2023.10.06

【JBA審判グループに聞く!(後編)】「W杯で貢献した日本人レフェリー・インストラクター・TOたち」

イタリア対ラトビアで行われた5−8位決定戦でコートに立つ加藤誉樹審判員 [写真]=fiba.basketball
バスケットボールコメンテーター

開幕前の恒例インタビューJBA審判グループに聞く!このインタビューは新ルールやJBA審判グループの取り組みについて紹介し、リスペクト文化醸成のためにスタートした企画の第4回。後編はFIBAワールドカップ2023(以下W杯)」で活躍したのは日本代表選手だけじゃない! 「W杯で貢献した日本人レフェリー」についてレポートします。
※各項⽬の映像・URL・文章は新シーズンへのルールの理解を深めていただく⽬的で使⽤しています。本インタビューで紹介している事象、選⼿、審判を批判や評価する⽬的のものではありません。

取材・文=井口基史

取材協力

前田喜庸(日本バスケットボール協会 審判グループ GM兼審判委員長)
JBA審判グループのゼネラルマネージャー。自身もBリーグ初年度からレフェリーとしてゲームに携わり、その後インストラクターとして後進の養成・評価を行ってきた。インストラクター部会長を経て、2023年度よりJBA審判委員長就任。

上田篤拓(日本バスケットボール協会 審判グループ シニア・テクニカル・エキスパート)
静岡県出身。bjリーグのプロレフェリー時代にはNBAレフェリーを目指し、日本人としては初となるNBAサマーリーグにてレフェリングを経験した。現在はJBA審判グループ シニア・テクニカル・エキスパートと国際バスケットボール連盟(FIBA)レフェリーインストラクターを務める。

世界の舞台で活躍する日本人レフェリー

ーーW杯では日本代表の躍進以外にも日本人レフェリーが活躍された点について聞かせてください。
前田 まずW杯沖縄グループフェーズの成功については、沖縄県や沖縄市の皆様をはじめ、ファンの皆様までを含む多くの皆様のおかげだと思います。特に私たちの所管となる競技の安定した進行・成立ということについて言えば、沖縄県バスケットボール協会はもとより、全国の都道府県バスケットボール協会、テーブルオフィシャル委員会の皆様のご協力なしには実現しなかったと思います。あらためて感謝いたします。これから始まるトップリーグでも同様に、バスケットボールファミリーのみなさんの貢献が欠かせませんので、引き続きよろしくお願いします。

ーーW杯開催による効果はレフェリーの皆さんにも及ぶことになりますね。
前田 日本バスケットボール協会(JBA)では2026−27シーズンから始まる「B革新」に向けてB.LEAGUEと共に10名のプロレフェリー採用を目指し、トップレベルのレフェリー育成に取り組んでいます。準備は簡単ではありません。ただファンの皆さんには楽しみにしていただき、また楽しんでもらえる環境作りのために、審判グループもチャレンジします。そんなタイミングのW杯で、全国のレフェリーを代表して、2人の日本人レフェリーが活躍してくれました。日本代表の活躍は想像を超える嬉しい結果でしたが、両レフェリーの活躍も想像を大きく超えてくれました。加藤レフェリーはファイナルフェーズのメンバーに選出。漆間レフェリーはファイナルフェーズの担当は無かったものの、ここまでの結果を残してくれたことに感謝したいです。また表舞台ではありませんが、上田篤拓氏もアジア人では唯一のFIBA公認レフェリーインストラクターとして映像チェックからレフェリーへのフィードバックなど、日本人のインストラクターがW杯に貢献したことも忘れてはいけません。

カナダ対アメリカの3位決定戦を担当した加藤誉樹審判員 [写真]=fiba.basketball


■加藤誉樹審判員担当試合
8月26日 ヨルダンvsギリシャ
8月27日 モンテネグロvsエジプト
8月28日 ニュージーランドvsヨルダン
8月30日 アメリカ vsヨルダン
8月31日 ニュージーランドvsメキシコ
9月3日 アメリカvsリトアニア
9月7日 イタリアvsラトビア 5-8位決定戦
9月10日 アメリカvsカナダ 3位決定戦

イラン対ブラジルを担当した漆間大吾審判員 [写真]=fiba.basketball


■漆間大吾審判員担当試合
8月26日 イランvsブラジル
8月27日 レバノンvsカナダ
8月29日 レバノンvsフランス
9月2日 コートジボワールvsフランス

上田 多くの方に知っていただきたいのは、彼らは開催国だから呼ばれたわけではないという点です。同じ開催国のフィリピンとインドネシアからはレフェリーが選出されず、前回W杯を経験した中国から招集がないなど厳しい狭き門です。日本のように複数レフェリーが選出された国は限られており、アジアゾーンからの招集をみても分かる通り、日本のレフェリーの評価は決して低くないという事を感じました。

【W杯レフェリー選出状況】
・W杯担当レフェリー 世界から合計44名選出(女性3名)
・各会場  11名ずつ(沖縄、ジャカルタ、アラネタコロシアム、モールオブアジアアリーナ)
・ファイナルフェーズ  44名~16名へ絞り込み(女性1名)
・アジアゾーンから招集 日本2名、韓国1名

今大会で活躍したレフェリーの皆さん [写真提供]=上田篤拓

新たなレフェリーの育成へ

前田 「プロレフェリーを若い時から目指したい」、という声が聞こえはじめてきたことは大きな影響です。決して目立つ存在ではなく、時には心ない言葉を浴びることもありますが、大舞台でレフェリングする姿が、全国のレフェリーを志す仲間にとっても大きな存在であることは間違いないと思います。あのような舞台で気後れすることなく、しっかりレフェリングする姿は全国のレフェリーも誇らしく思ってくれたはずです。

【加藤誉樹S級審判員JBA公認プロフェッショナルレフェリー・コメント】
 日本でも開催され、代表が大活躍を見せたワールドカップで、たくさんの素晴らしい試合を担当させていただけたことを大変光栄に思います。 世界最高峰のコートから得た経験や、学びを生かして、今後とも国内のひとつひとつのゲームを大切に担当していきたいと思います。

【漆間大吾S級審判員JBA公認プロフェッショナルレフェリー・コメント】
 男子代表の五輪出場権獲得で大きく盛り上がったバスケット熱を感じながら、国内男女トップリーグが開幕することに、今まで以上に喜びや責任を感じています。 W杯での経験を、今後担当するコート上で表現しながら、円滑なゲームになるように、また、バスケットボールの楽しさや魅力を伝える一つのギアとして、これからも精進していきます。

JBAは2023年8月1日付で阿部聖氏、有澤重行氏の2人とJBA公認プロフェッショナルレフェリーとして契約したと発表。加藤誉樹氏、漆間大吾氏に続き、3、4人目のプロレフェリーを誕生させている。Bリーグが掲げる2026-27シーズンBプレミア開幕に向けて「2026年までに10名のプロレフェリー採用」を目指しており、新シーズンから活躍する新たなプロレフェリーとレフェリー環境についても、引き続き注目しましょう!

B1の関連記事