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12月18日、「第89回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド・決勝が行われ、ENEOSサンフラワーズとデンソーアイリスが対戦した。
試合前、両チームの選手紹介や国歌斉唱といったオープニングセレモニーでは、台上に飾られた皇后杯が登場。オープニングセレモニーを終えるとその皇后杯は試合開始に向けて一旦コートの外に運ばれたのだが、その様子を見たENEOSの渡嘉敷来夢は、また持って帰ろうと心に誓ったという。
「“待っててね”じゃないけれど、そういう気持ちで見ていました」
迎えたデンソーとの試合は、序盤から互いに譲らず。こう着状態のまま、第3クォーターを終えてENEOSが49-50と1点のビハインドを負う。しかし、第4クォーターでは早々に合わせのプレーから渡嘉敷がシュートを決めると、再び渡嘉敷がフリースローで加点。長岡萌映子も3ポイントシュートで続き、さらにそこから約1分後には星杏璃も3ポイントシュートを沈めてENEOSが一気に9点差を付けた。
これで主導権を握ったENEOSは、そのままリードを守り抜き、76-66で勝利。見事、10連覇を達成した。
「苦しい展開もあったのですが、チーム全員で最後の最後まで踏ん張ることができてうれしく思っています。10連覇は意識していなくて、一戦一戦勝ち切ることが大事だと思っていました」
試合後の記者会見、キャプテンの渡嘉敷は、笑顔で優勝の感想を語った。
今シーズンは、10月19日のWリーグ開幕戦でトヨタ自動車アンテロープスと対戦し、57-70で敗戦。翌日の2戦目では競り勝ったものの、続く2週目では富士通レッドウェーブに2連敗と黒星が先行した。その後は、プレステージ・インターナショナル アランマーレ、山梨クィーンビーズにそれぞれ2勝を挙げて5勝3敗としたものの(12月11日現在)、昨シーズンの上位チームとの対戦では負け越していることもあり、周囲からは皇后杯での連覇を不安視する声もあった。そこには渡嘉敷と宮崎早織の日本代表組がチームへの合流が開幕間近で、全員そろってのチーム作りの時間が少なかったことなどもあるのだが、コート上の優勝インタビューで宮崎が「開幕から負けが続いていたので、怖かった」と、語ったように、選手たちも勝てない時期は不安な気持ちがよぎった。
その中で、開幕戦で足首の疲労骨折から約半年ぶりに実戦復帰を果たした林咲希やシーズン序盤はコンディション面で調整中だった長岡萌映子らの調子が上がってきたことは大きかった。特に長岡に関しては、本人も「どこでポストアップするのかなど、みんなが私のプレーを分かるようになったし、私もみんなのプレーを理解できるようになってきたと思います」と言うように、開幕の頃より合わせのプレーが多くなり、よりチームにフィットし、好プレーを発揮した。
さらに、大会ベスト5を受賞した星杏璃の成長もチームを後押しした。今シーズンはWリーグでも目覚ましい活躍を見せている4年目のガードは、持ち味の3ポイントシュートを武器に積極的な攻めで得点。準決勝のトヨタ自動車戦では21得点をマークした。
ガードでいえば、司令塔の宮崎も安定したプレーかつ時にアグレッシブな動きでけん引。決勝では10得点10アシストと、要所を締める働きは見事だった。
そして、何より大黒柱として背中で引っ張ったのが渡嘉敷だ。準決勝では32得点17リバウンド。そして決勝でもマッチアップの相手であるデンソーの髙田真希に対して果敢に1対1を挑むなど32得点22リバウンドを叩き出した。その力強いプレーからは、“チームを勝たせたい”という気迫が伝わり、この思いにチームメートも呼応した。
「開幕よりもチームが一つになっていると感じます。やるべきことが明確になっていて、一人ひとりの意識が高くなったことが優勝につながったのかなと思います」と、渡嘉敷は約2カ月でのチームの成長をこう語った。
表彰式では、試合前に心の声を掛けた皇后杯を渡嘉敷自らが高々と掲げた。
この皇后杯、前回大会の優勝チームが一度大会側に返却するのだが、ENEOSから受け取った杯がとても綺麗に磨かれていることに担当者は気がついたという。
ENEOSでは、優勝カップや盾などはガラス扉の棚に、ほこりや汚れがつかないように大事に保管しながら飾っているのだが、返却時には毎回、歴代のマネジャーがしっかりと磨いてきた。そこには、マネジャーの思いもしっかりと込められているだろう。
ピカピカに磨かれた皇后杯は、選手、スタッフの願い通り、再びENEOSが手にした。だが、優勝の余韻に浸っている暇はない。23日からはWリーグが再開する。
「どこからでもシュートを打てるというのは今大会で証明できたと思うので、リーグ戦でもみんなで攻めていきたいです」と、力強く語ったのは宮崎。
『2冠』獲得に向け、次は2シーズン手にしていないWリーグのトロフィーをチーム一丸となって奪いに行く。