2023.10.23

NBAとAmazonが一部独占のストリーミング配信を検討か…契約金は総額1兆円超えの可能性も

NBAの新たな放映権としてAmazonの名前が挙がっている [写真]=Getty Images

 NBAはまもなく、リーグビジネスの大部分を占める新たな放映権の交渉に本格的に着手する見込みだ。Amazonは、その契約に本腰を入れるパートナーとしてかねてから名前が挙がっているが、『Front Office Sports』によると、同社とリーグは毎週木曜日に放送されているNFLの『サーズデー・ナイト・フットボール』に着想を得たNBA版プログラムの展開を検討しており、その契約金は10億ドル(約1500億円)規模になる可能性があるという。

 NBAのアダム・シルバーコミッショナーも魅了されていると語った『サーズデイ・ナイト・フットボール』とは、その名のとおり、毎週木曜日の夜にAmazonプライム・ビデオで配信されているNFLゲームの総称である。年間20試合弱と試合数こそ多くはないものの、『サーズデイ・ナイト・フットボール』はストリーミングプログラムとして絶大な人気を誇っており、今シーズンにおける1試合あたりの平均視聴者数は1290万人を記録。9月末に計算された視聴者データでは、昨シーズン比で21パーセント増となっており、ニューヨーク・ジャイアンツ対サンフランシスコ・49ersの一戦は、プライム・ビデオのNFL放送史上2番目に多い平均1392万人の視聴者数を叩き出した。

NFLの『サーズデイ・ナイト・フットボール』はAmazonプライム・ビデオで配信されている [写真]=Getty Images

 NBAの現行放映権契約は2024-25シーズンまでとなっており、リーグは2025-26シーズン以降の新契約で約500億ドルから750億ドル(約7兆5000億円から11兆2400億円)のメディアパートナーシップを目指していると言われている。NBAは既存のメディアパートナーである『ESPN』および『TNT』と独占交渉を進めているが、報道によれば、NBAAmazonは、NFLの『サーズデイ・ナイト・フットボール』に匹敵する年間10億ドル(約1500億円)相当のゲームパッケージを検討中。2014年に締結された現行の放映権契約が9シーズンにおよぶ長期契約だったことを考えると、仮にAmazonが10年間のパートナーシップを締結した場合、100億ドル(約1兆5000億円)前後の大きな契約になる可能性もある。

『Fox Sports Networks』の元社長であり、『Thompson Sports Group LLC』の役員を務めるボブ・トンプソン氏は、NBAはストリーミング契約に大きな関心を示していると語った。

NBAが次の放映権契約の一環にストリーミングの要素を取り入れることは、確実だと見込んでいます。注目すべきは、それがESPNやワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーのパッケージの一部になるか、Amazonなどストリーミング配信サイトの独占パッケージとなるかです」

 Amazonはすでに南アメリカでNBAとビジネスを展開しており、Amazonプライム・ビデオでは2022-23シーズンからブラジルでのストリーミングを開始。また、NBAは中国でもストリーミング配信を採用しており、同国におけるテセント社とは年間15億ドル(約2200億円)の契約を結び、5億人以上のバスケットボールファンにリーチしている。

 NBAや『ESPN』の元幹部であるジョン・コスナー氏は、NBAはより多くのファンベースに視聴の機会を提供したいと考えているため、新契約はこれまでテレビ放送をけん引してきた歴史のあるメディアと、大手ストリーミング企業のハイブリッドになると予想。しかし、メジャーリーグサッカーで成功を収めたApple、NFLサンデー・チケットを提供するGoogleおよびYouTube、スポーツビジネスの参入に熱意を示しているNetflixなど、Amazonのライバルは強敵ぞろいであり、現行のパートナーにもディズニー・プラスやMax(ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのストリーミングサービス)などの手札がある。

 いずれにせよ、NBAの新契約はスポーツメディア業界を驚かせるようなパッケージになるだろう。はたして、世界中に登録者を持つAmazonが新たなチャンネルリストに名を連ねる可能性はいかに。

文=Meiji