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「みんなで留学生のセンター(190センチ)を徹底的に守ろうと話をしていたのですが、そこがちょっと難しくて。オフェンスでもシュートを打ち切るところで打ち切れなかったので、後半にやられてしまったのかなと思います」
「令和7年度全国中学校体育大会 第55回全国中学校バスケットボール大会」(8月22日〜24日/鹿児島県)において、女子準優勝となった四日市メリノール学院中学校(三重県)。3年生の安井穂香は、このように京都精華学園中学校(京都府)との決勝戦を振り返った。
試合は序盤から互いに譲らず、一進一退の展開に。四日市メリノール学院は、アニボグ ジェニファー チナザ(3年)のリバウンドシュートを主体とする京都精華学園に対し、アウトサイドのシュートや合わせのプレーから攻撃を仕掛けていく。すると第2クォーター、残り4分を切ってから四日市メリノール学院は安井や庄司希望(2年)らで立て続けに加点。その後も激しいディフェンスからボールを奪うと、それを確実に得点につなげて前半を7点リードで終えた。
後半もタイトなディフェンスで京都精華学園の攻撃を封じた四日市メリノール学院。攻めては思い切りよくドライブを仕掛け、一時は10点のリードを奪う。だが、ここで京都精華学園が2年生主体のメンバーに代えると徐々に流れは京都精華学園へ。第3クォーター中盤には再びコートに戻ってきた京都精華学園の3年生たちにも得点を与えてしまい、逆転を許してしまった。4点ビハインドでスタートした第4クォーターでも粘りを見せた四日市メリノール学院だったが、落ち着きを取り戻した京都精華学園を捉えることができず、最後は66−78で涙をのんだ。
「停滞してしまうことが多く、相手が大きいので(シュートも)どのタイミングで打てばいいのか少し迷ってしまったところがありました。もっと強気で入っていけるタイミングがあったと思うんですけど、よく見られていなかったかなと思います」
決勝戦後、ガードとしてボール運びからパスはもちろん、自らの得点と多くの役割を担った安井の口からは、反省の言葉が多く出たが、チームのエースとして決勝ではドライブや3ポイントシュートなどディフェンスに応じた攻めで19得点。3ポイントシュートも5本を沈めて気を吐いた。

決勝では5本の3ポイントを含む19得点をマーク [写真]=田島早苗
今大会、四日市メリノール学院にとってアクシデントに見舞われたのは大会初日の2戦目。開始から1分弱のところで竹田花梨(3年)が大ケガをし、主軸の選手を一人欠いての戦いを強いられてしまったのだ。
チームをけん引してきた竹田の不在は、「(竹田がいると)ツーガードでやることができて、安井を休ませることができる。安井がボールを持たなくてもいいような状況ができるので、そこは非常に難しかったです」と、稲垣愛コーチは言う。安井も「やっぱり彼女の存在は自分の中では大きくて、彼女がいなくなってからは不安も大きかったです」とコメント。さらに「でも、彼女のおかげで頑張れたというのもあって、すごい力になりました。決勝で勝って、コートに立たせてあげたかったけれど…」と心情を口にした。
なお、その竹田はケガしたあと、「試合に出られなくてもチームが優勝するために自分で何ができるか。ベンチで流れが悪かったり、困ったりしたときは声を掛けていました」と、ベンチでは懸命に声援を送り、時には「弱気になっている選手に”自信を持って”と言いました」と檄も飛ばした。それこそ、ケガをしたその試合でも「試合に出られなくなったけど、見えないところで応援するのではなくてベンチに座って最後まで応援したかった」と、ケガのショックはあっただろうが、すぐにベンチに戻って仲間のプレーを見届けた。
そんな竹田は、安井について「最後まで3ポイントシュートを決め、チームを支えようとしていた」と言う。

竹田花梨とハグして安井はコートイン [写真]=田島早苗
全中は最終日に準決勝と決勝が行われるが、四日市メリノール学院は八王子市立第一中学校(東京都)と準決勝で激戦を演じての決勝進出。そこでの疲労は間違いなくたまっていただろう。だが、稲垣コーチは安井に向けて「でも、そんなの言い訳にはならないです。厳しい言い方をすると、彼女はそんな選手ではない。もっと(周りを)奮い立たせなきゃいけない選手なので」と、期待が大きいからこそあえて厳しい言葉を発した。
「オフェンス面で欠けたところは多かったとは思いますが、一人ひとりが積極的に行くことができ、そこで自分たちの得点にはつながったと思います」と、竹田不在の中で戦った大会を振り返った安井。
そして冬に行われるJr.(ジュニア)ウインターカップに向けては「今大会は自分の自信にはつながりました。それに自分の課題とチームの課題もよく分かったので、そこをジュニアウインターカップまでに修正して、絶対に日本一を獲ります」と力強く誓っていた。
文・写真=田島早苗