2022.09.07

競技の垣根を超えた「東京ユナイテッド」共創宣言の真意を両クラブのキーパーソンに聞く

「東京ユナイテッド」共創宣言について、東京武蔵野ユナイテッドFCの福田氏(左)、TUBCの家本氏(中)、宮田氏(右)に話をうかがった [写真]=TUBC
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 今シーズンからB3参入が決まっている東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(TUBC)と、JFL(日本フットボールリーグ)に所属する東京武蔵野ユナイテッドFCがメインとなる『東京ユナイテッドフットボールファミリー』とが、東京ユナイテッドグループとして連携・共創していく『東京ユナイテッド』共創宣言を行った。

 東京ユナイテッド宣言には、 “東京”(THEHEART OF TOKYO)を代表するクラブとして、東京のスポーツの社会的価値向上を社会的使命とし、「良き社会人たれ、良きアスリートたれ」をモットーに掲げ、「文武融合の実践」を体現することで、日本の突破力となりうるタフネスとレジリエンスを兼ね備えた人材を育成・輩出することを宣言している。

 また、クラブの活動全体を通して、コロナによって失われた人と人、人と企業、人と地域といったさまざまな繋がりを取り戻し、強化・発展させる。と記されている。

 そこで今回の発表について、東京武蔵野ユナイテッドFC代表の福田雅、TUBC代表の家本賢太郎、今シーズンからTUBCの一員となりスポーツディレクターを兼ねる宮田諭の各氏に話を聞いた。

“ユナイテッド”とはアイデンティを共有しつつパーソナリティはバラバラ

 クラブ名の由来について答えてくれたのが福田氏。今回バスケクラブとのユナイト(団結、一体化)を発表したが、実はその理念はスポーツ以外にも及んでいるという。

「もともと東京ユナイテッドというクラブ名は“あらゆる価値をユナイトする”という思いが込められています。そこから何か大きな価値を生んでいこうという概念があって、当初、僕がサッカー出身だからサッカーからスタートしましたけれども、同時に公認会計士でもあるので、いわゆる専門家事務所、弁護士とか会計士とかそういうものも同じブランドでやってみて。全然異業種で全く関わりがないようなものも同じブランドで同じ理念で本当に人と人とがつながることによって、新たな価値を生んでいくのも面白いんじゃないかなということで、東京ユナイテッド総合事務所という名のもとに、弁護士法人、税理士法人、さらに司法書士法人といった名前で専門家事務所も作っています」

 福田氏はユナイテッドの理念についてさらに熱を帯びて解説してくれる。

「例えばメガバンクのようなホールディングカンパニーのように、そこで一元管理をして子会社が従っていくという組織がありますが、こういうやり方ではオリジナリティが失われてしまいます。私たちが目指すものとは対象的だと思うのですが、やっぱり独自性が大切。サッカーにはサッカーの文化があり、バスケにはバスケのやり方がありますから、だからどっちが主でほかが従という関係ではありません。リスペクトを持って、それぞれの文化を尊重しながら互いを高めてく。そんなグループを作りたいと思ったのがきっかけです」

 家本氏がこの考えに共感。「TUBCのクラブ理念にはフランチャイズとなる東京ベイエリアで『MAKE:UNITED“つながり”を創る』があります。具体的にはコロナ禍によって失われた様々なつながりに対して、バスケットボールやエンターテイメントを通じて新たな出逢いを生み出し、グローバル都市TOKYOにあたらしい人と人とのつながり(コミュニティ)を生み出すクラブを目指すのですが、まさに同じ理念を持たれていると感じました」。

「クラブ運営の先輩にいろいろなアドバイスをいただければ」とTUBCの家本代表は期待を寄せる

 先に声をかけたのは福田氏ということなのだが、家本氏は「TUBCでも同じようなことをできないかとイメージしていましたから、資本関係でチームやグループができていくのではなく、理念に沿う形でパートナーシップを築いていきたいと考えています。私たちは走り出したばかりのクラブですが、今年の10月9日に有明アリーナで開幕戦を迎えます。当然我々単独でできることも限られていますから、競技を超えて皆さんの様々な力、知見をお借りして。『ここはこういうことに気をつけた方がいいよ』、『チームの運営や経営面でこういうとこは見逃してはいけないよ』といったアドバイスもいただけるのではないかと期待もしています」

