2023.06.01

ナゲッツが初優勝、ヒートは第8シードとして歴史的快挙を狙う/NBAファイナル展望

ナゲッツのヨキッチ(左)とヒートのバトラー(右)[写真]=Getty Images
フリーライター

NBAファイナル2023展望】
球団史上初の大舞台へ臨むナゲッツとファイナル経験豊富なヒート

 6月2日(現地時間1日、日付は以下同)に幕を開ける「NBAファイナル2023」は、デンバー・ナゲッツマイアミ・ヒートによる対決となった。

 ナゲッツはABA時代も含めて球団創設から56シーズン目で初のNBAファイナル。一方のヒートは2020年以来3年ぶり、通算7度目の頂上決戦で、フランチャイズ史上4度目の優勝を目指す。

 ウェスタン・カンファレンス第1シードで迎えた「NBAプレーオフ2023」で、ナゲッツはファーストラウンドでミネソタ・ティンバーウルブズを4勝1敗、カンファレンス・セミファイナルではフェニックス・サンズを4勝2敗でそれぞれ突破し、カンファレンス・ファイナルはロサンゼルス・レイカーズ相手に球団史上44シリーズ目にして初のスウィープ(4勝0敗)を達成。

 そのレイカーズとのシリーズでは、ジャマール・マレーが平均32.5得点6.3リバウンド5.3アシスト2.8スティール、ニコラ・ヨキッチが同27.8得点14.5リバウンド11.8アシスト1.3スティール1.3ブロック、マイケル・ポーターJr.が同15.0得点9.3リバウンド3.0アシスト、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープが同14.8得点3.0リバウンド、アーロン・ゴードンが同12.8得点4.0リバウンド3.5アシスト、ブルース・ブラウンが同12.3得点4.0リバウンド2.5アシストを残した。

 対するヒートは、ミルウォーキー・バックスとのファーストラウンドを4勝1敗、ニューヨーク・ニックスとのカンファレンス・セミファイナルを4勝2敗、カンファレンス・ファイナルではボストン・セルティックスを最終第7戦の末に敵地で撃破し、第8シードとしては1999年のニックス以来初のファイナル進出。

 イースト決勝ではジミー・バトラーがシリーズ平均24.7得点7.6リバウンド6.1アシスト2.6スティール、ケイレブ・マーティンが同19.3得点6.4リバウンド1.7アシスト、ゲイブ・ビンセントが同15.8得点2.2アシスト、バム・アデバヨが同14.9得点9.1リバウンド4.4アシスト、ダンカン・ロビンソンが同11.4得点2.6アシストをマーク。

 ナゲッツではコールドウェル・ポープが2020年にレイカーズで優勝、ジェフ・グリーンが2018年にクリーブランド・キャバリアーズでファイナルを経験しているのに対し、ヒートはNBAの頂上決戦という大舞台に立ってきた人物が多い。

 バトラー、アデバヨ、ロビンソン、右手骨折で欠場中のタイラー・ヒーロー(シリーズ中に復帰の見込み)が2020年のファイナルに出場したほか、在籍20年目のユドニス・ハズレムが6度(2006、2011、2012、2013、2014年は出場、2020年は出場なし)、ケビン・ラブがキャブズ時代に4度(2015年はケガのため欠場、2016、2017、2018年に出場)、カイル・ラウリーがトロント・ラプターズ在籍時の2019年に出場し、ハズレムが3度(2006、2012、2013年)、ラブは2016年、ラウリーは2019年に優勝。

 さらに球団社長のパット・ライリーは選手、コーチ、エグゼクティブとして計19度目、エリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)が指揮官としてNBA歴代4位タイの6度目のファイナルとなるため、大舞台の経験値としてはヒートに軍配が上がると言っていいだろう。

爆発力と勝負強さを兼備するナゲッツのマレー[写真]=Getty Images

現地メディアのシリーズ予想は軒並みナゲッツ優勢 
カギはナゲッツのヨキッチ、ヒートのバトラーへの対策と3ポイントか

 ナゲッツとヒートは別のカンファレンスに所属しているため、レギュラーシーズンで対戦するのは2度、ホームとアウェーで各1試合のみ。両チームの今シーズンにおける直接対決はナゲッツの2戦無敗で、ここ3シーズンはナゲッツが6戦負けなし。

