Bリーグ公認応援番組
『B MY HERO!』
試合時間は残り5秒、スコアは67-65。決めれば逆転というシチュエーションで放たれた広島県瀬戸内高校の主将・吉村海斗の3ポイントシュートは、無情にもリングに弾かれた。これが広島県瀬戸内のラストシュートとなり、ウインターカップ初出場となる同校の挑戦は、1回戦で光泉高校に69-65と惜敗する形で幕を閉じることになった。
非常に惜しいゲームだっただけに、「あのシュートが入っていれば…」という思いがあってもおかしくない。しかし、広島県瀬戸内を率いる川西英昭コーチは「あいつ(吉村)がラストシュートで良かったと言うとおかしいですが、すっきりした。みんなが納得したと思います」と笑みを浮かべながらそのシーンを振り返った。
笑顔の背景には、主将に対する絶対的な信頼があった。吉村は1年次から持ち前のキャプテンシーでチームをけん引し、練習でも一番に声を出す選手だった。「うちは吉村を中心にやってきたチーム」とは副主将である前西竜馬の弁。しかし、ここ1年は腰のケガの影響で満足にプレーすることができず、練習にも参加できなかったという。長期間の負傷による離脱、普通なら気持ちが腐ってしまいそうな状況にあっても、吉村は「チームをしっかりと見てくれて、とても助けられた」と前西は語る。
頼りになる主将は全国の舞台でもチームを支えた。第3クォーター半ば、続けざまに放たれる光泉の3ポイントシュートでゲームの流れが傾きかける中、ベンチから投入された吉村がスティールからの速攻でバスケットカウントを決めて、悪い流れを断ち切った。ケガに苦しんだ吉村が見せたハツラツとしたプレーに、前西は「ああいう気持ちのこもったプレーは自分たちも見ていてうれしかった」という。
そんな吉村が放ったからこそ、川西コーチも前西も、決まらなかったラストシュートを笑顔で振り返ることができる。
「終いは悪くなかった」(川西コーチ)
「最後はいい形で終われた」(前西)
2人が同じような言葉を残したのは決して偶然ではなく、チーム全員が同じ思いを共有していたからだろう。
今大会は多くの1、2年生がメンバー入りした広島県瀬戸内。涙を浮かべることなく、笑いながらウインターカップを後にした先輩たちの姿から多くを学び、1年後に再びこの舞台に戻ってくることを期待したい。
文・取材=峯嵜俊太郎