2020.12.01
ロックアウトによって、66試合の短縮となった2011-12シーズン途中のこと。ゴールデンステイト・ウォリアーズとミルウォーキー・バックスは互いの将来を大きく変えたトレードを行っていた。
12年3月14日(現地時間13日)、ウォリアーズはモンタ・エリス(現未所属)、クワミ・ブラウン(元ワシントン・ウィザーズほか)、エペイ・ユドー(現ユタ・ジャズ)を放出し、バックスからアンドリュー・ボーガット(元バックスほか)とスティーブン・ジャクソン(元ウォリアーズほか)を獲得。
ウォリアーズはこのトレードにより、ステフィン・カリーをチームの中心に据える方針にし、スコアリングガードのエリスをトレード。カリーはこのシーズンにNBA入りしたクレイ・トンプソンと共に、ウォリアーズの中心となったのである。
器用かつ献身的なビッグマンだったボーガットは、ウォリアーズ不動の先発センターに定着。ケガに苦しむことも多々あったが、15年にはウォリアーズの優勝に大きく貢献。ウォリアーズでは約4シーズン半在籍し、236試合(うち先発は230試合)に出場して平均23.7分6.3得点8.3リバウンド2.2アシスト1.7ブロックをマーク。黒子としてプレーする傍ら、ドレイモンド・グリーンのディフェンス力向上にも一役買い、数字以上の働きを見せた。
一方、バックス入りしたエリスは得点源として平均20得点近くを残し、翌12-13シーズンにはプレーオフ出場を果たした。ところが、13年夏にフリーエージェント(FA)となってダラス・マーベリックスと契約。わずか1シーズン半という短期間の在籍に終わってしまう。
そんな中、現在バックスで共同オーナーを務めるマーク・ラスリーが、1月16日(同15日)に『The Athletic』へ掲載された記事の中で、興味深いことを話していたので紹介したい。
ラスリーは14年4月に共同オーナーへ就任する前、12年のトレードについてこう明かしたのである。
「もしあの時、バックスがアンドリュー・ボーガットとのトレードでステフィン・カリーを獲得していたら、すばらしい戦績を残せていたのか、私には分からない。当時、バックスのメディカル・スタッフたちはステフの足首が良い状態を保つことができるとは思っていなかった。それが(ステフの)トレードの可能性をなくしたんだ。これも一つの運だったのかもしれない」。
11-12シーズンのカリーはキャリア3年目。平均14.7得点3.4リバウンド5.3アシスト1.5スティールを残していたものの、足首の負傷によって、キャリアワーストの出場試合数(26試合)に終わっていた。
だが翌12-13シーズンには健康を取り戻して78試合に出場。平均22.9得点4.0リバウンド6.9アシスト1.6スティールをマーク。平均3ポイント成功数を3.0本以上の大台にのせて、ブレイクイヤーとなった。
カリーがボーガットとのトレードでバックスへ移籍していたとしても、今のように2年連続でMVPに輝き、数々の記録を樹立するような超絶パフォーマンスを残せていたかは誰にも分からない。
だが、ラスリーは笑みを浮かべながら「我々がチームを買った時、あの時のメディカル・スタッフをチームから取り除いてやろうと思ったね」とジョークを言い放ち、悔いがあったと明かしている。
今でこそ、バックスはヤニス・アデトクンボやクリス・ミドルトン、エリック・ブレッドソーといった選手を擁し、今季はイースタン・カンファレンスで上位争いをする強豪となった。しかし、ラスリーが共同オーナーになってからというもの、バックスは昨季までの4シーズンでプレーオフに3度出場するも、いずれも1回戦敗退に終わっており、45勝以上を挙げることはできなかった。
その点、今季はここまで31勝12敗でリーグ2位という好成績を残しており、この調子で勝ち続けることができればシーズン45勝以上、そして01年以来初となるプレーオフ1回戦突破は十分可能ではないだろうか。
もしも今年のNBAファイナルでバックスとウォリアーズの対決が実現すれば、ラスリー共同オーナーとしても最高のシナリオだろう。その可能性は決して低くはない。
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