2022.02.11
錚々たるビッグマンたちと長年にわたってしのぎを削ってきたエネス・カンター・フリーダム(元ボストン・セルティックスほか)は、自身の正義を貫き、母国であるトルコ政府との戦いを続けている。
2011年のNBAドラフトで3位指名のカンターは、リーグ在籍時代からトルコ政府の人権侵害に声を挙げており、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領を「現代のヒトラーだ」と非難し、独裁的な政治を糾弾した。
一方のトルコ政府もカンターの攻撃的な姿勢を受け、2017年に彼のトルコパスポートを失効処分。また、『New York Post』の報道によれば、カンターの名前はトルコが所持する2023年の最重要指名手配テロリストのリストに掲載されているほか、政府はカンターを逮捕するための有益な情報提供に、50万ドル(約6400万円)の懸賞金をかけたという。
身の危険を感じるカンターは、同誌に対して「(懸賞金設定は)恐ろしいほど危険だ」と語り、トルコ政府との対立に言及した。
「懸賞金が設定される以前は、トルコの諜報機関がリストに掲載されている人物たちを追いかけていました。しかし、今は金銭の欲しさに皆が人探しをしています。僕が自分のプラットフォームで何かを発言すると、それはあらゆるところに拡散されます。トルコ政府はそれを心底嫌がっており、堪忍袋の尾が切れて、僕を黙らせるためにあらゆる手段を講じているのです」
かねてから国際人権法に批判的な姿勢を示してきたエルドアン政権に対しては、その独裁性から反抗勢力も多く、2016年には同国軍の一部がクーデターを画策。この計画は未遂事件に終わったものの、政府は首謀者をはじめとするテロリストグループや、政府と対立するジャーナリストを指名手配リストに掲載した。トルコは2022年10月にメディアやSNSでの管理強化の一環として偽情報法を制定するなど、報道や言論の自由が失われつつあり、投獄されたジャーナリストは1年間で倍増しているという。
自国のスター選手であるカンターも、その影響力から政府が敵対者と認定した。アメリカ国籍を取得し、ワシントンで生活しているものの、懸賞金の設定で日常は危険と隣り合わせ。法執行機関、FBIと常に連絡を取り合っている状況で、同じ反体制派たちの安全も危惧している。
「僕は24時間、365日、監視下にあります。僕がこのように発言する理由は、指名手配リストに掲載されているのが僕1人ではないからです。多くのジャーナリスト、活動家、スポーツ選手がいますが、僕ほど名の知れた人物ではありません。彼らはより政府から標的にされやすく、しかも1人きりなのです」
「エルドアンがどういう人間なのか、世界に証明したい。西側の指導者たちはあまりにも不十分で、この独裁政治とソフトボールをプレーしているようです。外交は重要ですが、地球の裏側では人々が命や家、愛する人を失っています」
リーグとの関係も決して友好なものではなく、最後にプレーしたのは約1年前。果たして、カンターが再びNBAのコートに立つ日はやってくるのだろうか。
文=Meiji
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