Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
東京オリンピックの興奮も冷めやらないまま昨年10月に開幕した第23回Wリーグ。約半年間にわたり13チームが熱戦を繰り広げたが、その戦いも4月16、17日のファイナルで今シーズンのチャンピオンが決定した。
国立代々木競技場第一体育館を舞台にトヨタ自動車アンテロープスと富士通レッドウェーブの間で争われたファイナルは、トヨタ自動車の2連覇。富士通が準優勝となった。
ここでは、熱戦を繰り広げた両チームのOGにファイナルを中心とした今シーズンの戦いを振り返ってもらった。
富士通に続き、トヨタ自動車は、昨シーズンを持って現役を引退した栗原三佳さん。9年間、トヨタ自動車プレーし、リオオリンピックにも出場したシューターから見た今シーズンとは⁉️
取材・文=田島早苗
――Wリーグ連覇を達成しました。
栗原 メンバー編成も変わり、シーズンの初めは選手たちも色々なことがあって苦労していたので、よく優勝までたどり着いたなという思いがあります。それと、ファイナルの1戦目を見たときに、どんなに苦しい状況でもチームで我慢できるようになったなとも感じました。
――東京オリンピックの日本代表選手が多く、シーズン前にチームを不在にする時間も長かったです。
栗原 そうですね。チーム作りは大変そうでした。移籍選手が3人いましたが、彼女たちは前のチームでは自分がチームで中心となっていた選手たち。お互いににどこか遠慮している部分が無意識にあったと思うんです。それに、日本代表活動で開幕まで選手みんなが一緒に過ごす時間が短かった分、コミュニケーションを取る時間も短いまま開幕を迎えた。開幕後もリム(山本麻衣)とステ(馬瓜ステファニー)がアジアカップに出場したことでチームから離れる時期がありました。今シーズンは、(昨シーズンの正ガードだった)安間志織が抜けたこともあり(現在はドイツリーグでプレー)、ガードのリムの不在は少なからず影響したかもしれません。序盤はらしさが出せていないと感じました。
――そこから徐々にまとまっていった?
栗原 ヤバいなと思ったのが皇后杯(準々決勝敗退)。(対戦相手の)富士通もあの試合は決して良かったわけではなかったのに、トヨタ自動車が悪すぎて。お互いの連携、調和というのがなく、選手たちも何かしなきゃいけないけど、何をしなきゃいけないか分からない状態だったと思います。
(馬瓜)エブリンが言っていましたが、あの敗戦をきっかけに夜遅くまで選手たちがミーティングをした。詳しい内容を聞いたことはないのですが、選手それぞれが思っていることを話したことで、チームとしてまず何をやらなきゃいけないのか、何に集中しなきゃいけないのかが明確になったのではないかと思います。それを経てのお正月のENEOSサンフラワーズ戦(2試合ともに勝利)。実力はもちろんあると思っていたので、やっとチームらしくなったなと感じました。
ルーカス・モンデーロヘッドコーチは、「オフェンスはディフェンスから始まる」とよく言っているので、やらなきゃいけないことはディフェンスだと思うんですね。そこに集中できたことで自分たちのオフェンスにもつなげることができたのだと思います。
――最終的には強さを発揮しての優勝でした。
栗原 それは、あれだけメンバーがおったら強いですよ(笑)。ただ、選手がいるだけでは勝てないのも分かっていること。その中で選手たちがそれぞれ頑張って優勝という結果を出したので、そう言う意味で、やっぱり強かったですね。
――チームは、河村美幸キャプテンの存在も大きかったのでは?
栗原 タクが日本代表の選手たちがいないときなどに、移籍選手たちにチームのことを伝えていたそうです。彼女も移籍して3年目ですが、コミュニケーションが取れる選手なので、よくカバーしていたと思います。
――個性が強いメンバーたちの中でまとめ役も必要ということですか?
栗原 まとめるというよりは、なんだろ、『接着ボンド』の役割になる選手が必要で、その役割はリムとステだったと思います。年上、年下、移籍組の選手みんなとコミュニケーションを取れる位置にいるのがあの2人。彼女たちは年上にも言いたいことをきちんと言うし、試合中でもしっかりと声を出せるので、2人の存在は大きかったと思います。
――成長したなと感じる選手は?
栗原 やっぱりリムとステですね。ステは試合の苦しいときにチームとして必要なことを徹底して、率先してやっていました。劣勢の場面でチームのリズムを変えるようなプレーもしていたので、それを見たときに成長したなぁと思いました。
リムは、プレーオフでの成長具合というか、すごく積極的になったなと思いました。もともと個人技はある選手ですが、プレーオフでは自分の良さを生かすことと、周りを生かすことの棲み分けがうまくいっていた。しっかりしたなと感じました。
あとはソハナ(シラ ソハナ ファトー ジャ)が頑張っていましたね。ファイナルはちょっと調子良すぎかなとも思いましたが(笑)。でも、彼女も一年目で先輩たちに揉まれながら練習を頑張ってきたんだなと感じました。
サンとは4年間一緒にプレーしました。彼女も色々と苦労しながら頑張ってここまで来て、今年も大変なことがたくさんあったと思うけれど、いい形で終わって良かったなと思います。チームのみんなも連覇よりは、優勝してサンを送り出したいという気持ちが強かったのではないですかね。
――同じシューターの栗原さんから見てどんな選手ですか?
栗原 サンは、気持ちがめちゃめちゃ強い。責任感も強いですね。決めたことは絶対にやり切る選手だし、得点にもからむことにもすごく貪欲で。しんどくてもやらないといけないことはやるみたいな感じで、あそこまで徹底できるのはすごいと思います。
サンの競技人生の中でも、今シーズンは一番というぐらい成績良かったのでは。それも最後だから腹くくって色々できたところはあるのではないかと思います。
――昨シーズンの栗原さんもそうですが、三好選手も、まだまだできるのではないかという声を多く聞きます。
栗原 私もやろうと思えば多分できたし、サンもそうだと思います。ファンの方は、「これだけの成績を残しているのに辞めちゃうの」と思うとは思いますが、自分の変化や環境の変化など様々な理由で、一生懸命に100パーセントできるシーズンはここまでかなって思うんですよね。そうじゃないと、今度はできない自分のことが許せなくなるんです。そういうことも踏まえると、引退の時期って「まだできるのに」というタイミングになってしまうのかなと思いますね。
――話は変わり、オリンピックの活躍もあり、多くのファンが会場に足を運びました。
栗原 代々木第一の客席があそこまで埋まると思ってなかったので、オリンピック効果は大きいですね。以前からのコアなファンの方たちからすると、「だから前から言ってんじゃん」と思うと思うのですが、なかなか女子バスケットの面白さが広まらなかった。でも、今はSNSが普及した時代。そこにうまく乗っかることも大事だし、これからもそれは必要だとも感じます。
――さて、アンテロープスはこの先、どういったチームになっていって欲しいですか?
栗原 移籍選手が多く、しかもエース級の選手が集まっているので、勝って当たり前でしょと思われているところもあると思います。でも、実際のチームスポーツは個人の能力があってもチーム力がないと勝てないものです。どんな方々が見ても、「頑張ってるな、いいチームだな」って思ってもらいたいし、応援されるチームになってほしいです。