2025.07.15
Bリーグが、社会的責任活動『B.LEAGUE Hope』の一環として各クラブと進める『B.LEAGUE Hope × 日本生命 地域を元気に!バスケACTION』。その2024-25シーズンの活動の成果や次のステップへの課題を共有するナレッジ共有会が14日、都内で開催された。
この取り組みは、2021年以来リーグのパートナーである日本生命が、2024-25シーズンから新たに『B.LEAGUE サステナビリティパートナー』として展開しているもの。Bリーグ創設以来培われてきた社会貢献活動の基盤と、日本生命が持つ全国的なネットワークや7万人の従業員の推進力。この二つの相乗効果によって、各クラブが活動の主体となり、それぞれの地域を元気にすることを目指している。
2024-25シーズンはB1・B2から36クラブがこの活動にエントリー。ナレッジ共有会ではそのなかからいくつかのクラブが事例を紹介し、各クラブの担当者はプレゼンテーションに聞き入った。
「静岡市は今、人口減少率が全国ワースト2位という危機的な状況にあります」
そう語るのは、ベルテックス静岡の担当者。クラブは“スポーツで、日本一ワクワクする街へ。”というミッションを掲げ、地域の切実な課題に正面から向き合った。ターゲットとしたのは、市外からの転入者などまだクラブとの接点が薄い人々。彼らにバスケを通じて静岡を好きになってもらうため、ホームゲームへの観戦招待を企画した。
単なるチケットプレゼントでは終わらせないのが彼らの工夫だ。『試合で50点目を決める選手当てクイズ』や、スマホを使った『フリースローチャレンジ』など、誰もが楽しめる参加型企画で観戦体験にエッセンスを加えた。さらに、試合後には日本生命の営業職員と連携し、招待者へのお礼訪問を実施。このていねいなフォローが実を結び、一度の招待をきっかけに継続してアリーナに足を運ぶファンが生まれる好循環につながったという。
人口減少という大きなテーマに対し、スポーツ観戦体験の提供や健康増進を掛け合わせることで、地域との新たな絆を創出した好例だ。
“社会貢献”という言葉を聞いたとき、私たちは無意識のうちに『活動をする側』と『活動をされる側』に区別してはいないだろうか。その固定観念に風穴を開けようと立ち上がったのが、茨城ロボッツの『心のバリアフリープロジェクト』だ。
きっかけは、ある特別支援学校の校長からの一言だった。「選手やチアリーダーに来てもらえるのはうれしいが、それだけでなく、子どもたちがチャレンジし活躍できる場をつくってほしい」。この言葉を受け、ロボッツは自らが主役になるのではなく、様々な人が交わる“ハブ”となることを選んだ。
具体的な活動は『まちなかバリアフリーマップの作成』と『車いすバスケ体験会』。医療法人やNPO、地元の大学など10以上の団体を巻き込み、水戸市街地で同時多発的に開催。地域による持続可能性を意識し、クラブはあくまで全体の調整役に徹した。結果、当日は街中に多くの車いすユーザーが行き交う光景が生まれた。障がいがある人もない人も、誰もが対等な立場で楽しみ、学び合う。有識者から「大変さを教えるのではなく、楽しさを伝える体験会だった」と評されたこの取り組みは、DE&I(ダイバーシティ=多様性、エクイティ=公平性、インクルージョン=包摂性)の理念を体現するものとなった。
スポーツクラブが環境問題に取り組む。ともすると少し難しく捉えがちなこのテーマに、ゴミ拾いという身近な活動でアプローチしたのが宇都宮ブレックスだ。
「これまでバスケ以外の分野にチャレンジできていなかった」という課題意識から、ホームタウンへの愛着を育むことを目的に企画。宇都宮駅周辺での清掃活動には、定員を大幅に上回る約200名から応募が届いたという。
この反響の裏には、参加価値を高める設計があった。マスコットやチアリーダーが活動に参加したほか、事務局からの活動協力金を活用し、参加賞として環境配慮素材で作られたボールペンやタンブラーを用意した。単なるボランティア活動ではなく、「ブレックスの楽しいイベント」として参加のハードルを下げたのだ。また、宇都宮市と連携し用具の貸し出しから集めたゴミの回収までスムーズな運営体制を構築。参加者の満足度も非常に高く「自分の住む街がきれいになってうれしい」との声が聞かれた。スポーツが持つ力を地域の環境美化という具体的な行動へと昇華させた事例となった。
ナレッジ共有会の冒頭であいさつしたBリーグの島田慎二チェアマンは、“バスケACTION”がリーグの理念実現の“核”になる重要な取り組みだと語る。
「この領域は足の長い話(になります)。すぐ結果が出るものではないが、やらなければ何も変わらない。質を追求し、地域を巻き込んで必要とされるアクションが増えることを願っています」
この記事で触れたクラブ以外も、それぞれが地域社会のリアルな課題に根差し、バスケットボールを通じてポジティブな変化を生み出そうとする、まさにチェアマンの言葉を体現する挑戦を行った。
コート上での熱い戦いはもとより、応援してくれる人を元気にし、地域に必要とされる存在となるためにクラブが主体となって汗を流す。コートの外での取り組みは日本のスポーツ文化に新たな価値を与えようとしている。
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