 そして高地のデンバーと、リゾート地マイアミの標高差は平均で約5275フィート(約1608メートル)。その標高差の影響なのか、ヒートは2016年11月を最後にデンバーで勝利できておらず、今シーズンのナゲッツはレギュラーシーズンでリーグ2位の34勝7敗(勝率82.9パーセント)、プレーオフでもここまで8戦無敗と、ホームのボール・アリーナで見事な戦績を残している。

 ウェストの第1シード(ナゲッツ)とイーストの第8シード(ヒート)という構図になったとはいえ、ナゲッツのマイケル・マローンHCは「NBAファイナルまでたどり着いたんだから、シード順なんて関係ない。最も重要な挑戦となる。これはNBAファイナルで、我々はフランチャイズ史上初のNBAチャンピオンシップを勝ち取ろうとしているんだ。このチームにとって、これまでで最もハードなことになるだろう」と話しており、慢心は一切ない。

 オフェンシブ・レーティングでナゲッツはここまでプレーオフ出場16チーム中トップの119.7(ヒートは5位の116.1)、ヒートはディフェンシブ・レーティングで同6位の111.5(ナゲッツは8位の111.7)を記録していることから、オフェンス型のナゲッツとディフェンス型のヒートによるマッチアップとなる。

 ナゲッツは今年のプレーオフで“平均トリプルダブル”(29.9得点13.3リバウンド10.3アシスト)を誇るヨキッチ、ヒートには今年のプレーオフ全体で平均28.5得点7.0リバウンド5.7アシスト2.1スティールを残してチームを引っ張るバトラーという大黒柱がおり、両選手をどれだけスローダウンできるかがそれぞれのチームにとって大きな課題となる。

 ヨキッチと対峙することが予想されているアデバヨは、ビッグマンながらどのポジションの選手であろうとガードしてしまう能力があり、リーグ屈指のディフェンス力を誇る。

 それでも、ヨキッチについては「彼にタフショットを強いていく。それが僕にとって最も重要なこと」と警戒。バトラーも「俺たちは(コート上にいる)5人全員でチームとして彼をガードしていく」と話していた。

ヨキッチとのマッチアップや守護神として活躍が期待されているアデバヨ[写真]=Getty Images

 一方、ナゲッツでバトラーと主にマッチアップすることになる見込みなのはゴードン、コールドウェル・ポープ、ブラウンの3選手。なかでも屈強な肉体と高い身体能力を兼備するゴードンは「僕の能力を最大限に発揮してファウルをせず、彼の仕事を難しくさせて、競い合っていくだけ」と意気込んでいた。

 今年のNBAファイナルにおける現地メディアの予想を見てみると、『NBA.com』と『AP』が4勝2敗でナゲッツ、『ESPN』では専門家16名のうち12名がナゲッツでファイナルMVPはヨキッチ、『The Athletic』は匿名のスカウト、コーチ、エグゼクティブがいずれも4勝2敗でナゲッツ、『CBS Sports』は8名全員がナゲッツ、『The Sporting News』では7名のうち6名がナゲッツと、シリーズ開幕前の予想は早期決着の可能性こそ低いものの、ナゲッツ優勢という様相となっている。

 だがこれはあくまでシリーズが始まる前の下馬評に過ぎないため、現時点で約2週間後にどちらが今シーズンの王者になっているかを決めつけるのは時期尚早。

 今年のプレーオフ出場16チームのなかでトップの3ポイントシュート成功率39.0パーセント(平均13.1本成功)を誇るヒートと、同2位の38.6パーセント(平均12.1本成功)を残すナゲッツは、どちらも長距離砲の精度の高さが際立っている点も見逃せない。

 ナゲッツが球団史上初のNBAチャンピオンとなるのか、それともヒートが第8シードとしてNBA史上初、通算4度目の王座に輝くのか。まずは2日にスタートする両チームのシリーズ初戦に注目していきたい。

文=秋山裕之

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