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12月17日、「第89回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド・準決勝が行われ、9連覇中のENEOSサンフラワーズがトヨタ自動車アンテロープスと対戦した。
試合は出だしから好スタートを切ったENEOSが先行。星杏璃の3ポイントシュートや渡嘉敷来夢のポストプレーなどで得点を重ねていく。しかし、11点リードで迎えた第2クォーターではトヨタ自動車の山本麻衣らに3ポイントシュートを許すと、自らのミスでも失点し、前半は37−39と2点ビハインドで終える。
だが後半、開始早々に星が3ポイントシュートを沈めると、ENEOSは渡嘉敷が攻防において大車輪の活躍。最後は77−57でトヨタ自動車を振り切り、決勝進出を決めた。
「(チームとして意識していた)“試合の出だし”が良く、途中で追い付かれはしましたが、そこはちゃんと守れていなかったり、リバウンドを取れていなかったりしていたときだったので、そこを徹底すれば大丈夫という安心感はありました。選手の気持ちが途切れることなく後半も戦えて、いい流れで試合ができたと思います」と、試合を振り返ったのはENEOSの林咲希。
林はENEOSだけでなく日本を代表するシューターだが、この試合では3ポイントシュートを警戒されて相手から執拗なマークに遭っていた。
ただ、3ポイントシュートを打たせてもらえない状況にも、「3ポイントシュートが打てなくてもフラストレーションをためることなく、チームの一員として戦えているとは思っていました」と、キッパリ。「絶対にリバウンド頑張ろうと思って、そこに集中していたし、走りでも負けないと思っていました」とも語った。
その言葉の通り、試合では幾度となくリバウンドに絡み、奪った本数は7本。だがそれ以上に、ボールは取れないまでも、リバウンドに絡むことでトヨタ自動車の攻撃を遅らせるなど、数字に現れない貢献も大きかった。また、本人が言うように、リバウンドだけでなく、常に先頭を走ることやディフェンスなどでも献身的な働きを見せ、チームに流れを引き寄せていた。
そして、第4クォーターの残り5分を切ったところでは、待望の3ポイントシュートを沈める。試合で放った3ポイントシュートはこの1本だけだったが、追い上げを図るトヨタ自動車の戦意をくじくような見事な一撃だったといえるだろう。
このシュートについて林は、「あのときはチャンスだなと思っていまいた。それまでも何本か打てるところはあったのですが、『今はまだいいかな』と思っていて、『ここ、というときに打とう』と決めていました」と、言う。
戦いながらも冷静に試合の状況を見ることができていたのには、こんな理由があるそうだ。
「ケガから復帰しましたが、まだチームのみんなに引っ張ってもらうことが多く、今も助けてもらいながらやっている状況です。でも、それが(試合では)負担を感じずにプレーできていることにつながっていて、今までだったら『自分が攻めなきゃ、やらなきゃ』と思っていたのですが、今はそこを割り切ってやれているところがあります」
いよいよ決勝の舞台へとコマを進めたENEOS。優勝へのカギを握る選手である林も、大一番に向けて思いを新たにしていた。
「個人的には今日(準決勝)のようにリバウンドやルーズを絶対に負けないことと40分間ハードワークを忘れずに。今日も苦しい時間帯で粘ることができたので、そういった時間を何回も何回も自分たちて作って、声掛け合いながら、勝ちたい気持ちを前面に出して戦いたいです」
取材・文=田島早苗
写真=兼子愼一郎