2022.10.07

ウェンバンヤマの実力がNBAを歪める?某GMが危惧「最下位レースが始まる」

驚異的な才能に多くの球団が関心を寄せている[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAの開幕を目前に控えるなか、アメリカのバスケットボール関係者は異国でプレーする18歳の若者に釘付けとなった。

 ビクター・ウェンバンヤマ。フランスのプロリーグ「LNB(リーグ・ナショナル・バスケットボール)」のメトロポリタンズ・92に所属する彼は、来年ドラフト最上位でのNBA入りが確実視されている逸材である。

 身長220センチ超え、ウイングスパン234センチという驚異的な恵体もさることながら、バックコート顔負けのハンドリングに、ケビン・デュラントを彷彿とさせるシュート性能も有するウェンバンヤマ。優れたビッグマンは得てして“ユニコーン”と称されるが、レブロン・ジェームズは同選手の感想を問われた際に「ユニコーンというよりもエイリアンだ」と、その超人ぶりに舌を巻いている。

 球団のリクルート担当は今、フランス産センターにデューク大学に在籍していたザイオン・ウィリアムソン以上の関心を抱いていることだろう。先日、ラスベガス郊外で行われたメトロポリタンズ・92とGリーグ・イグナイトの一戦には、約200人のNBA幹部とスカウトが集結。同じくドラフト最上位指名候補のスクート・ヘンダーソンと直接対決となった一戦で、ウェンバンヤマは36得点、11リバウンドと噂に違いない活躍を披露し、その評価を確かなものにした。

 しかし、それがリーグの競争にも大きな影響を及ぼすことになるかもしれない。とあるGMは、各球団が喉から手が出るほどウェンバンヤマを欲していることから、より1位指名権の獲得を高めるべく、最下位争いが行われることを危惧している。

「ビクターは、バスケットボールの現実を歪めてしまった。タンクやトレード市場は、あの試合の後に本当に変化してしまっただろう。昨夜の一件で、今まで見たことないような最下位争いが始まるような気がしています」

 あまりの注目度は、NBAのコミッショナーさえも動かした。アダム・シルバーはリーグから競争力が失われることを危惧し、球団にタンクをしないよう釘を刺さざるをえなかった。

「多くのNBAチームがドラフトで彼を獲得できる可能性があることに、涎を垂らしているようです。ですから、彼らは来シーズンも非常に激しい競争をしてくれることでしょう」

 それでも、当のウェンバンヤマは浮き足立つことなく、現状を冷静に見つめている。世界的な関心について問われた才能は、謙虚に以下のようなコメントを残した。

「偉大な人々から言及してもらえることは光栄ですが、それが何かを変えることはありません。僕はまだ何もしていません。NBAで試合をしたこともないですし、指名もされていません。なので、目標を達成するために集中し続ける必要があります」

 リーグ開幕を目前にして、早くも来季のドラフトが気がかかりになっているNBA。リーグは、プレーオフの可能性を失った下位球団の動きを注意深く見守らなければならないだろう。

文=Meiji

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