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その試合のMVPとして、通訳を介しながらテレビインタビューに答えるウリ銀行ウリWON(WKBL/韓国女子バスケットボールリーグ)の鬼塚彩乃は、試合中のポーカーフェイスとは打って変わって笑顔が弾けていた。
1月24日、新韓銀行をホームに迎え入れたウリ銀行は、前半こそ6点のビハインドを負ったものの、後半に入ると持ち味のディフェンスが機能する。攻めては限られたシュートチャンスを確実にものにしていき、第3クォーターで逆転に成功。一気に流れを引き寄せ、勝利をつかんだ。
この逆転劇の主役を演じたのが鬼塚で、最終的に60-56と僅差を制した試合では、34分20秒の出場で21得点6リバウンド3アシストを記録。2ポイントシュートは6本中6本成功と決定力の高さも見せた。
試合後、テレビインタビューだけでなく記者会見にも呼ばれた鬼塚は、「日本(のWリーグ)ではあまり公式戦の試合には出ていなかったので、21点はプロでは初めてです」など、試合やチームのこと、自身のことを地元記者に丁寧に答えていった。
試合では持ち味の3ポイントシュートだけでなく鋭いドライブを披露したが、これは韓国に来てから増えた得点パターンの一つだと鬼塚は言う。
「もともとシューターで3ポイントが一番得意なんですけど、監督にドライブもいいと言われていて。だから(外角)シュートを相手が止めに来たときにドライブも積極的にやろうと思っています」
ドライブを武器の一つとして携えたことで「プレーの幅が広がった」のだが、その新たな能力を引き出したウィ・ソンウ監督は、14年目の在籍となるウリ銀行ではレギュラーシーズンとチャンピオン決定戦を合わせて18回の優勝を誇る名将だ。
練習が厳しいことで韓国でも有名な指揮官だが、鬼塚は「そうですね、毎日しんどいし(笑)、本当に何回も嫌になるんですけど、でも、その厳しい練習をやっているからこそ、試合で『なんかできる』って思える自分がいるんですよね。だから、すべてにおいて自分に自信が付いています」と、目を輝かせる。
「痩せました。ご飯もしっかり食べてはいるんですけど、練習量がすご過ぎて追いつかないんです(笑)」と、体の線が細くなったのは一目瞭然。だが、筋肉量には影響がないようで、逆に「いらないものが削ぎ落とされた感覚で、今の方が軽くて走りやすいし、動きやすいです」という。
「昨シーズン活躍されていたアジアクォーター枠の選手たちを見て、私もやってみたいという気持ちがありました」と、WKBL挑戦のいきさつを語った鬼塚は、「いざこっちに来てみると、うまくいくことの方が少なかったのですが、それでも監督やコーチが練習から自分のことをすごく見てくれているなと思って。良いことは良い, 悪いことは悪いと伝えてくれるので、それが自信になっていると思います」と、ここまでの取り組みを振り返った。

試合後のTVインタビューに答える鬼塚 [写真]=田島早苗
レギュラーシーズン後半戦に入ってから、よりプレータイムを伸ばしている鬼塚は、「幸せです」と現状を噛み締める。
だが一瞬、その表情が曇ったのは、ウリ銀行に同じくアジアクォーター枠で入団した関ななみのこと。日立ハイテククーガーズでもチームメートだった関は、ヒザのケガにより1月27日にチームを離脱することが発表された。取材時は発表直前のタイミングではあったが、すでに会場にその姿はなかった。
「寂しいですね、仲が良かったので」と語る鬼塚は、関の分までという思いも強い。
ウリ銀行のホームコートはアサン市にあるアリーナ。ここは2年前に「WKBLオールスターフェスティバル」にWリーグ選抜として鬼塚自身も参加したアリーナだ。
「この体育館に来るたびにオールスターの会場だよなって思います。あのときはまさか自分が韓国でプレーするとは思わなかったですね」
ウリ銀行は今、上位4チームに与えられるプレーオフ進出権を争っている最中。そのチームの中でカギを握る存在となっている鬼塚。
「順位が真ん中あたりを行き来しているので、とにかく1つでも上に上がれるように。私は監督に言われてることをひたすら意識して頑張りたいと思っています」と、プレーオフ進出、そしてその先の戦いを見据えていた。
文・写真=田島早苗