2019.04.15

難敵との直接対決で地区優勝達成、大一番でも揺るがなかった新潟アルビレックスBBの我慢強さ

川崎との天王山は、まさに今季の新潟の強さを証明するものだった[写真]=B.LEAGUE
2000年より、バスケットボール専門で取材活動中

 ダバンテ・ガードナーがボールを高々と投げ上げる瞬間、勝利を確信したオレンジブースターの歓喜が爆発した。

 中地区優勝マジックを「2」としていた新潟アルビレックスBBが、川崎ブレイブサンダースとの大熱戦を制して初の地区制覇。過去2シーズンは1勝9敗、今季も1勝3敗と分の悪かった同地区2位・川崎との直接対決で決めてみせた。地区優勝を決めた4月13日の試合は、今季の新潟の戦いぶりを象徴するものだった。第1クォーターは19点、第2クォーターは18点のタイスコアで、途中の点差も最大で3点。第3クォーターは川崎にやや押されて一度は7点差まで開いたが、クォーターを終えた時には1点差まで縮まっていた。そして運命の第4クォーターは再び一進一退のシーソーゲームとなり、試合終了残り14秒のラモント・ハミルトンのパワープレーで2点を勝ち越し。その後の川崎のオフェンスをしのいで冒頭の歓喜の瞬間を迎えた。

 五十嵐圭が「点差を離されても我慢強くプレーできる」と語ったように、今季の新潟は前半または第3クォーターまで我慢を重ねて勝機を手繰り寄せる試合展開で白星を積み重ねてきた。その試合運びの上で重要な役割を担っていた柏木真介がこの試合を出場停止となったにもかかわらず、それまでの56試合で積みあげた戦い方が崩れることはなかった。ハミルトンは試合を通じて体を張ったダックインで川崎のゴール下に脅威を与え続け、森井健太は試合中に負傷した五十嵐に代わってゾーンアタックをコントロール、池田雄一は第4クォーターに貴重な3ポイントを3本炸裂させた。逆転地区優勝を狙う川崎との大一番で個々が己の役割を全うできたことは、試合を重ねる毎に成長した今季の新潟の強さを証明するものだ。

池田は勝負の第4クォーターで4本中3本の3ポイントを決めた[写真]=B.LEAGUE

 庄司和広ヘッドコーチは、柏木が退場した前節の富山グラウジーズ戦のハーフタイムとこの川崎戦の試合前に「何のためにプレーしているのか、今どこにフォーカスするのか、目標のために何をやらなければならないか。柏木がいるいないは関係なく、コートの選手もベンチも同じページで戦おう」と再確認。その言葉に全選手がしっかり顔を上げて耳を傾け、川崎との紙一重の勝負に勝ちきれる1本の太いベクトルを作りあげたのだ。

 この試合に関して忘れてはならないのが、開幕前の不祥事による出場停止が解除されてベンチ入りを果たした今村佳太の存在だ。起用に関しては庄司HCも試合の戦略以上に悩んだというが、「『自分が出すと決めたんだから思いきってプレーしなさい』とだけ伝えました」とHCとしての覚悟を示した。試合前に庄司HCとともにブースターに頭を下げた今村は、約8カ月ぶりの実戦とは思えない試合勘で川崎のゾーンを攻略し、7得点3アシストで指揮官の覚悟に報いた。

今村は第2クォーター開始1分25秒に復帰後初のコートへ[写真]=B.LEAGUE

 そして、この地区優勝を誰よりも噛みしめていたのが庄司HCだ。8チームを渡り歩いた現役生活で最も長い5シーズンをこの新潟で過ごし、キャプテンも務めた庄司HCの新潟の地への思い入れは人一倍強い。日本初のプロチームで戦う自負を胸に、指揮官は「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19」でのさらなる飛躍を誓う。

「選手も長くやりましたが、優勝にはあまり縁がなかった。私は新潟の初年度からプレーさせてもらって、特に川崎は手の届かない相手だったんですがこうして勝てるようになって地区優勝もできた。少しはアルビレックスに恩返しできたのかなという安心感が大きいです。CSをホームで開催できるのでまた多くのお客様にご来場してもらえるだけでなく、相手チームのファンの方にもたくさん来ていただける。CSに恥じない試合をしていきたいですし、私たちがしっかりプレーすることで今のバスケット人気を確立できるように戦っていきたい」

ホーム開催となるCS初戦は、アルバルク東京を迎え撃つ[写真]=B.LEAGUE

文=吉川哲彦

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