2026.01.09
「金メダルをかけてあげたかったけど……」。試合後、稲垣愛ヘッドコーチが口にしたその言葉には、結果だけでは語り切れない時間と感情が詰まっていた。昨夏の全国中学校大会決勝での敗戦から約4カ月。四日市メリノール学院中学校(三重県)は、その結果を真正面から受け止め、日本一を目標にJr.ウインターカップへと歩みを進めてきた。その悔しさを原点に、チームはディフェンスを軸に再構築され、特定の選手に依存しないチームへ成長していた。
1月8日、京王アリーナTOKYOで行われた「京王 Jr.ウインターカップ 2025-26 2025年度 第6回全国U15バスケットボール選手権大会」女子決勝。四日市メリノール学院中学校(三重県)は、京都精華学園中学校(京都府)と対戦し、46-71で敗れた。結果は準優勝。日本一には届かなかったが、この決勝では、夏以降に積み上げてきた取り組みが成果として発揮できたと言えるだろう。
試合は序盤から京都精華学園が主導権を握った。第1クォーター、インサイドを起点に得点を重ねられ、14-8とリードを許す。第2クォーターも流れは大きく変わらず、四日市メリノールは安井穂香や豊山響寧を中心に応戦したものの、前半を23-36で折り返した。
稲垣HCが描いていたのは、「前半はなんとかついていって、後半勝負かなと思っていました」。前半を我慢し、後半で勝負する。その構想の中で誤算となったのが、ファウルトラブルだった。

チーム力をアップして今大会に臨んだ稲垣愛HC [写真]=バスケットボールキング
インサイドで体を張り、相手のリズムを崩す狙いだったが、想定よりも早い段階でファウルが重なり、ビッグマン2人が前半で苦しい状況に立たされた。「守り方のところで、少し狂いが生じました」。稲垣HCはそう振り返る。結果として、ローテーションの変更を余儀なくされ、オフェンスのリズムにも影響が及んだ。
それでも、準備してきたディフェンスが崩れたわけではない。バックコートからプレッシャーをかけ、フロントコートへの侵入を遅らせる。インサイドへのパスやエースへの展開を制限し、京都精華学園から29のターンオーバーを奪った。決勝という舞台で残したこの数字は、夏以降に磨いてきた守備の積み重ねを裏付けるものだった。
だが、第3クォーターに流れが大きく傾く。リバウンドを支配され、セカンドチャンスから失点が続いた。点差が広がる中で、ルーズボールへの一歩や競り合いの局面で、わずかな差が積み重なっていく。「うまくいかなくなったときのメンタル・コントロールが、まだ課題だった」。稲垣HCは、試合の分岐点をそう分析する。
第4クォーターは最後までコート上の選手たちは戦い続けた。連続3ポイントで反撃の兆しを見せる場面もあったが、追い上げには至らない。最終スコア46-71。高さと決定力を兼ね備えた相手を前に、現時点での差を突き付けられる結果となった。
この準優勝は、単に結果だけで評価されるものではない。今大会の四日市メリノールは、安井穂香に頼らないバスケットボールを展開した。中学生ながらU16日本代表に選出され、FIBA女子U16アジアカップでも活躍した安井は、チームの絶対的なエースだ。一方で、彼女一人に委ねる形では全国の頂点に届かない。その現実を受け止めた上で、チーム全体の底上げに取り組んできたことが、この決勝の内容にも表れていた。
安井自身も、その変化を実感している。「スタートの5人だけじゃなくて、控えで出てくる選手も、みんな同じように力を持っているのがメリノールの良さです」。ファウルトラブルの中でもベンチから声が飛び、支え合いながら試合を進めた経験は、エースとしての視野を広げるものだった。

厳しいマークにあいながらゴールを目指した安井 [写真]=バスケットボールキング
決勝後、安井は悔しさをにじませながらも、前向きな手応えを口にした。「思い通りにいかない中でも、『笑顔でやっていこう』と声を掛けてもらって、楽しんでプレーしようと思えました」。結果以上に、試合を通じて得た感覚が、次の成長につながっていく。
また、この大会を通じて、コート外での結束も強く印象付けた。決勝後、稲垣HCは全中でケガをした竹田花梨をベンチメンバーに入れ続けた理由について、こう語っている。「彼女がベンチにいてくれるだけでチームの雰囲気が変わる。外す選択肢はなかった」。また現在、白血病と闘うチームメートがいる中で、「その子の分まで」という思いを全員が共有していたという。「金メダルをかけてあげたかったけど、銀メダルになってしまって……」。その言葉には、結果以上に大切にしてきたものがにじんでいた。
ディフェンスを軸に、個からチームへ。全中準優勝を起点に始まった歩みは、Jr.ウインターカップ準優勝という形で実を結んだ。日本一には届かなかったが、稲垣HCと選手たちが求めたバスケットボールが間違っていなかったことを証明している。
文=入江美紀雄
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