2021.03.29
チャンピオンシップ進出を争う東地区3位のサンロッカーズ渋谷と同1位の宇都宮ブレックスの東地区上位決戦。1月30日に行われた第1戦は77-71でSR渋谷に軍配が上がった。勝因はSR渋谷の持ち味であるチームディフェンスであるが、前節のブレーキから吹っ切れたキャプテン・ベンドラメ礼生の活躍も勝利を引き寄せる大きな力になったと言えるだろう。
振り返ると24日の滋賀レイクスターズ戦でチームの得点王であるライアン・ケリーが負傷。27日の川崎ブレイブサンダーズ戦ではエースを欠いての試合となったが、73-86で敗戦。ケリーはその後インジュアリーリストに登録されるという悪い流れがあった。
それでもSR渋谷は今節、本来の強さを攻防両面で披露する。激しく仕掛けるチームディフェンスが機能し、ミスの少ない宇都宮に16個のターンオーバーを数えさせた。
そして攻撃では大事な場面で、ことごとくベンドラメの活躍が光ったのだ。
とりわけ第4クォーター残り1分を切ってからの5得点はハイライトと言える。ベンドラメが左45度付近で竹内公輔との1対1から決めた3ポイントシュート、さらに相手のタイムアウトを挟んでドライブから沈めたジャンパーで、勝利を決定づけたからだ。SR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチも「礼生がしっかり勝負強さを見せてくれたと思います」と、そのパフォーマンスを称えた。
また終わってみれば、第4クォーターの活躍を予感させるようなプレーが第3クォーターにあった。残り5分から見せた右45度付近でのジョシュ・スコットと1対1から決めた3ポイント、ピック&ロールから味方のチャールズ・ジャクソンのバスケットカウントを演出するアシストを披露。残り3分50秒でリードを10点に広げ、宇都宮にタイムアウトを取らざるを得ない展開に持ち込んだこれらの場面を、ベンドラメは次のように振り返る。
「3ポイントは相手がビッグマンだったので勝負を仕掛けるつもりだったし、マック(ジェームズ・マイケル・マカドゥ)も『1on1をしろ』と言ってくれたので仕掛けました。マック、CJ(ジャクソン)が川崎戦もインサイド、リバウンドで存在感を出してプレーしてくれていたので、そこを信じて安心してシュートを打てました。またバスカンについては時間をじっくり使えたのが良かったです。しっかり立て直して、しっかり相手(のディフェンス)を引き出して、CJに(パスを)つなげられました」
同地区で優勝とチャンピオンシップ進出を争う首位との直接対決であり、中心選手の一人であるケリーがいない中であっても連敗は回避しなければいけない試合で16得点7アシスト――。3日前には川崎の徹底したディフェンスもあって、15本のフィールドゴールを放ちながら、わずか1本の成功に終わる大ブレーキだったが、その鬱憤を晴らすかのような姿である。ベンドラメはこの日も19本のフィールドゴールを放ったわけだが、気持ちを入れ直してコートに立ったことが功を奏したようだ。試合後に質問を送れば、彼から原点に戻ろうとする意志が感じられた言葉が返ってきた。
「川崎戦はシュートが入らなくて。でもやっぱり、自分の仕事はシュートを打つことです。積極性が無くなったら僕じゃなくなる。そこは吹っ切って入るまで打ち続けようと思って臨んでいました」
SR渋谷はBリーグ制覇を目指し、これまで血の入れ替えをしてきた中で、ベンドラメは数少ない生え抜き選手だ。Bリーグ初年度の新人賞を皮切りに、今ではキャプテンとしてチームを背負う立場である。ここぞの場面で彼のシュートは、チームに勢いや自信を与え、会場の雰囲気を変化させるスコア以上のパワーがある。
昨日の勝利でSR渋谷の通算成績は1勝2敗。得失点差では宇都宮に+38点とリードを許すが、今後を見すえる上で本日も必勝が求められる。全員でもう一度ディフェンスをやり抜くとともに、吹っ切れたキャプテンが2日連続で自分らしさを発揮できると、第2戦の勝利にぐっと近づきそうだ。
文=大橋裕之
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