Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
KBL(韓国バスケットボールリーグ)勢のファイナル対決でフィナーレを迎えたEASL(東アジアスーパーリーグ)。3月1日から5日まで、宇都宮、沖縄で行われた新しい国際大会について、全日程でゲーム解説を担当した井口基史氏が現地からレポートする。
取材・文=井口基史
東アジアスーパーリーグ(EASL)は、東アジア最高峰のバスケットボールリーグの創設と、同地域におけるバスケの地位向上を目的としたリーグです。新型コロナウイルス感染拡大の影響により今回第1回大会を実施にこぎつけましたが、過去にはマカオで招待大会としてBリーグのチームが参戦した歴史を持ちます。
EASLは国際バスケットボール連盟(FIBA)と10年間にわたる、新しい地域選手権を創設、運営することを承認・支援する独占契約を結び、今大会からホーム&アウェー開催を目指していました。
当初は優勝賞金100万ドル(約1億3000万円)が話題でしたが、国それぞれに新型コロナによる入国制限の違いがあり、大会方式を見直し、すでに開催に向けて準備を整えていたBリーグ勢に配慮する形で、宇都宮と沖縄ラウンドという変則的な順位決定方式となりました。規模の見直しにより賞金は、優勝25万ドル(約3250万円)、準優勝10万ドル(約1300万円)、3位5万ドル(約650万円)と定められています。
【リーグフォーマット】
・8チーム2グループ(A、Bグループ)に分かれたグループステージ
・グループステージでは各チーム2試合を行う
・各グループ1位が決勝戦へ、各グループ2位が3位決定戦へ
【順位決定方法】
・勝敗数により決定
・勝敗数が同じ場合、当該チーム同士の勝敗数で決定
・上記でも同率の場合、当該チーム同士の総得失点差で決定
EASLスタッフへ取材したところ、変則的な順位決定方法をとらざるをえない悔しさを隠しませんでした。グループステージ1勝1敗とした宇都宮が、同じ1勝1敗のベイエリアとの得失点差で決勝進出を逃すなど、グループステージで対戦が無いチームがある不公平感を否定しませんでした。また大会の認知度を深める告知期間の短さや、ルールなど情報開示の遅れについては、反省と未来への改善と捉えていました。
逆に宇都宮・琉球が緊急対応や、情報が少ない大会運営でも、お客様を迎える体制を整えられることを証明し、高い運営能力を発揮したと言えるでしょう。
私が携わった試合中継も、直前まで情報が揃わない国際大会の難しさがありながらも、試合を海外に届ける体制を国内組で課題解決し、Bリーグで培った中継能力を海外勢へアピールする機会として、高いモチベーションで臨んでいました。
前提条件として、各リーグでルールが違います。影響が大きいオンザコートルールなどを表にまとめました。独自ルールがあり、イコール条件は難しいことを確認しておきましょう。また代表クラスをケガで欠く、外国籍選手を招集したばかりのチームなど、万全で臨めたチームは少ないこともありました。リーグ戦と並行して戦う国際大会では、クラブとしての総合力や、タイトルへのハングリーさが今後必要になるでしょう(EASLルールは、EASL所属・ベイエリア・ドランゴンズを参照)。
普段はオンザコート1のKBLです。レギュラーシーズンとの兼ね合いでバランスが崩れることを嫌い、EASLで認められるオンザコート2を使わないのでは?との声も現地ではありましたが、両チームとも両外国籍がほぼフル出場。韓国籍選手の鍛えられたフィジカル、バスケIQ、ワンポゼッションへの追及など、KBLの高い競争力を感じる両チームから学ぶ点は多く、納得のファイナル進出でした。
「今回の目的は各リーグの現在地を知るためと、ヤン・ジェミンの状況確認。彼とは常にコミュニケーションをとっており、ブレックスでの動向も把握している。世代交代が進む韓国代表で、彼の若さはポジティブだ。代表でプレーすることを夢見ているのは知っており、彼の情熱は届いている。」とコメント。
