2023.11.24

ニックスが機密情報漏えい疑惑のラプターズに約15億円の損害賠償を要求…NBAの関与にも言及

ニックスが球団の機密情報を不正入手および開示したとして元従業員とラプターズを相手に訴訟 [写真]=Getty Images

 ニューヨーク・ニックスは、球団の機密情報を不正入手および開示した疑いで、元従業員とトロント・ラプターズを相手に訴訟を起こした。そして『ESPN』によると、その賠償金として1000万ドル(約14億9600万円)を要求すると同時に、NBAのアダム・シルバーコミッショナーが仲介するべきではないと主張しているという。

 ニックスの元従業員であるアイク・アゾタム氏は、2023年夏にラプターズと契約を結んだ際、ニックスから2022-23シーズンの参考資料、ビデオスカウティングファイル、対戦相手の調査情報など、数千にもおよぶ機密ファイルを持ち出したとされている。

 また、ニックスは「ラプターズが不正入手を認識しながらも利益を得た」とコメント。その被害の見返りにニックスが要求した1000万ドルは、ラプターズが昨シーズンに記録した収益の約3.3パーセントに匹敵するものであり、情報戦であるプロスポーツにおいて、ラプターズには重罰が与えられるべきだと考えられる。

 しかし、ラプターズはニックスの初回の訴えを棄却し、シルバーコミッショナーに仲裁を求めるよう回答。だが、ニックスはラプターズのオーナーを務めるラリー・タネンバウム氏とシルバーコミッショナーの友好関係に着目し、利益相反のリスクを指摘した。

 タネンバウム氏は、ラプターズの球団オーナーでありながら、NBA理事会会長を兼任するリーグの重鎮だ。2022年の理事再選時、シルバーコミッショナーは「ラリーが引き続き、理事長としてリーグに貢献してくれることを大変うれしく思います。彼のリーダーシップやサポートは、私や同僚、他球団からも非常に高い評価を受けています」と祝辞を述べ、タネンバウム氏に絶大な信頼を表明していた。

 ニックスが懸念しているのは、両者の“同盟関係”にある。同球団は「シルバーは、タネンバウムをNBA理事会会長としてだけではなく、“人生における非常に重要なロールモデル”と形容しています。もし、シルバーがこの問題を裁く立場になれば、彼は上司および同盟者のために、事件を仲裁することになるでしょう」とコメントしており、ニックスが不利な立場にあると主張した。

 また、ニックスはNBAの規約に対し、知的財産の窃盗や保護に関する規定がなく、企業秘密の漏えいや不法行為は裁判所で扱う問題であり、NBAにも前例がないと指摘。また、NBA規約に記載されたシルバーコミッショナーの権限に言及し、1000万ドルを超えるペナルティを課すことができないと述べ、リーグ規約ではチーム間の法廷闘争に関与することを認めていないとコメントした。

 一方で、ラプターズのマサイ・ウジリ社長は、メディアーデーにおいて「NBAの歴史上で、あるチームが他のチームを訴えた過去が一度あります。一度だけです。不思議なことですよね」と発言。また、球団はニックスの行動を「根拠のない、パブリックリレーションズのための仕掛け」と訴えており、シルバーコミッショナーに仲裁するよう求めたという。

 はたして、ラプターズの機密情報入手疑惑はどのような結論を迎えるのだろうか。

文=Meiji

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