2023.02.20

シューズ契約にコールアップ…ダンクコンテストを“救った”マック・マクラングのキャリアを紐解く

ダンクコンテストで優勝したマクラング [写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAオールスターウィークエンドの名物であるダンクコンテストは、過去の華々しいパフォーマンスにより、期待値の高いイベントとなっている。しかし、ザック・ラビーン(現シカゴ・ブルズ)とアーロン・ゴードン(現デンバー・ナゲッツ)が2016年に繰り広げた名勝負以降、盛り上がりは年々低下。今シーズンもスタープレーヤーの参戦はなく、ファンたちは肩を落としていた。

 しかし、コンテストの火蓋が切られると、世界中のNBAファンは188センチの小兵に度肝を抜かれた。

 ジュリアス・アービング氏(元フィラデルフィア・セブンティシクサーズほか)からトロフィーを受け取ったのは、マック・マクラング(シクサーズ)だった。1本目は肩車をした2人組を飛び越えて、バックボードにタップを入れてからのリバースダンクというギミック盛りだくさんのダンクを披露すると、決勝2本目のダンクでは完璧に試合を締めくくった。巧みなハンドルから540度回転後の豪快なボスハンドバックダンクには、会場で見守った全員の開いた口が塞がらず、本人もヴィンス・カーター氏(元トロント・ラプターズほか)の“It’s over”のジェスチャーをオマージュするなど、納得の出来。4本中3本が満点と、文句なしのパフォーマンスを披露し、満場一致での優勝を勝ち取った。

2人組を飛び越えて豪快ダンクを沈めた [写真]=Getty Images

 そんなマクラングは、つい最近までGリーグに所属していた選手だ。しかし、ダンクコンテストの優勝はもちろん、2ウェイ契約にエンドーズメントの締結など、怒涛の1週間を過ごしている。

 本稿では、マクラングのこれまでのキャリアと直近のハイライトを振り返りながら、新世代のダンカーの正体に迫る。

■NBA入り前まで

 マクラングは、人口わずか約2000人のバージニア州ゲートシティ生まれ。『Andscape』が過去に特集した記事によれば、彼はもともとアメリカンフットボールをプレーしていたが、7回生の頃にバスケットボールに触れると、高校入りを境に本格的にNBA入りを目指すようになった。

 その高校時代に、マクラングの才能は開花し始めた。ゲートシティ高校時代、マクラングは1試合平均42得点を記録し、同郷のレジェンドであるアレン・アイバーソン(元シクサーズほか)氏が所有していたバージニア州の得点記録を更新。当時から持ち前の運動神経を駆使した派手なダンクは健在で、SNSではその動画が数百万回再生を記録したこともあった。ゲームチケットのソールドアウト、レストランでのサイン会と、その人気はまさにスター選手そのものであり、・ラプターズの熱狂的ファンとして知られるラッパーのドレイク氏も「君のジャージを欲しい」とInstagramでダイレクトメッセージを送ったことがあるそうだ。

 実力と人気は折り紙つき。しかし、190センチに満たない身長がネックとなり、リクルートの評価は『247 Sports』で248位と、決して高くはなかった。

 大学は地元ジョージタウン大学に進学した。1回生次は同13.1得点2.6リバウンド2アシストを記録してカンファレンスのオールフレッシュマンチームに選出されたあと、選手としてさらなる成長を求めて3回生次にテキサス工科大学へ転校。そこから半年のブランクを経て、転入後最初のシーズンに同15.5得点2.7リバウンド2.1アシストの好スタッツを残すと、強豪ひしめくビッグ12カンファレンスで年間ニューカマー賞を獲得した。

テキサス工科大時代のマクラング [写真]=Getty Images

■NBA初年度

 大学でも印象的な活躍を披露したマクラングだが、ドラフトで指名を受けることはなかった。それでもサマーリーグでのプレーが評価されてロサンゼルス・レイカーズとの契約を手にし、夢だったNBA入りを実現させた。

 デビューシーズンは開幕からまもなくGリーグ契約に移行となったが、サウスベイ・レイカーズではレギュラーシーズン26試合の出場で同21.6得点6.8リバウンド7.5アシストをマークし、2022年のGリーグ新人王を受賞。シーズン途中にシカゴ・ブルズとの10日間契約を結び、ウィンディシティ・ブルズで1試合のプレー経験もあった。

レイカーズ時代にも華麗なダンクを披露 [写真]=Getty Images

■NBA2年目

 選手の鬼門とされる2年目もマクラングのシーズンはサマーリーグから始まった。サマーリーグでは、ゴールデンステイト・ウォリアーズの一員としてプレー。ラスベガス開催では、5試合の出場で同24.4分13.6得点3.6リバウンド4.8アシストと印象的な活躍を披露し、見事チャンピオンチームと契約を締結した。

 しかし、ウォリアーズは10月4日(現地時間3日)にマクラングの解雇を発表。その後はシクサーズ傘下のデラウェア・ブルーコーツに迎えられ、今シーズンはこれまで18試合に出場し、同17.4得点4.6リバウンド5.8アシストと上々のパフォーマンスを続けていた。

 2年間の継続が評価されたマクラングに、遂にコールアップの時が訪れた。シクサーズは、2月15日(現地時間14日)付けでマクラングと2ウェイ契約を締結。球団が契約発表をしたSNSのコメント欄には「彼は実際に素晴らしい選手だ」、「マックは1年をとおしてGリーグで無双してきた」など、今後のプレータイム獲得を熱望する声が相次いだ。

 そして、シクサーズ選手としての初仕事となったダンクコンテストの結果は周知のとおり。『BasketballNews.com』のアレックス・ケネディー氏によれば、マクラングは圧巻のダンクの連発で一夜にしてInstagramのフォロワーが10万人以上増加し、本稿執筆時点でその総数は104万人を突破している。PJ・タッカーの103万人、タイリース・マキシー(ともにシクサーズ)の51万人を上回る数字だ。

■プーマとの契約

 ダンクコンテストの優勝から数日前、マクラングは自身のInstagramでプーマとのエンドースメント契約を発表していた。

 選手にとって、スポーツブランドとのエンドースメントは成功の一つの指標となるものだ。とりわけ、プーマはラメロ・ボール(シャーロット・ホーネッツ)、RJ・バレット(ニューヨーク・ニックス)、カイル・クーズマ(ワシントン・ウィザーズ)といった若手の有望株を抱えており、将来性を重視するブランドからのオファーはマクラングも光栄に思ったに違いない。なお、契約発表時こそ『リック・アンド・モーティ』とのコラボレーションによるラメロのシグネチャー『MB.02』を肩から下げていたものの、ダンクコンテストでは反応性と動きの自由度を高めるために設計された『ライズ ニトロ』を着用していた。

文=Meiji

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