KBLにも増えているフィリピン籍選手については「ポジティブに捉えている。彼らがもたらす、スピードや身体能力が韓国籍選手との競争や、モチベーションアップにつながり、韓国バスケのレベルアップに貢献してくれている」とアジア特別枠の効果を語ってくれました。
韓国・アメリカ視察を終えたばかりの富山グラウジーズの浜口炎元HCも来場。「親交ある国内外のコーチ陣と様々な情報交換を行った。東アジアにおけるユーロリーグのような位置づけになれば、目指すステージが増え、選手やHCの刺激になる。韓国代表候補の選手たちは日本人選手が参考にする点も多く、このEASLを通じて知るいい機会になった」と教えてくれました。
国技バスケのプライドを見せることなく敗退したのがフィリピン勢です。TNTトロパン・ギガの元指揮官で現在も籍を残すフィリピン代表のビンセント・レイエスHCも来日。KBLの安養KGCで活躍するレンツ・アバンド(フィリピン代表)のチェックと両チームの代表候補の視察を兼ねた視察が来日の目的です。
若い選手が日本や韓国を選んでいる状況には「代表HCとしては、海外でプレーしていても、フィリピン代表でのプレーを選択してくれているので問題ないと思う。こういう状況に至る過程には、ネガティブなこともあったが、全体として良いことと捉えている。代表活動期間を長く設けられない点が課題だが、彼らがそれぞれ成長し国に貢献してくれると願っている」とコメント。
フィリピン籍選手がBリーグを盛り上げていることについても「とてもハッピー。彼らが日本のファンに喜んでもらっていることは本当にうれしい。Bリーグの発展に敬意を持っているし、これからもライバルとして切磋琢磨したい」と述べてくれました。
香港をホームタウンとし、ホーム&アウェーを戦う予定だったベイエリアは3位でフィニッシュ。東京オリンピックでオーストラリア代表を史上初銅メダルに導いたブライアン・ゴージャンHCが率い、所属地域出身の親を持つ選手は、自国選手として出場できるEASL独自のルールを最大限に生かしたチーム構成で臨みました。大会方式が変わり、母体リーグを失い、急遽参戦したPBA(フィリピンバスケットボール協会)のガバナーズカップでは24試合しか戦うことができず、準備期間が一番短いチームとなりましたが、さすが短期間で代表を作る仕事をこなし、メダルを獲ったゴージャンHCならではの仕事と言えるでしょう。
3位決定戦を終えたゴージャンHCへ、今後について取材すると「ベリーグッドクエスチョン!未定だ!」と笑いつつ。「いったん選手は母国へ帰国しオフへ入る。8月に活動再開予定だが、EASLが目指すホーム&アウェーの実現を尊重しつつ、中国CBAへ香港チームとして新規参入し、そこからEASL出場も可能性の一つだ。まずはBリーグのタフなファイナルを経験した宇都宮と琉球と戦えたことは光栄で、成し遂げたことがないチャレンジをした選手達を労いたい」とし、中国CBA参戦も示唆しながらも、確定していることはまだない模様です。
最後に、ファイナルまで進むことを信じ、会場に足を運んだ両チームのファン・ブースターにリスペクトを送りたいです。3位決定戦で琉球敗戦後も、キングスグッズを身に着けた多くのブースターが、KBL対戦となったファイナルを観戦していましたし、宇都宮のファイナル進出を信じ、沖縄アリーナまで駆け付けたブレックスファンの姿など、初のEASLを盛り上げた立役者はファン・ブースターでもあったと言えるでしょう。
【EASL大会公式サイト】
https://www.easl.basketball/
初のEASLは多くの関係者の尽力により無事に終了。このタイトルをBリーグ勢が獲るには、Jリーグが戦うアジアチャンピオンズリーグなどの取り組みも、参考にしていく必要があると感じました。今回、日本でアジアの強豪が戦うゲームが見られ、準備を整えてくれたEASL、Bリーグ、JBA、宇都宮、琉球のスタッフ、ボランティアクルーに改めて感謝いたします。ありがとうございました(井口基史)。