Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
「バスケットの神様が彼女に力を与えてくれたんじゃないですか」
12月26日、岐阜女子高校(岐阜県)は「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」準々決勝で桜花学園高校(愛知県)を撃破。女王奪還を狙う相手に、第4クォーター序盤で32-53と窮地に立たされた。しかし、冒頭に記した安江満夫コーチの言葉のように、エースの神がかったプレーが大逆転勝利を呼んだ。
岐阜女子は9-2という上々のスタートを切ったものの、第1クォーター終了時点では5点ビハインド。第2クォーター、第3クォーターも桜花学園のディフェンスを前に思うようにシュートが決まらず、最終クォーターを前に15点差をつけられた。
しかしここから、絈野夏海(3年)が爆発した。
「絶対に負けないという気持ちをずっと持ち続けてプレーしました」
岐阜女子のエース兼キャプテンは第3クォーターを終えて12得点。得意の3ポイントシュートも、ここまでは7本中2本成功だった。だが、21点差の第4クォーター開始1分57秒に3ポイントを決め、同6分25秒からは3連続で長距離砲を沈めて息を吹き返す。絈野の背中に後押しされるように仲間も懸命に足を動かし続けると、三宅香菜(1年)が2本のスティールを奪ってさらに点差を縮めた。
試合終了残り1分11秒、絈野が9本目となる3ポイントをマークして57-60。次の攻撃では、またも三宅がスティールから得点を挙げて1点差。同32秒のタイムアウト明け、絈野のドライブからのシュートは外れたが、ジュフ ハディジャトゥ(3年)がオフェンスリバウンドからバスケットカウントを決め、ついに逆転に成功した。同10秒、相手のラストオフェンスを凌ぎきり、試合が終わった。
第4クォーターのスコアは31-15。この10分間で絈野は25得点を積み上げ、放った7本の3ポイントを1本も外さなかった。激闘を終え、チームメートの榎本麻那(3年)は「相手も絈野でくることはわかっていたと思うんですけど、それもわかったうえで練習してきました。それでもやっぱり絈野が決めてくれたことが勝因だと思います」と笑みを浮かべた。
絈野も仲間に支えられたことを明かし、「自分で心を整えられた部分もあるんですけど、安江先生からも『お前がやるんだろ』と言われていたし、仲間からも『セル(※コートネーム)ならできるよ! セルお願い!』という言葉をよく掛けられたので、自分がやるしかないという気持ちで戦いました」と試合を振り返った。
インターハイでは2回戦で京都精華学園高校(京都府)と対戦し、延長戦の末に敗戦。リベンジを期す今大会は、ベスト8で桜花学園と顔を合わせるブロックに入った。
「何でここなんだろう、というのが正直な気持ちでした」。絈野は笑ったが、夏の負けからチーム一丸で這いあがり、こうして1つの山場を乗りきれたことについては目を赤くしながら話した。
「夏にああいう負け方をしてすごく悔しかったんです。そこから一人ひとりが生活面でもプレー面でも見つめ直しました。辛かった時期もあったんですけど、しっかりと立て直して、こうしてチーム一丸になれたことが良かったと思います」
日本一まで残り2試合。絈野夏海がエースであることは最後まで変わりない。しかしその裏には、ともに切磋琢磨してきた頼もしい仲間の支えがある。
文=小沼克年