサイドでは深津唯生、白石弥桜(ともに2年)といった頼もしい下級生たちが並ぶ。

 状況に応じて最適なプレーを選択することには少し苦労しているようだが、黒川は「一番はバランスよくプレーすることを心がけてます」と話し、「もっと周りを鼓舞して、できることは全部出しきりたい」と強調する。

 過去2年間は、ガード陣に横山智那美(トヨタ自動車アンテロープス)らがおり、なかなかプレータイムを与えられなかった。それでも黒川は言う。

「苦労しましたけど、そこで腐らずにやり続けたからこそ今につながってると思います。桜花学園という場所で、高いレベルの選手たちと切磋琢磨することで自分も成長できて、いろんなことを吸収できたと思っています」

 現在はチームに不可欠な存在となった。明日ももちろん、チームを束ねる司令塔、さらにはチームキャプテンとして先頭に立つ。

「チームキャプテンとしてもポイントガードとしても周りを鼓舞しつつ、 自分は冷静にプレーすることが大事。あとは強い気持ちを持って戦い続けたいと思います。明日は全員で楽しむことを忘れず、チーム力を大事にして、最後は勝って終わりたいです」

 4人の兄妹は「全員同じポジション」。バスケ一家が誇る末っ子長女は、苦しんだ2年分の想いを京都精華学園高校(京都府)にぶつける。

取材・文=小沼克年