2024.02.29
レギュラーシーズンの約3分の2を終えてリーグ全体のトップを走るのは、昨シーズンも開幕ダッシュに成功した三遠ネオフェニックス。シーズン中盤に失速した昨シーズンと異なり、今シーズンは第14節から16連勝も記録し、未だ連敗がない。中地区は昨シーズンチャンピオンシップ(CS)に駒を進めた川崎ブレイブサンダースと横浜ビー・コルセアーズが苦しむ中、シーホース三河とサンロッカーズ渋谷が久しぶりのCS進出に向けて調子を上げてきているが、リーグトップの得点力に加えてディフェンスも安定してきている三遠が2位の三河に9ゲーム差をつける独走状態となっている。
昨シーズンは4強が形成され、目まぐるしく順位が入れ替わった西地区では、混戦を制した勢いのままリーグ初制覇まで到達した琉球ゴールデンキングスが、今シーズンも第23節終了時点で首位。ただ、2位につける名古屋ダイヤモンドドルフィンズとは1ゲーム差しかなく、その名古屋Dは現在9連勝中と予断を許さない。勝率5割台の3位・島根スサノオマジックと4位・広島ドラゴンフライズも、上位の背中を射程圏にとらえる力を秘める好敵手。B1昇格1年目の佐賀バルーナーズと長崎ヴェルカの健闘も光り、昨シーズンと同様に激戦区の様相を呈している。2シーズン続けて西地区がワイルドカード枠を独占する可能性も大いにありそうだ。
かつて激戦区とされていた東地区は、昨シーズン歴代最高勝率の記録を塗り替えた千葉ジェッツが安定感を欠く傍ら、鉄壁のディフェンスを誇るアルバルク東京が開幕節から一度も首位の座を譲っていない。しかし、そんなA東京も2月のバイウィーク直前の6試合は千葉J、琉球、三遠に1つずつ黒星。A東京よりも失点が少なく、開幕から一貫して地区2位を守り続けている宇都宮ブレックスに勝率で並ばれた。両者ともに、B1初となる3度目のリーグ制覇を狙う立場とあって、今後の展開から目が離せない。
節ごとの順位の変遷を見ていくと、東地区は第3節以降、秋田ノーザンハピネッツが6位から一時3位に浮上した程度で、その他は大きな変動が見られない。それに対し、中地区と西地区はアップダウンを経てきたチームが多く、特に西地区は順位の入れ替わりが激しい。リーグの勢力図が塗り替えられたことを如実に示すと同時に、西地区はまだ多くのチームにチャンスがあることを示す材料と言うこともできるだろう。
選手に目を向けると、今シーズンはBリーグの歴史で大きな分岐点になり得る事象が発生している。開幕から得点を量産してきた河村勇輝(横浜BC)と富樫勇樹(千葉J)、安藤誓哉(島根)が並み居る外国籍選手を抑えて、ランキングトップ3を独占。現在はシーズン序盤に5試合欠場したペリン・ビュフォード(島根)が規定試合数に達し、得点だけでなくアシストでもランキング上位に割って入っているが、島根から仙台89ERSに移籍した阿部諒も得点が飛躍的にアップするなど、日本人ガードの得点力がチームのオフェンスで最重要オプションとなる傾向がみられる。帰化選手も増加の一途をたどる中、日本人選手が得点のタイトルを獲得すれば、日本バスケ界全体に与える影響は計り知れず、例年以上に個人タイトル争いに注目していく必要がある。
CSに向けてますます熾烈になっていく戦いは、1つの勝ち負けで状況が大きく変わる可能性もある。その意味で、カギを握る存在になりそうなのが京都ハンナリーズだ。チャールズ・ジャクソンや岡田侑大といった的確な補強で躍進を期待されたにもかかわらず、第7節の時点で1勝11敗と大きく出遅れ、順位は未だ西地区最下位という状況。しかし、シーズン中盤以降は宇都宮や琉球に土をつけ、島根からは2勝をもぎ取っている。西地区上位の4チームは全て京都との対戦を1試合ずつ残しており、混戦模様の西地区を京都がかき回せばCS進出争いはさらに白熱していくだろう。京都以外にも、かつての滋賀レイクス(現B2)のように終盤に急成長を遂げるチームの出現を期待したい。
もう1チーム、SR渋谷も注目チームに挙げておきたい。第6節まで2勝9敗と、京都と同様にスロースタートだったが、12月に9勝3敗の好成績を収めるなど、着実に順位を上げてきた。日本代表の躍進に大きく貢献したジョシュ・ホーキンソンの存在もさることながら、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチはA東京をワイルドカードから優勝に導いた実績があり、シーズンを通してのチーム作りに長けている。CSの枠に滑り込むことができれば、その後はさらに楽しみになってくる。
文=吉川哲彦
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