6時間前

2024−25 EASL序盤戦レポート【琉球ゴールデンキングス】…クラブ戦略とともに「沖縄から世界へ」

国際ゲームの経験が豊富な琉球の岸本隆一 [写真]=EASL
バスケットボールコメンテーター

Bリーグと並行しながらHOME&AWAYで戦う、アジア最高峰の大会・EASL(東アジアスーパーリーグ)に参戦中の広島ドラゴンフライズ(日本1位)と琉球ゴールデンキングス(日本2位)のEASLにおける現在地を、今シーズンよりEASL公式アナリストを務める井口基史氏がレポートする。

文=井口基史

EASLを誰よりも知るキングス

 2022−23シーズンに、悲願のBリーグ制覇を成し遂げた琉球ゴールデンキングス。2023年8月に掲げた新たな挑戦は『沖縄を世界へ』。琉球の白木享社長は「現状維持は衰退」とし、“現状に満足せず、B.LEAGUEを先導するクラブとして、だれも想像していない世界観にキングスが挑戦していかなければいけない”」と強いメッセージを出しています。EASLには3年連続で出場しており、コロナによる大会休止後では最多出場になりますので、この大会を誰よりも知るチームです。

【キングスのEASLの前進大会を含めた出場歴】
・2017−18シーズン「The Super 8(スーパー8)」:4位
・2018−19シーズン「The Terrific 12(テリフィック12)」:優勝
・2019−20シーズン「The Terrific 12(テリフィック12)」
・2022−23シーズン「EASL Champions Week」:4位
・2023−24シーズン「EASL 2023-24シーズン」

 このオフには、EASLだけにとどまらず、日本プロバスケ史上初となるヨーロッパ遠征(イタリア)に行い、2戦とも敗れはしたものの、ヨーロッパバスケのリアルを体験し、沖縄と世界の距離を縮めています。

 【琉球ヨーロッパ遠征(イタリア)の試合結果】
●試合結果
・9月7日
琉球 69−78 トラパニ・シャーク
・9月8日3位決定戦
琉球 71−80 デルトナ・バスケット

●大会最終結果
1位:パルチザン・ベオグラード(セルビア)
2位:トラパニ・シャーク(イタリア)
3位:デルトナ・バスケット(イタリア)
4位:琉球ゴールデンキングス(日本)

アジアNo.1の球団へ

 ゼネラルマネージャーの安永淳一は「キングスはこれから、アジアを代表する球団といえば琉球ゴールデンキングス、と言われるような『アジアNo.1の球団』を目標にします」と明言していますし、桶谷大ヘッドコーチは「キングスを通じて日本のバスケの発展に貢献したい」と常日ごろから公言し、東アジアスーパーリーグ頂点へのハングリーさを隠しません。キングスファン・ブースターにおいてもヨーロッパ遠征や、アジア各国のアウェーゲームの会場でも声援を送る姿がみられ、「沖縄を世界へ」をキングス一丸で体現しています。

EASL制覇を目指す琉球の桶谷大HC [写真]=EASL

EASL序盤戦のキングス

 バイウィークまでのBリーグでは7連勝中、EASLも含めると8連勝中と、昨シーズンは届かなかったEASL FINAL4へ視界良好! 初戦のメラルコボルツ戦では昨シーズンまで所属していた、アレン・ダーラム選手(キングス戦後に退団)と沖縄アリーナでの再会もあり、話題を集めました。コーチングスタッフへの取材によると、情報が少なく、準備時間の限られた水曜ゲームをこなしていくEASLでは、対戦相手のスカウティングなどの準備が難しいと、明かしてくれました。しかし序盤戦2試合ともに1ポゼッションゲームを制しており、内容よりも勝つことが大事なこの大会の戦い方を、キングスは知っています。

【ここまでの琉球のEASL戦績】11/14時点
・10月16日(水)沖縄アリーナ
〇琉球 77−74 メラルコボルツ(フィリピン2位)●
・10月30日(水)スタジオシティ(マカオ)
〇琉球 96−93 マカオブラックベアーズ●

なるか。平良彰吾の“B3ドリーム”


 10月5日、三遠との開幕戦でPG伊藤達哉選手のケガによる離脱をうけ、横浜エクセレンス(B3所属)より、期限付移籍で加入した平良彰吾選手は、すでにEASL2戦目・マカオブラックベアーズ戦でデビュー済み。千葉県出身の平良選手は、ご両親が那覇出身で、父の平良勝利さんは豊見城高―拓殖大―住友金属でプレーし、沖縄初の男子日本代表でもあったという、沖縄バスケの申し子です。当初は約1カ月の期限付移籍の発表でしたが、ファイトする姿勢を前面に出したディフェンスで、沖縄アリーナを何度もどっかんどっかんいわせ、移籍期間をシーズン最後まで延長するという、チャンスをもぎ取りました。

