2020.10.05

金丸晃輔が本領発揮の28得点! まさかのFT失敗には会場どよめく…

金丸は第2戦で28得点を挙げて勝利に貢献した[写真]=B.LEAGUE
元バスケットボールキング編集部。主に国内バスケ(Bリーグ、高校・大学バスケ)を中心に取材活動中。バスケでオウンゴールしたことあります。

まさかの出来事に会場も困惑……。

 会場が思わずどよめいた。金丸晃輔がフリースローを外したのだ。

 正確無比なシュート力を最大の武器とするシーホース三河の背番号14は、過去4シーズン、ベスト5とともにベストフリースロー成功率賞も連続で受賞している。昨季のフリースローでは65本連続で成功という驚異的なパフォーマンスを発揮し、最終的に78本中76本の成功、97.6パーセントという成功率を叩き出したほどだ。

 そんな金丸にとって、フリースローは「入れて当然」のシチュエーションである。だが、10月4日のサンロッカーズ渋谷戦、開幕からわずか2戦目で、外した。

 第3クォーター開始3分18秒、相手ベンチに対しテクニカルファウルが宣告されると、三河は選手1人がフリースローラインに立つことが許される。チームが託したのは当然、金丸だ。前日の第1戦では打つ機会が訪れず、金丸にとってこれが今シーズン1投目のフリースロー。直近の試合展開は、三河が5点ビハインドを追いつき、スコアは52-52。

 これで三河が逆転か――。打つ前から、すでに筆者も“未来”を見ていた。しかし、現実はボールがリングではね、ネットを通過せずにコートへ落ちた。

 この瞬間、青山学院記念館は手拍子の音が一段階大きくなるとともに、ファンからは「おぉーー!」という驚きの声がマスク越しに漏れる。

 金丸はユニフォームのパンツを両手でたくし上げ、少し顔をこわばらせて悔しさをあらわに。しかし、試合後の会見では「もちろん入れるつもりでしたけど、普通に外しました……(笑)。ちょっと弱気になっていた部分があったのかもしれませんね」と、首を傾げた。

 この時に見せたお手本のような苦笑いが、今でも忘れられない。

昨シーズン65本連続でFTを決めた金丸だったが、今シーズン開幕2戦目で外した[写真]=B.LEAGUE

両軍最多28得点を奪取、今季は「3Pを積極的に」

 実はこの試合、金丸はもう1本フリースローを外している。

 1点リードで迎えた最終クォーター残り5秒、1本目は難なく沈めたが、2本がリングに嫌われた。3点リードにできたチャンスは、相手に逆転されるピンチに変わる。しかし最後は、ライアン・ケリーのシュートをセドリック・シモンズがブロックショットで阻み、89−87でタイムアップ。三河は2戦連続のシーソーゲームをものにし、開幕連勝スタートを切った。

 最後はチームメートに助けられた印象だが、試合を通して金丸は両チーム最多の28得点をマーク。5得点に終わった第1戦から見事に修正し、エースとしての役目を果たした。

「昨日はスリーポイントを綺麗に打とうとして、フロアバランスを見すぎてしまいました。その結果、ボールも来なくて得点もスリーポイントもなかなか打てなかったです」。

 そう前日の反省を口にした金丸。しかし、第2戦では立ち上がりからシュートタッチも良く、相手が間合いを詰めてくればドライブで中への侵入を選択。そこからレイアップやジャンプシュートでも得点を重ね、個人技にもさらに磨きをかけているとさえ感じさせた。

「今日はスタイルを変えて、スリーポイントが打てなかったらドライブに切り替えようと意識しました。相手のプレッシャーが激しい分、ドライブが有効になることもわかっていたので、それがうまくいってよかったです」

 今シーズンの金丸は、これまで以上に3ポイントを積極的に狙うことを個人目標に掲げているという。

「昨シーズンはアテンプト(試投数)が少なくて1試合平均3本くらいしか打ってなかったです」。実際の数字を見てみると、昨季はスリーポイント成功率は44.8パーセントと高い。だが、試投数は1試合平均3.8本と本人としては物足りない結果となった。

「それでは僕の持ち味も出ないですし、チームにいい影響を与えることができない」と金丸。SR渋谷との第2戦のスリーポイントは8本中5本、2ポイントに関しても8本中4本を得点につなげてみせ、今後は「今日みたいに、いい時は10本以上は打っていきたいです」と意気込む。

 桜木ジェイアール(現アイシン・エィ・ダブリュウィングスのテクニカルアドバイザー)が引退を決断しチームを去ったが、今シーズンの三河には金丸のかつてのチームメートでもある柏木真介が戻ってきた。今後は「今、何をすればいいか熟知していますし、勝負どころでも落ち着いて試合運びができる」と信頼を寄せるベテランポイントガードとの連携もさらに深まり、金丸の得点シーンもますます増えてくるだろう。

 『ソーシャルディスタンス』が当たり前になった今の世の中だが、コート上では常に金丸晃輔と『密』でいなければならない。

 この日の金丸のプレーを確認し、今後対策を練ろうとするライバルチームたちの気持ちは、こんな感じだろうか。

 文=小沼克年

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