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『B MY HERO!』
「彼はネブラスカに来た時から常にずっと自信に満ちているよ」
富永啓生がネブラスカ大学(NCAA1部)に編入した2021年からのチームメートの1人であるCJ・ウィルチャーは、そう言って笑った。1年目のシーズンはなかなか出場時間がもらえず、思うような活躍ができなかったが、「彼は練習中、いつも僕らのことをコテンパンにしていたんだ」と、当時を振り返る。
「練習ではすごかったけど、フィジカルやペースの違いもあって彼は苦戦して、試合では実力を出せなかった。でも、2年目の後半にはチャンスをものにして一世を風靡した。結局のところ、啓生はいつだって点を取れる選手だったんだ」
富永はこれまでずっと自信を失うことはなかった。やるべきことを日々こなし、自分のチャンスが来るのを待った。昨季の後半に3ポイントシューターとしての実力が知れ渡ると、彼は少しずつ他のスキルを磨いた。その結果、富永の今シーズの役割は「変わったんじゃなくて拡大したんだと思う」とウィルチャーは言う。
「彼の最大の特徴はシューティングかもしれないけど、啓生はリードスコアラーでもあるんだ。カットしてオープンレイアップを決めるし、フローターも決める。まさかってところでバスケットまでたどり着くこともできる」
「かなり過小評価されているけど、彼はプレーメイカーでもある。ディフェンスの動きを読んでパスを出すのがうまい」とウィルチャーは話す。そこはネブラスカ大のフレッド・ホイバーグヘッドコーチと同意見だ。
実は、「それが啓生だ」という言葉を聞いたのはこの時だけではない。1月21日(現地時間20日)のノースウェスタン大学との試合後の会見に富永とともに現れたジョサイア・アリックも、「啓生が決めたトドメの3ポイントショットが本当に大きかった。でも、あれがまさに啓生なんだよ」と、半分呆れたように笑っていた。
「僕は彼と一緒にするのは今年が初めてだから、ああいうプレーにはまだ慣れていないし、見慣れるのにまだ時間はかかりそうだけどね」
一方のウィルチャーは、富永の自信とエナジーあふれるがチームにもたらす影響力をこれまでに十分に経験している。彼は「啓生の調子が良い時は、僕らはその勢いに乗るんだ」と話す。「彼のエナジーは周りに伝染するからね。特にホームでするときは、彼が観客を巻き込んで盛り上げてくれるのを知ってるだろう? あの力は本当に大きいんだ」
実際に、ホームのファンを味方に付けた時のネブラスカ大は今季絶好調で、BIG10カンファレンス内の対戦成績は、ホームで全勝、アウェーで全敗の5勝5敗となっている。そこに富永のファンを巻き込む力が影響しているのは間違いないだろう。
伝染しているのはエナジーだけではない。「彼が自分に自信を持っていると、こっちも自信を持たずにはいられなくなるんだ」とウィルチャーが言うように、富永の自信もチームメートに力を与えている。
「僕がシュートミスをしても、『打ち続けろ!』と言ってくれる。それが自信につながるんだ」
以前に増して富永がハドルでチームメートに声をかけるのも、「僕らを励ましたり、エナジーを与えてくれたり、勢いをつけてたりしていることが多い」という。「彼は本当に素晴らしい奴なんだよ」。そう話すウィルチャーからは満面の笑みがこぼれる。
その笑顔の理由を尋ねると、「啓生は見た目では評価できないんだよ。啓生の外見からは、彼が優秀なバスケットボールの選手だなんて思わないだろう?」と、身を乗り出した。
「でも、啓生は僕がこれまで一緒にプレーしてきた中で一番楽しい選手の1人なんだよ。彼のプレーを見るのは楽しいし、一緒にいてとにかく楽しい。オフコートでもいつも笑いが絶えないんだ。彼は誰のことも突き放したりしないし、人を惹きつける魅力がある。啓生を好きにならないのは難しいよ」
NCAAトーナメント出場という目標のもと、これからますます相手チームの富永に対するガードは厳しくなるだろう。しかし、昨年の同時期、試合ごとに異なるスキームを使い、異なるサイズの相手に守られながらも、富永がそれに適応して得点を重ねたことをウィルチャーは覚えている。
「僕はとにかく、彼がまた相手のディフェンスに適応するところが見たいんだ。今シーズンの彼は素晴らしいプレーをしているから、これまでやってきたことを続けるだけだよ」
ネブラスカ大のシーズンも残り10試合となり、その半分の5試合がアウェーゲームだということを考えると、ホームは死守するのはもちろんのこと、アウェーで少しでも勝っておきたいところだ。チームを勢いに乗せるためには、富永の揺るがぬ自信とあふれるエナジーこそがNCAAトーナメント進出のカギになるのかもしれない。
文=YOKO B