2024.03.24

“不屈の小兵”アイザイア・トーマスのNBA復帰までの道のり「欲しいのはチャンスだけ」

サンズに加わったアイザイア・トーマス[写真]=Getty Images

 不屈の男、アイザイア・トーマスが待望のNBA復帰を果たした。Gリーグで30得点試合を連続で叩き出したトーマスは、その活躍が目に留まり、フェニックス・サンズと10日間契約を締結。プレーオフ進出を確実にするべく、ここから1試合も落とせないゲームが続く中、フランク・ヴォーゲルヘッドコーチはチームに勢いをもたらすべく、ベテランスコアラーを招き入れた。

 すでに年齢は35歳。厳しいリーグにおいて、定着していないベテランに用意される席はあまりにも少ない。それでも175センチの小兵は自分を信じることをやめなかった。

 トーマスは『The Seattle Times』に対して、自身の胸中に宿る強いハートについて、こう語っている。

「多くの人が諦めるべきだと思っていた。でも、僕は前向きでいた。自分が何をもたらせるかを理解している。誰よりも自分自身を信じているんだ。2011年6月23日にドラフトされた時、僕が言ったのは『チャンスが欲しいだけ。本物の機会を得られれば、あとは自分でやる』だったよね。僕はNBAに戻ってきた。NBAのジャージを手に入れて、できるだけ長く続けるために全力を尽くすよ」

ワシントン大学で世代屈指の評価を受けていたアイザイア・トーマス[写真]=Getty Images


 タコマ出身のポイントガードの道のりは、いつだって茨の道だった。それでも、トーマスはサイズがものを言う世界において、どんな高い壁でも超えてきた。ワシントン大学ではPac10(現:パシフィック12・カンファレンス)の新人王やファーストチームに選出され、2015年にはボストン・セルティックスに加入すると、在籍2年目にMVP候補の5名まで残る活躍を披露している。

 トーマスがサンズに在籍するのは、今回が初めてのことではない。サクラメント・キングスでNBAキャリアをスタートした同選手は、2014年の夏にサンズへ加入。在籍期間こそ約半年に過ぎなかったが、この間には46試合に出場し、1試合平均15.2得点、2.4リバウンド、3.7アシストを記録。

 また、冬のマーケットで移籍したセルティックスではさらに調子を上げてシックスマン賞の最有力候補に挙げられた。最終的にはルー・ウィリアムズに軍配が上がり、このとき「投票は操作できない」としてウィリアムズの受賞を讃えたものの、トーマスは平均得点でウィリアムズを上回っており、彼が言った「数字は嘘をつかない」のコメントは今でも多くの人の記憶に残っているのではないだろうか。

■ 10日間契約で貢献できることは?

 さまざまな球団を渡り歩いてきたトーマスは、今回の10日間契約で「毎日どのような影響を与えることができるか」と意気込んでいる。

 このトーマスの言う影響力とは、一体何を指すのだろうか。ケビン・デュラントデビン・ブッカーの負担を緩和する持ち前の得点力だろうか。トーマスの考えは異なり、自身には得点よりも大切なものがあると感じている様子で、『Arizona Sports』は果たすべき責任について言及した同選手のコメントを伝えている。

「何よりもまずリーダーシップだ。ロッカールームにいる僕の経験は貴重なはずだ。コート上ではまだ高いレベルでできることがあるし、機会があればそれをオフェンス面で披露して、プレーを決め、チーム全員の仕事を楽にすることができる。でも、最も重要なのは、リーダーシップ、発言力、人格力、そして仲間をまとめる力だよ。それこそ僕が得意としていることだと思っている」

 オールスタープレーヤーや経験豊富なベテランが多数在籍するサンズにおいて、わずか10日間で存在感を示すのは容易なことではない。だが、トーマスと同い年で、サンズのエースを担うデュラントはトーマスに大きな敬意を払っている。

サンズをけん引するケビン・デュラント[写真]=Getty Images


「絶え間ない努力。それが僕が彼を尊敬している理由のひとつだ。僕はITを17歳の頃から知っていて、それ以来彼は変わっていない。彼がキャリアを通じて経験したエピソードは、世界中のバスケットボールプレイヤーにとってインスピレーションになるだろう。だから、彼といくらかの時間を過ごせることに感謝している」

 プレータイムこそわずかしかないものの、サンズはトーマス加入後に連勝中。今後はヴィクター・ウェンバンヤマを擁するサンアントニオ・スパーズとの連戦と、王者デンバー・ナゲッツとのゲームが控えている。

 もし仮に、トーマスの10日間契約中に白星を重ねれば、サンズはプレーオフへのストレートインにも近づくだろう。輝く手段は、ひとつではない。数多の試練を乗り越えてきたトーマスならきっと、わずかな期間をものにすることができるはずだ。

文=Meiji

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