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1月7日、8日、スカイホール豊田で「TOYOTA U25日本車いすバスケットボール選手権大会」が開催された。男女の25歳未満や、30歳未満で車いすバスケの経験が3年未満(オーバーエイジ枠)の選手を対象とした大会で、全国の若手が集結。ブロックごとに分かれた選抜7チームに加えて、2023年に女子U25世界選手権が予定されている女子U25日本代表も特別に参加し、熱戦が繰り広げられた。東京2020パラリンピック代表3人を擁する関東選抜Aが全3試合でダブルスコア以上の大差で圧勝しての優勝。MVPには関東選抜Aのキャプテンを務めた赤石竜我が輝いた。
関東選抜Aには、まさに日本の若手を代表するトッププレーヤーがそろっていた。東京パラリンピック銀メダルメンバーの赤石(2.5)、鳥海連志(2.5)、髙柗義伸(4.0)に、彼らとともに2022年9月の男子U23世界選手権で金メダルに輝いた春田賢人(2.5)。そして日本代表候補であるハイパフォーマンス強化指定選手入りしている北風大雅(4.5)のほか、前田柊(1.5)と徳丸煕(1.0)の2人も次世代強化指定選手だ。
7人と少数でありながら、実力や経験による厚みはダントツの関東選抜Aは、1回戦でU23世界選手権金メダルメンバーの知野光希(2.0)をはじめ、3人の次世代強化指定選手を擁する甲信越・東京選抜に92-41で快勝。準決勝ではU23世界選手権に出場した山下修司(2.0)、溝口良太(4.0)など5人の次世代強化指定選手を擁する九州選抜相手に、91-19と圧勝した。さらに決勝では、U23世界選手権で重要なシックスマンとして活躍した古崎倫太朗(2.5)に加え、17歳にして次世代強化入りしている小山大斗(3.5)がいる東海北陸選抜に85-33。ほかを寄せつけない圧倒的な強さで優勝を達成した。
MVPに輝いたのは、同大会では初タイトルの赤石。東京パラリンピックまでは守備のエキスパートだった赤石だが、9月のU23世界選手権を皮切りにシューターとしても実力を発揮。今大会でも初戦で4本決めるなど3試合で7本の3ポイントシュートを炸裂し、攻防にわたっての活躍が評価されたことは間違いない。赤石自身も「磨いてきた3ポイントシュートを数字で表すことができた」と、今大会のプレーについて納得の表情を浮かべた。
その赤石を上回る得点を叩き出したのが、髙柗だ。1回戦、準決勝ではチーム最多を誇り、全3試合で77得点。強化指定選手のなかでも今最も勢いのあるハイポインターで、同世代では群を抜く存在だ。その髙柗とのホットラインでチームを勝利に導いたのが、鳥海。広い視野で常にチームメートへのチャンスメイクを図りながら、世界トップレベルのクイックネスで相手を翻弄し、自らも得点をマークした。決勝では髙柗、赤石を凌ぐ23得点の活躍でチーム最多得点を誇った。さらに北風も準決勝では髙柗に次ぐ23得点を挙げ、準決勝、決勝では3Pも決めてみせた。
こうした豪華なシューターを陰で支えたのが、いずれも次世代強化指定入りしている春田、前田、徳丸だ。相手にクロスピックをかけて味方の走路を作り出したり、素早いトランジションでベースラインまで全力疾走して相手の守備ラインを下げたり、あるいはシールで味方のシュートチャンスを作るなど、献身的なプレーが光った。JWBF会長特別賞およびオールスター5を受賞した春田は、得意のスピードを活かしたランニングシュートなどで得点にも絡み、決勝では3連続得点と見せ場も作った。
「(U23世界選手権の)金メダルメンバーの自分たちが下手なプレーはできないと考えていた」と赤石が語るように、国内トップクラスの選手がそろった関東選抜Aが見せた圧巻の強さは、同世代の大きな刺激となり、ひいては日本の底上げにつながっていくに違いない。
今大会、特別参加の女子U25日本代表を除き、7チーム60人がエントリーしたなかで10代が16人いたのは、日本車いすバスケ界にとっては明るい材料だった。そのうちの一人、成長著しく将来が期待される若手として「ライジングスタープレイヤー賞」に選出されたのが、高校1年の岡田壮矢(3.0)だ。
プレーは粗削りながらもポテンシャルの高さは、傍目から見てもすぐにわかるほどで、トランジションが速く、スピードもある。シューターとしての素質も十分あり、今年度の次世代強化指定選手に最年少の15歳で選ばれたことでも、周囲からの期待の高さがうかがい知れる。
所属チームの近畿選抜は1回戦で敗れたが、順位決定戦予選ではチーム最多となる14得点で勝利に大きく貢献。指揮官からの指示に対しても、わからないことをそのままにせず、その場ですぐに聞き返すなど貪欲さも垣間見られた。
2回目の出場となった今大会の感想をうかがうと、岡田はこう述べた。
「やっぱり日本は広かったです。自分はもっとできると思っていたけれど、皆さん強い人ばかりでした。まだまだやるべきことはいっぱいあるなと」
目指すは「すべての面で最強の選手」。近い将来、全国に、そして世界へと“岡田壮矢”の名を知らしめる日が訪れることを期待せずにはいられない。
取材・文・写真=斎藤寿子