2024.08.04

「予想どおり」の接戦…日本航空は“ジェリー”の不調を大道一歩、1年生Cの活躍で乗り越える

大接戦を制し2回戦進出を決めた日本航空[写真]=小沼克年
フリーライター

 8月4日、「令和6年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」が開幕し、福岡市民体育館での第2試合には前回王者・日本航空高校(山梨県)が登場。最終スコア78-69で2回戦進出を決めた。

 大いに苦しんだ初陣だった。相手は前回大会の初戦でも顔を合わせた東海大学付属諏訪高校(長野県)。昨夏も6点差で接戦を繰り広げただけに、「予想どおりと言えば予想どおりです。相手は全員がしっかりフィジカルを使ってディフェンスしてくることはわかっていました」と山本裕コーチは言う。

冷静に試合を振り返った山本コーチ[写真]=小沼克年


 しかし、立ち上がりから相手に思い切りの良いシュートを許し、速攻からも失点を重ねペースを握られてしまう。さらには、“ジェリー”ことオルワペルミ ジェラマイア(3年)が第1クォーターだけで2ファウル。第2クォーター中盤には3つ目の反則を取られ暗雲が立ち込めた。

 エースのファウルドラブルも重なり、第2クォーターで一時10点ビハインドを背負ったが、タイムアウトを挟むと徐々に追い上げを図る。ジェラマイアに代わってコートインした1年生のジャキテ ザカリア モリバがゴール下で奮闘。オフェンスでは大道一歩(3年)の3ポイントシュートも決まり、前半終了時点で42-37と逆転に成功した。

「会場も盛り上がっていたのでジェリーは張り切っていましたし、序盤はジェリーを含め全員が1人で解決しようとしていました。チームとして機能していませんでしたが、モリバがゴール下でリバウンドを取ってくれたこともあり第2クォーターはうまくいきました」(山本コーチ)

1年生ながらエースの穴を埋めたモリバ[写真]=小沼克年


 第3クォーターは18-21と我慢の展開。迎えた最終クォーター、引き離したい日本航空だったが、開始約2分でジェラマイアが4つ目のファウルを宣告され、再びモリバがコートへ。それでも、シーソーゲームとなった終盤は必死のディフェンスからモリバ、大道らの得点が決まって一歩抜け出し、熱戦に終止符を打った。

 4ファウルとなったジェラマイアは、それ以降コートに立つことはなかった。「相手からするとジェリーの方が守りやすいのかなと感じました。モリバの方が余計なことをせずリバウンドに絡んでくれますので、このままいけるところまでいこうという考えで最後まで引っ張りました」と山本コーチ。フル出場の三村デールアンソニーとともにインサイドで支えたモリバは、約18分のプレータイムで12得点9リバウンドを挙げて役目を果たした。

 両チームトップの27得点で勝利へ導いたのは、司令塔の大道だ。指揮官も「休ませたかったですけど、今日の流れですと代えるのが怖かったです。うまく繋いでくれました」と評価した攻撃型ガードは、ジェラマイアのファウルトラブル、シューターの中西哲太(3年)にもなかなか当たりが来なかったチームの危機を何度も救ってみせた。

大道は4本の3ポイントを含む27得点と躍動[写真]=小沼克年


「初戦ということで周りはなかなか調子が上がらなかったですけど、自分は去年から試合に出ている立場なので自分が引っ張ってプレーすることを意識しました。でも、最後は一人ひとりから『ディフェンスを頑張ろう』という声も出ていたので、そういうところが勝ちに繋がったかなと思います」

 そう安堵した大道は、「ディフェンスからブレイクという、自分たちらしいバスケでどんどん点数を取っていきたい」と2回戦を見据えた。

 苦しんだ末の勝利。けれどその分、チームとしてまた1つ成長できた。ディフェンディングチャンピオンは明日も目の前の試合に全てをかける。

取材・文=小沼克年