2023.03.18
バスケットボールの世界において、背番号「23」には絶対的な尊厳がある。なぜなら、その背景にはいつでもマイケル・ジョーダンの存在が見え隠れするからだ。
衝撃的なルーキーイヤー、90年代初頭のスリーピート、プロ野球選手への転身、そして復帰後に二度目のスリーピート。NBAやナイキとともに作り上げた物語は、ジョーダンを“神様”へと転身させ、その功績と数々のハイライトは今なお色褪せることはない。
しかし、ジョーダンが現役時代に身につけた背番号は「23」のみではない。復帰後には尊敬する兄が学生時代につけていた「45」を背負い、アメリカ代表からは「9」が与えられていた。
だが、彼がたった1度だけ、背番号「12」のジャージで試合に出場したことを知る者は多くはないだろう。それは33年前のバレンタインデーのことだった。
On this date 28 years ago, Michael Jordan wore No. 12 after his jersey was stolen … and still dropped 49 points. pic.twitter.com/Zd8bfosKgC
— ESPN (@espn) February 14, 2018
遡ること1990年、シカゴ・ブルズはオーランド・マジックとの対戦を控え、フロリダ州に上陸していた。その日の朝、彼らはシュートアラウンドを実施。そして練習後にブルズのロッカールームではゲームに向けて準備が行われ、部屋にはジャージ、ショーツ、ウォームアップウェアなど必要なものが全て揃えられた。
マジックのチームオペレーション部門でディレクターを務めるロドニー・パウエルは、その日のことをこう振り返っている。
「彼らが朝の練習を終えて施設を出た後、ロッカールームのドアは施錠され、別の鍵までかけました。部屋の鍵を持っているのは1人だけでした。午後4時半頃、ブルズ一同が再びスタジアムにやってきたんです。そして、ロッカールームに入ると、23番のジャージがないことが発覚し、スーパースターにはジャージが見当たらないことが告げられました」
このときのジョーダンは少しイライラした様子で、お世辞にも機嫌が良かったとは言い難かったようだ。それもそのはず、当時のジョーダンはプロになって「23」以外のジャージを着用したことがなかった。
そして、ジョーダンは仕方がなく、代替案として12番のジャージを着て試合に出場。もちろん、突然の事件だったため、背中に「JORDAN」の名前はなかった。
パウエルによると、消失の理由は盗難だったことが後日判明したという。
「数日後、セキュリティからの話で、彼らのスタッフの1人がジャージを手に入れる計画を立てていたことがわかりました。別のロッカールームから天井裏へと忍び込み、天井のタイルを外してブルズのロッカールームへ侵入。ジャージを手に入れた後にまた天井から逃げ出したことがわかったんです」
これがジョーダンの幻の12番の一部始終。まさに、ジョーダンのスター性がわかる逸話と言える。
なお、試合はオーバータイムの末、ホームのマジックが勝利。しかし、ジョーダンはゲームハイの49得点を叩き出し、盗難の動揺を感じさせない圧巻のパフォーマンスを披露している。
文=Meiji
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