2017.11.23
11月18日、Bリーグ第9節第2戦が行われ、東地区首位のアルバルク東京は同地区5位のレバンガ北海道をアリーナ立川立飛で迎え撃った。
『スペシャルオリンピックスデー』と銘打って行われたこの試合には、ゲストとしてNBAレジェンドでもあるディケンベ・ムトンボ氏が来場。ムトンボ氏は代名詞のブロックショットを武器に最優秀守備選手賞を4度受賞、オールスター出場は8度を数え、2015年にはNBAの殿堂入りを果たしたスーパースターだ。ムトンボ氏のルイ・アームストロングのような低いバリトンボイスが会場に響き渡ると、アリーナは大きな盛りあがりを見せ、いまだ衰えぬ人気の高さをうかがわせた。このムトンボ氏が国際本部のアンバサダーを務めるスペシャルオリンピックスとは、知的障がいのある人たちが日常的なスポーツトレーニングの成果発表としてオリンピックと同じように競技会を行うもので、知的障がいのある人がスポーツを通し、社会に参加することを促進するための活動だ。
前日17日の一戦では、北海道のタイトなディフェンスに苦しみ、序盤に流れをつかむことができなかったA東京。試合の入りの悪さがそのまま勝敗を分けることとなり、76-81で今季3敗目を喫した。エースの田中大貴を怪我で欠いていることも大きいが、ゲームリズムが悪く、ボールが止まることや攻撃を仕掛けるタイミングもチグハグで、連敗を避けるためにも、なんとかオフェンスのリズムを取り戻したい。
試合は序盤からA東京、北海道ともに激しいディフェンスを展開。第1クォーターを18-10、第2クォーターを16-17とし、前半を終えて34-27というロースコアとなった。A東京はボールを早く動かす意識は見えるものの、ドライブを仕掛けるタイミングとアウトサイドでパスを待つ選手のタイミングがズレることが多く、24秒バイオレーションが目立ち、初戦同様にストレスのたまるオフェンスとなった。一方で、ディフェンスは北海道を上回るアグレッシブな姿勢を見せ、停滞するオフェンスをしっかりとした守備でカバーする形で試合のイニシアチブを取ることに成功した。
後半に入ると、A東京のオフェンスはインサイドとアウトサイドのバランスが改善。インサイドのアレックス・カークにディフェンスが寄ったところで、この日大当たりとなったザック・バランスキーが3ポイントを沈め、徐々に点差を離しにかかる。A東京は、要所で難しいシュートを決める折茂武彦やマーク・トラソリーニを軸にくらいつく北海道を、第4クォーターで一気に突き放し、89-69で勝利を納めた。
北海道の水野宏太ヘッドコーチは試合後の会見で「出足から主導権を握りに来るのがわかっていたが、自分たちの流れを作れなかった」と語り、「4クォーターまで我慢しながらやっていたが、最終的には突き放された。ここを食らいついていくことによって、最終的に価値につなげることができるチームになると思う」と前を向いた。また、「1週間で4試合をこなしている中、選手はハードワークをし続けてくれたのは、収穫だと思っている」と、タイトなスケジュールを戦い抜いた選手への称賛を口にした。
第1戦の悪い流れを断ちきることに成功したA東京のルカ・パヴィチェヴィッチHCは「選手がよく戦ってくれた。昨日の試合とは真逆で、昨日は出足はつまずいたが、今日は北海道にトランジッションポイントを与えなかったし、序盤のペースは握れたと思う。相手のマッチアップゾーンにもうまく対応できた」とチームの対応力の高さへの満足を示した。
一方、好調時と比較するといまいちリズムに乗りきれていないオフェンスに関しては、「オフェンスのリズムについては、ディフェンス側がいろいろと仕掛けてきたし、ゲーム中に対応しきれない部分もあった……。これからのシーズンでも同様のことはあると思うし、練習の中でしっかりと対応していきたい」と課題解決への意欲を見せた。
東地区首位のA東京だが、強豪ならではの悩みもある。田中、竹内譲次、馬場雄大と日本代表候補選手を3名も抱えることで、代表合宿に加えて怪我人などが重なると、5対5の練習も難しくなる。田中のケガによる戦線離脱の影響はもちろんだが、試合形式での練習が不足し、チームとしての実践感覚が鈍ることが先週の千葉ジェッツ戦、今週の北海道の初戦を落とした遠因となっているのは、ルカHCも認めるところだ。田中、竹内ら代表候補選手自身のコンディション維持以外に、チームとしては、主力不在時のコンディションとケミストリーの維持が重要な課題の一つとなる。
スター選手を抱える強豪が故の試練となるが、「日本代表に主力が呼ばれているので負けた」などとは名門の選手たちも決して言われたくないだろう。チームとしては厳しい状況下ではあるが、この状況を乗り越えてこえ、真の強豪としての座が見えてくるはずだ。いよいよ24日からスタートする「FIBA バスケットボールワールドカップ 2019 アジア地区1次予選」。男子日本代表も正念場となるが、支えるクラブ側の成長と、その協力体制も重要となることを、応援する側も忘れないようにしたい。
文=村上成
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