2022.10.14

復活を遂げたジョン・ウォールが辛い過去を振り返る「まるで悪魔と戦っているようだった」

今季からクリッパーズでプレーするジョン・ウォール[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAの2022-23シーズンは、しばらくコートから離れていたオールスターたちが長期怪我から復帰を果たし、満を持して新旧役者が揃う1年となりそうだ。

 なかでも、名門ケンタッキー大学出身のエリートポイントガード、ジョン・ウォールの復帰を心待ちにしていたファンは少なくないはずだ。プレシーズンの初戦こそ久しぶりのプレーに感覚を取り戻すことに終始していたが、ミネソタ・ティンバーウルブス戦では20分の出場で20得点3アシストと躍動。敵陣を切り裂くシグネチャームーブも飛び出すなど、体調は万全とうかがえる。

 しかし、復帰までの道のりは決して容易いものではなかった。ウォールはここ数年でキャリアを揺るがすような大ケガを繰り返し、愛する母親も癌で他界。復帰を目前に控えた今夏に人生で最も荒れた時期を過ごし、一時は真剣に自殺を考えていたことを明かしている。

 ウォールは先日、レブロン・ジェームズが主宰するトーク番組『The Shop: Uninterrupted』にゲスト出演した際、避けて通ることのできなかったメンタルヘルスとの闘いについて、赤裸々に告白。重度のアキレス腱のケガでは、複数の感染症に悩まされたことにも言及した。

「母が亡くなった時期は、本当に辛かった。だから、辛い時間を過ごすと、何でも自分で乗り越えられると思ってしまう。そうしたなかで、解決策を見出した。人には助けが必要な時があること、セラピストに頼る必要があること、誰かと話をしなければならない時があることを悟った」

 人生には浮き沈みがあるもので、ウォールはそのどん底を経験した。幸いにもウォールは他者に助けを求めることができたが、全てを溜め込んでいたら、事態はこうも好転しなかったかもしれない。

 NBPA(NBAの選手労働組合)が、リーグとの新協約において、新たなに精神的な問題を身体的なケガと同様の位置付けとし、適切な措置を受けられるよう協議を進めている。

 人に頼るのは決して弱さではない。ウォールは自身の経験もって、悩み苦しむ人々に勇気と希望を与える存在になることだろう。

 文=Meiji

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