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『B MY HERO!』
12月24日の第4試合Cコート。東京体育館2階のチーム応援席がエンジと緑で染まる。観客のために設けられた3階のスタンド自由席エリアには、座る場所がなく一時的に立って見守る人もいた。コートエンドの撮影エリアはカメラマンが2列になって陣取った。
仙台大学附属明成高校(宮城県)vs 福岡第一高校(福岡県)。15時42分、両軍による「SoftBank ウインターカップ2023 令和5年度 第76回全国高等学校バスケットボール選手権大会」男子1回戦が幕を開けた。
7−0と幸先の良いスタートを切ったのは仙台大明成だった。佐藤晴、ウィリアムス ショーン莉音(ともに3年)の連続得点、さらには瀧豊多(2年)が3ポイントシュートをマーク。相手に初得点を許したあとも小刻みにスコアを重ね、第1クォーター中盤で13−4とリードを奪った。
同クォーターの残り3分3秒には、ギバ 俐希カトゥ(2年)がオフェンスリバウンドからシュートをねじ込んでチーム15点目。しかし、福岡第一を指揮する井手口孝コーチはじっくりと戦況を見つめ動かない。その後は逆に福岡第一が8−0のランを作って盛り返す。
15−14でスタートした第2クォーター、大きく明暗が別れた。仙台大明成は引き続き福岡第一がオールコートディフェンスを崩せず、3ポイントのタフショットを打つのがやっとという攻撃が続く。一方、福岡第一は水を得た魚のようにコートを駆け回り、みるみるうちに仙台大明成を突き放した。
1−25…。この10分間による両者のスコアが最後まで響き、注目の好カードは76−65で福岡第一に軍配があがった。試合が終わると、敗れたウィリアムスは井手口コーチのもとへ駆け寄り、ともに涙を流しながら健闘を称え合った。
「今日は(佐藤)久夫先生が見ていないものだと思って試合をしました。『もういいでしょ。静かに天国でゴルフでもしていてください』という風に自分の中では断ち切ってやるつもりでしたが、でも、最後はやっぱり込み上げるものがありました」(井手口コーチ)
「(井手口先生には)『本当によく頑張った』と声をかけていただいて、自分たちの分まで福岡第一さんが頑張ってくれると言っていただきました」(ウィリアムス)
このままじゃ終われない――。第2クォーターの10分は悔やんでも悔やみきれないが、仙台大明成はハーフタイムで修正を図り後半のコートに立った。もう一度、ディフェンス、リバウンド、ルーズボールへの意識を徹底し、モットーである『辛いときこそ明るく』という言葉をそれぞれの胸に刻んだ。第3クォーターは15−17。ラスト10分は25点ビハインドから11点差まで詰め寄り、34−20と意地を見せた。
「俊樹さん(畠山俊樹コーチ)の声掛けや自分たちでも話し合って戦えたので、3、4クォーターは自分たちのバスケットを、久夫先生からの教えを……、みんなで体現できたのかなと思います」
声をつまらせながら試合を振り返ったチームの大黒柱は、第2クォーターで3つ目のファウルを宣告された。だが、最後までコートに立ち続け、チーム最多となる21得点9リバウンド。突き動かしたのは自身のスキルではなく、この3年間で叩き込まれた「気持ち」だ。
「気持ちが下がっていたらどんなに技術があっても絶対に勝てないですし、技術がなくても強い気持ちでハッスルし続けることができれば絶対に勝利につながると思います。そういった姿勢を40分間示し続けることが、自分たち明成高校のバスケットです」
6月に急逝した佐藤久夫コーチからも、ウィリアムスはこんな言葉をかけられたという。「お前が顔を下げていたら絶対にチームは良くならないし、気持ちも入らない」。
このかけがえのない言葉は、これからの長いバスケット人生において何度もウィリアムスを救うはずだ。
文=小沼克年