2023.11.27

分析担当“激推し”「指名まで15分だった」ドンチッチ獲得の舞台裏が明らかに

2019年、NBA新人王に輝いたドンチッチとキューバン氏[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 ダラス・マーベリックスの近年の最大の“功績”は、2018年のNBAドラフトでルカ・ドンチッチを獲得したことだろう。

 マーベリックスは、アトランタ・ホークスに5位指名権と2019年の1巡目指名権を譲渡することで、2018年の3位指名権でルカ・ドンチッチをチームに迎え入れた。一方のホークスはその見返りとして、現ロスターで司令塔を務めるトレイ・ヤングを獲得し、2019年の10位指名によってキャム・レディッシュが加入している。

 マブスのオーナーを務めるマーク・キューバンは、トーク番組『ALL THE SMOKE』の中で、ドンチッチへの最初の関心や、ヤングのトレードを以下のように振り返っている。

「13歳の少年がヨーロッパで成人男性を相手に対戦していれば、誰の耳にだって噂は届きます。ただ、ヨーロッパのことだし、よくわからないこともありますよね。でも、スカウトは『見てください、オクラホマシティ・サンダーを相手に対戦している16、17歳の少年がいます。彼は恐れ知らずです』と言いました。以降、我々は彼を注意深く見守るようになったのです」

「興味深い話があります。我々のスカウトは彼を気に入っていましたが、分析担当は彼を溺愛していました。スカウト陣は『いいですね、彼は8位か、9位ぐらいでしょう』との見解でしたが、分析担当は『彼がドラフトで唯一のスーパースターだ』と言いました」

「この意見が原動力になったのです。我々はあのトレードに何度もトライしました。指名まで残すところ15分ぐらいだったと思います。私からアトランタのオーナーに電話をかけたのです。『あなたはルカを選ぶつもりはないでしょう。そして、あなたが欲しい選手はわかっています。だから、取引をしましょう。彼(ヤング)はあなたのために、球団にいてくれるはずです。GMが迷っている間に、私たちは指名権も渡しますよ』。このような感じで、交渉をまとめました」

 今シーズンのマーベリックスは開幕から好調を維持し、現在ウェスタン・カンファレンスで5位につけている。エースのドンチッチは支配的なパフォーマンスを続けており、これまで1試合平均30.5得点、7.9リバウンド、7.8アシストを記録。これらのスタッツは、全カテゴリーにおいてチームトップの成績である。

 キューバンは、キャリア6年目を迎えたスロベニア生まれの魔法使いに、どのような期待を抱いているのだろうか。

「誰だったかな。確か、ヨキッチは『最初は悪くても仕方ない。それから良くなって、謙虚になり、また良くなる。そういうものでしょう?』と言いましたよね。我々にも同じ経験があります。2006-07シーズンのプレーオフで、ゴールデンステイト・ウォリアーズに負けたときのことです。あの経験が我々を謙虚にさせ、使命を再認識させてくれました。そこ(2010-11シーズンのリーグ優勝)に到達するのに時間はかかりましたが、ルカにも同じことが起きると思います」

「彼が、NBAでトップ3の才能を持っているのは明らかです。物事は時に簡単にやってきますが、そこから何が必要なのかを学ばなければいけません。昨年の経験は、我々全員を謙虚にさせたはずです。そして、ルカはリベンジをしに戻ってきました。ご存知のとおり、彼はこの夏、懸命に働きました。物事が順調に進んでいるとき、ゲームを理解するのは簡単です。物事がうまくいかないときこそ、自分が何者であるか、そして、組織にいるチームメートがどのような人間なのかが分かるのです。彼はダーク(・ノビツキー)から学び、リーダーシップ、コミュニケーションスキルが向上しています。毎年、夏になるとゲームに何かを追加する必要があり、彼はそれを成し遂げました。チャンピオンになるために必要な要素を全て理解し、彼はそれらを手に入れたと思います」

 カイリー・アービング、グラント・ウィリアムズ、デレック・ライブリー2世など、キューバンがドンチッチを中心に作り上げたロスターは、限りなく完成系に近づいている。

 エースに課されたミッションは、選手としての成熟、そして球団に2つ目のチャンピオンリングをもたらすことだろう。

文=Meiji

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