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3月5、6日の2日間にわたって千葉ポートアリーナでは「第11回長谷川良信記念・千葉市長杯争奪車いすバスケットボール全国選抜大会」が開催された。今大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて2年連続で中止となっており、3年ぶりの開催。今年に入って車いすバスケットボールの大会の中止が相次ぐなか、淑徳大学車いすバスケットボール学生実行委員会が感染対策を徹底したうえで実施に踏み切ったことで、国内選手たちにとっては貴重な実戦の場となった。3位決定戦、決勝はYouTubeでライブ配信され、視聴者の投票によって決定されたMVPには、初優勝した千葉ホークスの川原凜が選ばれた。
感染対策の一環として、今大会は関東圏内の4チームのみが参加する形となったが、地元の千葉ホークスをはじめ、埼玉ライオンズ、NO EXCUSE(東京)、パラ神奈川スポーツクラブと、全国大会で決勝の舞台を経験したことのある強豪がそろい、熱戦が繰り広げられた。
今大会は各チーム2試合ずつのリーグ戦が行われた後、その結果を踏まえて3位決定戦と決勝戦が行われた。リーグ戦の結果、トップ通過は2戦全勝のパラ神奈川。そして1勝1敗で千葉ホークスと埼玉ライオンズが並び、得失点差により千葉ホークスが決勝に駒を進めた。
国内随一のスピードを誇るチーム同士の戦いとなった決勝は、トランジションの速い“走るバスケ”が披露され、迫力あるプレーの応酬となった。そんななか、第1クォーターであっという間に20-10とダブルスコアでリードを奪い、試合の主導権を握ったのは千葉ホークスだ。そして、チームにいい流れを引き寄せたのが、ローポインターたちの活躍だった。
試合開始早々に東京パラリンピックメンバーの川原凜(1.5)が先制のミドルシュートを決めたのを皮切りに、国内トップレベルのスピードを誇る植木隆人(2.0)が、積極的にカットインでインサイドを攻め、得点を挙げた。第2クォーターに入ると、今度は2021年度まで強化指定選手に入っていた緋田高大(1.0)も相手の隙をつくプレーで得点。さらに第3クォーターの最後の54点目は、それまでベンチを温める時間が多かった徳丸煕(1.0)のレイアップシュートによる得点だった。
こうしたローポインターの得点力が、最大の勝因だったとキャプテンの山口健二(4.5)は語る。
「相手にすれば、まずは高さのあるホークスのハイポインターへのインサイドケアをして、ローポインターにシュートを打たせるという考えがあったと思います。でも、結果的にそのローポインターがシュートを決めてくれたおかげで、僕たちハイポインターもシュートを打ちやすいシチュエーションが増えたことが大きかったです」
その言葉通り、山口や2016年リオパラリンピック日本代表の土子大輔(4.0)といったベテラン勢に加え、今年度も強化指定選手に選ばれた若手の池田紘平(4.5)といったハイポインター陣も高確率に得点。リオメンバーで昨年千葉ホークスに復帰した千脇貢(2.5)も前半は無得点に終わったが、後半に入って本来のシュート力を発揮するなど、千葉ホークスの勢いは最後まで衰えることはなかった。
一方、パラ神奈川はダブルエースの一人、古澤拓也が欠場となる苦しいチーム事情のなかで決勝戦に臨んだ。古澤とともに東京パラリンピックのメンバーであり、パラ神奈川ではエース的存在となった鳥海連志(2.5)は、「いつもタクちゃんがやってくれている分を、みんなで補い合っていこうということを意識していた」と語る。
そんななか、奮起したのが今年度、強化指定選手に選出された丸山弘毅(2.5)だ。丸山は、古澤や鳥海、千葉ホークスの川原、緋田らとともに2017年男子U23世界選手権で4強入りした主力メンバーの一人。その丸山が、古澤の穴を埋めるかのように第1クォーターの序盤、立て続けにシュートを決めてチームを鼓舞した。
「タクがいない分、自分と連志の二人がやらなければいけないという責任を感じながら臨んだ」という丸山。第3クォーターには、この試合両チーム初の3Pシュートも決めてみせた。
そして、試合が進むにつれて、鳥海、丸山の若手に負けじと、パラ神奈川のベテラン勢も実力を発揮。特に50歳を過ぎてもなお高いシュート力を持つ園田康典(3.5)の存在が際立った。園田はベンチスタートながら10得点をマークし、健在ぶりをアピールした。
パラ神奈川と千葉ホークスとの対戦は、今年に入って2回目。1月の東日本選抜大会では、パラ神奈川が71-47で快勝していた。しかし今大会は、その雪辱を果たすかのように、千葉ホークスが70-55で撃破。大会初優勝を飾った。
3位決定戦は埼玉ライオンズとNO EXCUSEが対戦。リーグ戦で千葉ホークスを52-48で破りながら惜しくも得失点差で決勝進出を逃した埼玉ライオンズが、その鬱憤を晴らすかのように攻防にわたって圧倒。特に多彩な攻撃で得点を量産した。
朏秀雄(4.0)や大山伸明(4.5)らハイポインター陣が高さを生かしたポストプレーを披露すれば、スピードが持ち味の永田裕幸(2.0)、赤石竜我(2.5)のミドルポインター陣が果敢にカットインで得点を狙うほか、永田は第3クォーターには2本の3ポイントシュートを決める活躍を見せた。シュートを得意とするローポインターの原田翔平(1.0)も3Pシュートを含むアウトサイドのシュートを高確率に決め、チームを勢いづけた。
一方、NO EXCUSEはドイツリーグに参戦しているエース香西宏昭をはじめ、高さのある主力が不在という苦しいチームの状況にあり、コート上の5人の持ち点の合計が14点に満たない中での戦いを強いられた。そんななか、唯一のハイポインターの森谷幸生(4.0)にボールを集め、得点を狙った。
「ふだんの練習もままならない選手もいた中、少ない人数でもやれることを模索した中で臨んだ大会。チームの状況が状況だっただけに、僕がファイトしなければいけなかったし、チームがどう僕を生かそうかとすごく話し合ってくれていた。だからこそ、最後まで僕もゴールアタックし続けることができました」と森谷。厳しいマークにあいながらも、第2クォーターではチームの10得点を一人で叩き出すなど、最後まで戦う姿勢を見せた。
また、森谷の負担を少しでも減らそうと、小柄ながら機動力を使って得点を狙ったのが湯浅剛(1.5)、仙座北斗(1.5)、八木沼辰弥(3.0)だ。特に第4クォーターの終盤には、八木沼、仙座とつないだボールを最後はゴール下に走ってきた湯浅にパス。難しい体勢からのシュートを湯浅がしっかりと決めて見せたシーンは、NO EXCUSEらしさが見てとれた。
しかし、試合は68-29で埼玉ライオンズが圧勝。最終順位は優勝が千葉ホークス、準優勝がパラ神奈川、3位が埼玉ライオンズ、4位がNO EXCUSEとなった。また、3試合の総得点では鳥海が73得点でトップ。2位には60得点の森谷、3位には51得点の土子が続いた。