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東京羽田ヴィッキーズは、開幕戦から6試合を戦って1勝5敗。黒星が先行しているものの、シーズン初勝利は、昨シーズン4位のシャンソン化粧品シャンソンVマジックを破っての白星獲得だった。
その試合でMVPを獲得したのは13得点5リバウンド3スティールをマークした尾﨑早弥子で、体を張ったディフェンスなど数字に表れないところでの働きも光った。
「今シーズンは調子に左右されないようにと考えていて、シュートが入らないから調子が悪くなるのではなく、シュートが入らなくてもディフェンスやルーズボール、リバウンドはできること。そう意識したら、昨シーズンより多少は(好不調の)波が抑えられているのかなと思います」と、尾﨑は自身の戦いについてこう語る。
「今シーズンすごくいいですね。一番はディフェンス。ディフェンスの足があって、シャンソン化粧品戦もいいところにヘルプに行ってくれて小池遥選手たちを止めることができたと思っています」と評するのは、萩原美樹子ヘッドコーチだ。
177センチのパワーフォワードで東京羽田に入団して5年目。チームでは年齢的に真ん中に位置しているため、「分からないことがあれば先輩にアドバイスが聞けるし、まだ1、2年目の気持ちも忘れてないからこそ、後輩にアドバイスもできる。いいとこ取りでやらせてもらっています」と、笑顔を見せる。
その尾﨑が一緒にプレーできて「うれしい」というのが栗林未和だ。北海道の清田中学校や札幌山の手高校時代から全国レベルで活躍した栗林は、Wリーグでは5シーズンを富士通でプレーしたのちにシャンソン化粧品を経て今シーズンから東京羽田に加入。尾﨑とは札幌山の手高校のときに1年間、一緒に戦ってきた仲でもある。188センチの高さをがあり、今シーズンは6試合すべてに出場して1試合平均8得点という数字を残しているが、尾﨑同様にディフェンスでも大きな存在感を放っている。
シャンソン化粧品に勝利した後、尾﨑はSNSを通して、攻防において勝利に貢献した栗林についてこのようにつづっている。
「得点量産して散々ファウルも貰ってるのに4ピリ途中コートの中で急に私もっとスクリーンちゃんと当てたほうがいいかなあ?という謎相談をしてきたビッグベイビーが私のなかではMVPでした。ずっと体を張ってくれて本当にありがとう!!頼もしいよ!!」(原文ママ)
『ビッグベイビー』に込めた思いを改めて本人に聞くと、「今までチームになかった高さがあって相手のビッグマンを未和が守ってくれる。すごく頼り甲斐があるのに本人にその自覚がないというか。そういう人柄は高校の頃から変わってなくて、私にとってはどんなに頼り甲斐があってもずっとビックベイビーなんです」と、語ってくれた。
尾﨑は、トヨタ紡織サンシャインラビッツの齋藤麻未と日立ハイテククーガーズの佐藤奈々美と札幌山の手高校で同級生。当時は、齋藤と佐藤のダブルエースと大型ルーキーの栗林に注目が集まっていたため、「私は齋藤や佐藤とは立ち位置が違ったので、山の手にいる頃はWリーグでこんなに長くできるとは思っていませんでした。未和も私からするとスター選手だったので、一緒にやることは自信にもなるし、感慨深いです」という。さらに、昔から栗林を知るがゆえに、このように熱く発した。
「未和は高卒で私より先にWリーグに行きましたが、ケガに悩まされていたので、今元気にプレーしていることがうれしくて。私や齋藤とか、(山の手の)同期のみんなも喜んでいます。しかも人柄がああいう感じなので、みんなに応援されて愛されてすくすく育っています。高校の頃から愛されキャラでしたね」
一方、栗林本人も「高校で一緒にプレーしていた先輩とまた同じチームでプレーできるのはすごく楽しみでした」と、目を細める。そしてここまでの戦いに「好調です。思い切りプレーができているのは何年ぶりかなという感じです」と、声を弾ませた。
萩原HCは今シーズン、チームの“変化”を2つ挙げているが、その一つが栗林。「相手の(大型)センターに対してそれまでなら人海戦術でなんとかしようとしていたけれど、栗林一人で任せられるというのは大きいですね」という。さらに、今後の期待を込めて「故障などもあったので、試合にアジャストできるようなったのが最近。今はまだチームにフィットしている最中です」と、コメントした。
「チームの雰囲気が最高で、その中で私はやるべきことをやるだけかなと思っています」という栗林は、「苦しい時間に1本決め切れるようにしたいです」と、意気込む。
また、尾﨑とは高校時代から変わらないものがあるようで、「私がハイポストで、早弥子さんがローポストを取るのは昔からありました。なぜかよく分からないけれど、そうなるんですよね」と、微笑んだ。これに尾﨑も、「身長的には絶対に未和がローポストのはずなんですけど、器用さでいったら未和の方があるので私は下でゴリゴリ(笑)。そこは変わらないですね」と、補足する。さらには、「ハイポストにいる未和とは、私が(リング下で)面を取り出している時点で目が合うので、ハイローに対する習慣はお互いに今もあるのかなと思います」と言い、2人ならではプレーを今後も出していきたいと意欲を見せた。
東京羽田は、目標であるプレーオフ進出に向けてこれから白星を増やしていかないといけない状況だ。そのチームについて萩原コーチは、先述した“変化”のもう一つは選手層だという。
「毎回スタートのメンバーは決まらないけれど、それはその試合ごとにでいい選手が出てきてくれるから。そういった選手の『厚み』というのは昨シーズンになかったものかなと思っています」
尾﨑もまた、「例えば10点離されたときにそこから20点離されてしまうことがそれまでは課題だったのですが、今はもう1度6点に戻して、また離されても、もう1度戻すというようなことができています。自分たちのバスケットを遂行して粘り強く戦うことはみんなが意識できていると思います」と、手応えを感じているようだ。
栗林だけでなく千葉歩など多くの新戦力が加わり、今まで以上に強固なチーム力を見せる東京羽田。今後どのような戦いを見せるのか!? その中でインサイドを担う尾﨑&栗林の“山の手コンビ”にもぜひ注目したい。
取材・文=田島早苗