 そのできたばかりのクラブに移籍してきたのが宮田氏。現在44歳の大ベテランがこれまでの経験を踏まえてどのように東京ユナイテッドを見ているのだろうか。

「福田さんのことを初めて聞いたときに、自分に似たところがあるなって思いました。変わっているというか(笑)。僕もバスケにのめり込んでやってきた一方で、企業人としての役目をチャレンジしてきて、それをデュアルキャリアと評価していただいていますが、多様性のある価値観の中で頑張っていくことにも共通点になるのではないかと思いました。これは自分の新しいチャレンジとして本当に自分に合っていると思いますし、この歳でチャレンジさせてもらえるという魅力的な機会をいただけるのはありがたいお話でした。わりと時間は掛けさせて決断はさせていただいたんですけど、ただバスケというコンテンツの魅力というよりは、お声を掛けていただいた人たちの人というか、言葉を選ばずに言うと『面白そうだな』と思って、挑戦することに決めました」

今後の活動は白紙。真っ白なキャンパスにさまざまな絵を描いていく

 東京にはサッカーもバスケもすでにトップリーグで活動するクラブが存在する。それらが東京全体をフランチャイズと位置づけるのと対照的に、“東京ユナイテッド”はサッカーが文京区と武蔵野市、バスケが江東区を中心に活動を行っている。スポーツだけでなく、日本中のエンターテインメントの中心となる首都東京。地域密着を標榜としても地元意識の薄さもクラブ運営には足かせになるかもしれないこの土地で、大企業をスポンサーに持たない小さなクラブがどのようにアイデンティを高めていくのだろう。

 福田氏は今後の活動について、「まだ白紙の状態です。ただこれまでもあったようなコラボレーションのようにはしたくないというか、形にはめたくないですね。まずはサッカーとバスケの人間が顔合わせをして、そこからどんなシナジーが生まれるのか、どんなシナジーを生むためにはどんな施策を打っていくのが良いか、というところからスタートします」という。

 さらに「真っ白なキャンバスだから、これからいろいろな絵が描けるし、デザインもできます。既成概念に縛られることなくさまざまなことにチャレンジできれば。『それ面白いじゃん! やってみようよ!!』と当たり前にことをするのではなく、その都度考えていけばいいと思っています。むしろゼロベースだから何でもできる。例えば、宮田君がサッカーの強化部に入ってみるとか、そういうことがあってもいいと思います。今まで誰もやってこなかったことをやってみて、それで誰もしたことのないケーススタディとして残していければと思っています」と力を込める。

手振りを交えてユナイトの理念を語ってくれた福田氏 [写真]=TUBC

 家本氏は短期的な活動ではなく、人の成長を促すためにも長い目を持って活動を続けることが大切だと言う。

「東京ユナイテッドの共創宣言は1、2年の取り組みを何かして終わりになるものではない。この理念自体自分たちの存在意義だと思っていて、関わり人たちを育てていく、いろいろな経験をして成長していくことにもつながると思っています。例えば1つのスポーツ、ジャンル、専門分野だけでは決して狭いとは言えないですが、やはり限りがある。共創宣言の理念に基づけば輪が広がっていきますし、それによって人が鍛えられ、強くなるのは21世紀らしいのではないかと。バスケで言えば多様性をとても重視していて、それぞれのバックグランドで様々な経験を持った人たちのつながりでクラブは成り立っています。長い目でしっかりと人が中心となって進んでいく取り組みをしていきたいと思っています」

 まるで引き合うかのように「東京」と「ユナイテッド」という共通のブランド名を持つクラブが、競技は違えども、共通した理念のもとに活動をスタート。今後は人材交流などをきっかけに、どのような活動をしていくかを探っていくという。もちろん、サッカーの“ユナイテッド”がクラブの成り立ちでは先輩だが、どちらが主の立場ではなく、理念を共有するパートナーとして、互いのファン、サポーター、ブースター、関係者を巻き込んでいくことになるだろう。今後も2つに“東京ユナイテッド”に注目だ。

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