2024.04.05
富永啓生が大学でのバスケ生活に終わりを告げた。ネブラスカ大学に初のNCAAトーナメント勝利をもたらすべく、背番号30はサウスイースタン・カンファレンス(SEC)7位のテキサスA&M大学との対戦に挑んだが、83-98で惜敗。試合終盤には様々な感情が入り混じるなか、ベンチで涙する富永の姿が捉えられ、その様子には数多くのメッセージが寄せられた。
溢れ出る感情を抑えきれなかった富永は、『NBC News』に対して涙の理由を以下のように振り返っている。
「(公然で涙することは)もっと讃えられるべきだと思います。試合に負けたことはもちろん悲しかったですが、コーンハスカーズのユニフォームを着るのがこれで最後だということもありました。ハスカーズのために、そしてホイバーグHCのためにプレーするのはこれが最後なのだと。そのようなことが頭に過ったんです」
富永は単身アメリカでの生活を戦い抜いた。ウィンターカップで合計239得点、3ポイントシュート成功数30本という驚異的な記録を残し、母校の桜丘高校を大会3位に導いた和製カリーは、夢のNBA入りを目指してNJCAA(全米短期大学体育協会)所属のレンジャー・カレッジ進学を決断。環境に適応し、同校での活躍が評価されると、3年時からネブラスカへの編入が決まり、大学最終年はエースとして責務を全うした。
トーナメント直前はイリノイ大学戦で18得点、インディアナ大学戦で23得点、ミシガン大学戦で30得点、ラトガース大学戦で18得点を記録し、大学ラストゲームのテキサスA&M大戦も21得点をマーク。ラスト5試合の平均得点22点は有終の美にあまりにもふさわしい。
一方で、一部の心無い人間たちからは荒らしや人種差別的なコメントも。事実、アジア系の選手がNCAAトーナメントに出場することは過去を振り返ってみても決して前例の多いことではなく、試合前にはテキサスA&M大の選手たちが富永を挑発するような様子も確認されている。それでも富永は毅然と立ち向かい、アジア人であることを謙虚に誇る。
「世間の話題になることができて、本当にうれしく思います。アメリカに住んでいるアジア人で、私の試合を見に来る人たちの存在が僕の大きな原動力となりました。みんなのロールモデルになれるよう頑張ります」
次なる目的地はプロ。その舞台として、NBAという最高峰を志している富永は、ドラフトへと向かうことになるだろう。マーチ・マッドネスは初戦敗退となったが、富永にはパリオリンピックの舞台で日本代表としてアピールする機会も残されており、依然としてモチベーションは高いはずだ。
昨年はインディアナ・ペイサーズのプレドラフトワークアウトに参加し、25本中20本の3ポイントを決めると鳴らすことのできるベルを鳴らした様子も話題となった。また、ホイバーグHCはシカゴ・ブルズで監督を務めた経歴の持ち主で、プロ入りに向けても背中を押してくれるに違いない。
「行く先々で、ただ僕らしくバスケットボールをプレーし、ファンにそのレベルでプレーできることお見せします」
一息つけば、今度は国を背負った戦いが控えている。富永はチャレンジャーとしての姿勢を貫くはずだ。
文=Meiji
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