2019.05.05
4月29日、熊本県立総合体育館で「B2 PLAYOFFS 2018-19」のセミファイナル第3戦が行われた。熊本ヴォルターズは来季のB1ライセンスを交付されており、1勝1敗で迎えたこの試合に勝てば昇格が決まる。対する群馬クレインサンダーズはB1ライセンスを持っていないが、強力な守備で東地区を制していた。
チケットは28日20時と直前の発売で、さらに雨模様だったにもかかわらず、大一番に3784名の観客が詰めかけた。第1クォーターは群馬が23-20で先行。アブドゥーラ・クウソーが2ファウルで早々にベンチへ下がるトラブルはあったが、野口夏来がよくつないだ。トーマス・ケネディも3ポイントのブザービーターを決め、好スタートに成功した。
第2クォーターは熊本が反撃に出る。前半のスタッツを見ると中西良太がポストプレーなどから14得点。福田真生も3ポイントを3本成功させていた。前半残り2分を29-32のビハインドで迎えた熊本はそこから連続8得点。37-32と5点リードでハーフタイムへ。第3クォーターに入っても、熊本のポイントガード古野拓巳が1人で8得点を挙げる活躍を見せ、55-51とリードを守って同クォーターを終えた。
一方の群馬は、エースのケネディが精彩を欠いていた。しかもケネディとクウソーは第3クォーター終了時点でそろって3ファウルに追いにまれていた。しかし、我慢できるのが彼らの強さ。ゾーンディフェンスも交えて熊本の勢いを抑え、普段はケネディに打たせるプレーに徹するクウソーが必要な得点を挙げていた。
平岡富士貴ヘッドコーチは“我慢の采配”をこう説明する。
「ファウルトラブルになったとしても、チリジ(ネパウエ)が出ているときはできるだけマッチアップさせて、もしくは野口を入れてゾーンディフェンスで凌ぎながらやろうと考えていました。(クウソーは)最後の最後でファウルアウトしましたけれど、非常に我慢強くやってくれた」
第4クォーターに入った開始51秒、群馬はクウソーがルーズボールに身体ごと飛びこむハッスルプレーでオフェンスリバウンドを確保。つないだボールから小淵雅がミドルシュートを決めて、ビハインドを53-55に縮める。
小淵はこう胸を張る。
「そういうところです。3試合連続で身体的にしんどいし、精神的にもしんどい。向こうはB1昇格という目標があって、そのプレッシャーもあったと思うんですけれど、僕らも負けていられない。その気持ちがあのルーズボールやリバウンドで出た。それ一つでリズムが変わったりする」
第4クォーターの入りから5分近くスコアできなかった熊本に対し、群馬は連続12得点のランで63-55と試合をひっくり返す。守備ではインサイドを締め、熊本のエースであるチェハーレス・タプスコットのフィールドゴール成功率を14分の2まで下げていた。
しかし、熊本もホームの後押しを受けて、ネパウエにボールを集めて反撃。試合終了残り21秒で70-72と2点差まで迫る。熊本はファウルゲームを選択。群馬は残り17秒のフリースローを佐竹宥哉が2投して1本失敗。スコアは70-73と1ポゼション差だった。
熊本は残り7秒、タプスコットが同点3ポイントを狙う。しかしこれが決まらない。オフェンスリバウンドは確保したが、ネパウエが残り3秒で決めたシュートは2ポイントだった。残り2.4秒から試合は再開される。熊本はファウルができず、群馬がボールをキープして試合は決着した。最終スコアは73-72。勝者は群馬だった。
熊本はB1昇格を決められなかった。古野は敗因をこう振り返る。
「終盤でのリバウンド、ルーズボールが勝敗を分けた。1シーズンをとおして言い続けてきたことができなかった。オフェンスリバウンドも取られて、(群馬の)オフェンス回数を増やしてしまった。(オフェンスは)ウイングの選手にいいパフォーマンスがないと、僕とタプスコットのハイピックしか攻め手がなくなる。それでも今まで打開してきたけれど、今日は群馬さんのディフェンスが1つ上だった」
中西良太は沈痛な表情でこう語っていた。
「僕はこの試合に賭けていた。去年の入れ替え戦からこの日のためにと思ってやっていましたし、この日のために熊本に残った。すぐに気持ちを切り替えることは、なかなかできない」
しかし絞り出すように、こう続けていた。
「来週には試合が来ますし、B1に上がるチャンスはまだある。チーム一丸となって、必ず来週、B1昇格を決めたいと思っています」
文=大島和人
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