Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
ENEOSサンフラワーズとデンソーアイリスによるWリーグプレーオフセミファイナルは、第1戦を73−72、第2戦を69−67でENEOSが制し、トヨタ自動車アンテロープスとのファイナルへ駒を進めた。
2日連続の死闘をものにしたENEOS、反対にものにできなかったデンソー。この差をWリーグ11連覇中の「女王の意地」と表現する者も多いかもしれない。事実、第1戦後のインタビューでは、ENEOSの梅嵜英毅ヘッドコーチが勝利できたポイントを「私ではなく、選手たちの女王の意地だと思います」と述べている。
だが、デンソーの髙田真希は「この2試合、チームを勝たせることができなくて申し訳ない気持ちでいっぱいです」と自らを責めた。
ENEOSとの初戦、髙田は両チーム最多となる32得点を叩き出して接戦の立役者となった。ただ、チームは一時15点ものリードを奪いながら第4クォーター中盤から猛追に遭い、みるみるうちに1点差まで迫られてしまう。
それでも試合終了残り10秒、髙田が2本のフリースローを獲得し、決めれば3点リード。しかし、これを2本とも外すと、逆にフリースローを与えてしまい、ENEOSの岡本彩也花に2本とも決められ試合に敗れた。
続く第2戦でも、バスケットの神様は髙田に試練を与えた。
この日も両者ともに譲らない白熱した好ゲーム。試合終了残り6.7秒でデンソー2点ビハインドという状況だったが、デンソーはエンドラインからのスローインで同点の機会を手にしていた。
ここで、「自分たちがとにかくゴールに近いところにボールを運ぶよう指示をしました」とマリーナ・マルコビッチHC。「実際、そこにボールを運ぶことができました」と、チームが託したのはエースの髙田だ。
この時点でENEOSのチームファウルは4つ。本川紗奈生のスローインから外に開いた稲井桃子にボールが渡り、稲井はインサイドでポストアップした髙田にパスをさばいた。髙田は迷わずワンドリブルからレイアップまで持っていったが、ボールはリングまで届かず。マークに付いていた宮澤夕貴からファウルをもらうこともできなかった。
「(自分が打つとチームで)決められた形ではありましたし、そうじゃなくても自分が決めると言う気持ちはありました。昨日の逆転できるシュート、今日のシュートと2つとも自分が関わっているので本当にチームを勝たせることができなかったという申し訳ない気持ちです。あれを入れていれば、という思いもあるので……」
自分を責める髙田を、指揮官は遮るように擁護した。
「選手個人がどうこうではなく、バスケットボールはこういうことがよくあるタフなスポーツです。今回は外れましたが、次の機会では必ず髙田が決めてくれると信じています。彼女のように日本代表でもプレーしている選手たちを、これからもみんなでサポートしていただければいいなと思っています」
今シーズンはマルコビッチ新HCを迎え入れ、新たな舵を切ったデンソー。髙田や赤穂さくら、ひまわり姉妹らに加え、オフェンス力のある本川も新加入し、より選手層が厚みを増した。
新型コロナウイルスの影響により入国がままならず、チームへの合流が遅れたマルコビッチHC。「プレシーズンがなかったので、難しいシーズンになりました」と振り返ったが、「昨日、今日の試合を通じて、自分たちがシーズンを通して成長できたことを感じられました」と、一定の手応えを口にした。
2008年からチーム一筋の髙田も、マルコビッチHCと同様、新たな1年を送ったシーズンを前向きに捉えている。
「新しいヘッドコーチを迎えて、まだまだできてないことはありますけど、ボールへの執着心であったり、“戦う”という部分は少しずつでき始めたかなと感じています。今回は悔しい結果に終わりましたけど、大きな一歩を踏み出せた手応えを感じているので、この経験は絶対に忘れずに、次に向かって1日1日を大事にハードワークすることが大切だと学びました」
惜しくもファイナル進出は叶わなかった。だが、2日連続でバスケットボールの醍醐味を味あわせてくれた新生・デンソーはアイリスに、心から感謝したい。
多くのバスケファンも、きっとそう思っているはずだ。