2018.08.05

ケガの功名でチームもキャプテンも成長した札幌山の手の明日

3回戦で22得点16リバウンドを挙げた東藤なな子 [写真]=兼子愼一郎
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」女子1回戦の城南高校(徳島県)戦を終えた夜のことだ。札幌山の手高校(北海道)の東藤なな子はミーティングでキャプテンを降ろされた。

「だから昨日の(2回戦)京都精華学園(高校/京都府)戦は、私、キャプテンじゃなかったんです。ただ上島(正光)コーチから『この試合で(キャプテンの座を)取り返してこい』って言われて、昨日は『やってやる!』という気持ちでプレーしました。そういう意味では大会が進むにつれて、自分自身が強くなったように思います」

 その言葉どおり、3回戦の県立津幡高校(石川県)戦では22得点16リバウンドと、チームを引っ張るキャプテンシーを見せた。特に16リバウンドという数字は、東藤の身長が174センチであることを考えると、相当高い意識を持っていなければ取れない数字である。その点については東藤自身も「リバウンドは行けたと思うし、たとえ取れなくてリバウンドに行くという気持ちは最後まで出せたと思います」と胸を張る。その意図を彼女はこう答えた。

「行かずに後悔したくなかったし、札幌山の手のバスケットで一番大事なのはリバウンドだと思っているので、そこは誰にも負けたくないし、たとえチームメートと重なっても渡さないという気持ちでいます。今日もそこをサボらなかったことは良かったと思います」

チームトップ16リバウンドを挙げるなど体を張った [写真]=兼子愼一郎

 1年次から札幌山の手のスタメンに名を連ねていた東藤だが、当時は今とは別人のように細い体つきだった。しかし2年の歳月を経て、今では札幌山の手のバスケ哲学を体現できる肉体を手に入れている。

「4月頃、左ひじを脱臼してしまって、その間トレーニングをしていたらお尻周りの筋肉が強くなって、当たりにも負けないようになったんです」

 でん部の強化が結果として東藤のリバウンド力をさらに高めたというわけだ。

 今大会は3回戦で津幡に72-76で敗れて、去ることになった。次の目標はウインターカップだが、その北海道予選中に東藤はU18女子日本代表として「FIBA U18女子Asian選手権大会」に出場することが濃厚のようだ(現時点で正式な発表はされていない)。上島正光コーチは「東藤もいないし、主力センターの田村春奈もケガをしたので(ウインターカップに)出られないかもよ」と自嘲気味に言うが、東藤はチームメートを信じている。

「田村が前十字を切った時は自分も『(ウインターカップの北海道予選が)ヤバい』と思いました。でもインターハイに来るまでの期間でほかの3年生や下級生たちがグッと成長してきて、頼りがいが出てきたんです。インターハイを戦っていても、もう自分一人じゃないんだ、チームで戦えるんだと思えましたし、たとえ私がいなくても一人ひとりが力を出せば北海道予選は大丈夫だと思います」

 もう一人じゃない――。インターハイを通じて、そう思えるチームメートたちの成長に触れられたことは、キャプテンとしての精神的な強さを身につけたことと併せて、東藤にとって何よりの収穫だったかもしれない。

文=三上太

BASKETBALLKING VIDEO