 平良選手は1つのシーズンでB3からB1へステップアップし、B1だけでなく、東アジアスーパーリーグまで経験するという、絵にかいたようなB3ドリームの最中ですが、万が一、キングスがEASL初制覇するようなことになれば、前人未到のB3から東アジアの頂点まで1シーズンで駆け上がることになります。

 このB3ドリームを成し遂げれば、沖縄のバスケットボールプレーヤーとB2、B3カテゴリーの選手たちにも、夢を与えてくれる存在になるでしょう。「夢あるな!といえば平良彰吾!」と呼ばれる日は近いです。

EASLでの経験を日本代表へ


 先日行われた、「FIBAアジアカップ2025予選」Window2には、アレックス・カーク選手と脇真大選手が招集されました。カーク選手は帰化枠として、モンゴル戦での日本勝利に貢献してくれましたが、脇選手は惜しくも2試合ともロスター入りはならず。キングスの未来として、キングスファン・ブースターから大きな期待が集まる脇選手ですが、EASLメディアデーではアジア各国での食事について、不安の声を漏らしていました。今大会を通じて、遠征などコート外の経験が、日本代表選出された際に、生かされるのは時間の問題でしょう。またコート内においても、短い準備で結果を出すことが求められるEASLゲームと代表合宿は似たシチュエーションともいえ、次回のWindow3(2025年2月)と、アジアカップ本戦(2025年8月)での日本代表ロスター入りを、後押ししましょう!

メディアデーで脇真大二インタビューする井口氏 [写真]=EASL

この3戦目が勝負だ!

 12月4日に行われるEASL3戦目、釜山KCCイージス(韓国1位)はアウェーでの試合となりますが、個人的には琉球、広島ともに、韓国勢との対戦になるこの3戦目こそが、EASLファイナル4進出への大きなポイントになると思っています。

 昨シーズンの韓国チャンピオンであるKCCイージスですが、Bリーグと同じく代表戦で中断となった韓国プロリーグのKBLではここまで4勝5敗(11月14日時点)と負け越し。EASLでもいまだ未勝利のままと、好調とは言えません。ただ日本勢との戦いになると特別な力が出るのが韓国勢ですし、しかもアウェーですので油断はできませんが、KCCイージスとのグループリーグでの対戦はこの1戦のみですので、ここで勝利するとFINAL4が一気に近づきます。

賞金金額を再確認…

 アジアのビッグクラブになりつつある、琉球ゴールデンキングスとはいえ、EASLの賞金額は無視できません! 念のためにもう一度EASLの賞金を記しておきますので、サラッと。サラッと。見ておきましょう! ちなみに皆さんご存じかと思いますが、千葉ジェッツはこの優勝賞金を獲得した後に、渡邊雄太選手を獲得し、今に至ります…。

【EASL 2024−25シーズンの賞金配分】
1位 100万ドル(約1億5400万円)
2位 50万ドル(約7700万円)
3位 25万ドル(約3850万円)
(為替レート11月25日時点参照)

3度目の正直なるか

 昨シーズンのEASL・FINAL4はフィリピン・セブ島で行われ、現地でスカウティングさせてもらいました。街には大会を歓迎する装飾があふれ、アリーナに続く道には、千葉ジェッツ富樫勇樹選手のポスターが、ずっと連なって飾られているのを見てきました。そしてファイナルでは、現地ファンから富樫選手へ送られた「MVP! MVP!」の大きなチャントに鳥肌が立ちました。キングスファン・ブースターの皆さん、岸本隆一選手のポスターを海外の街でも飾ってもらいましょう! そして現地ファンにも「MVP! MVP!」や「ゴーゴー! キングス!」のチャントを起こさせるぞ!

【バイウィーク明けのEASL日本勢の試合】
●グループA
12月4日(水)19時10分〜(日本時間)
広島ドラゴンフライズ vs 水原KTソニックブーム(@水原KTソニックブームアリーナ)

●グループB
12月4日(水)19時40分〜
琉球ゴールデンキングス vs 釜山KCCイージス(@沖縄アリーナ)

※U-NEXTにて全試合を独占ライブ配信

●EASL 2024-25シーズン ゲームスケジュール→ https://www.easl.basketball/schedule

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