2019.12.24

敗戦の中にも充実感…とわの森三愛の3年生が残した財産

キャプテンを務めた3年生の清實茉宝[写真]=須田康暉
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 名古屋女子大学高校(愛知県)のような「33年ぶり」の出場というのも、もはや“初出場”のようなものだが、「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」における正真正銘の“初出場”は男女合わせて19校。そのうち女子の酪農学園大学附属とわの森三愛高校(北海道)と新潟産業大学附属高校(新潟県)が1回戦で戦うことになった。

 結果から言えば、76-68で新潟産業大学附属が勝利した。創部が2004年の同校は、高校総体への出場経験もないため、今日の勝利が全国初勝利となった。両校はともに同じ道県内に全国トップレベルの強豪校を持ち、そう簡単に全国大会に出場することはできない。それでも両校は常にチャレンジし続けてきた。その結果、今年度から変わったレギュレーションによって、道県2位でもウインターカップへの出場が叶った。その利を生かさないわけにはいかない。

 序盤はとわの森三愛のペースでゲームは進んだ。持ち味の粘り強いディフェンスと、カッティング、ドライブ、キックアウトと、背の低さを感じさせないのびのびとしたバスケットでリードを奪ったのだ。しかし後半、新潟産業大学附属の留学生、エマニュエル・メリー・レイチェル(2年)らの高さを封じこめられず、逆転負けを喫してしまう。

「出だしは自分たちのプレーを出せて、このまま行ったら勝てるかなと思ったんです。もちろんゲームが進むにつれて、自分たちのプレーを出せないときもあると思っていたんですけど、それを最小限に抑えることができませんでした。そこからズルズルと行く、自分たちのいつもの悪いクセが出てしまって……悔しいです」

 とわの森三愛のキャプテン、清實茉宝(3年)はゲームをそう振り返る。

 それでも自分たちが取り組んできた粘り強く戦う姿勢を最後まで貫くことができたからだろう。涙を流しながらも、どこかサッパリとした、充実した表情も見せていた。清實が示した充実感はきっとチームの来年以降につながるはずだ。

3年生が示した充実感は、後輩たちに受け継がれるだろう[写真]=須田康暉

 北海道の女子といえば、すぐに札幌山の手高校の名が浮かぶ。しかしその札幌山の手も前回大会は北海道予選で敗れて、出場できていない。レギュレーションに関わらず、とわの森三愛にも道ナンバーワンになるチャンスがまったくないわけではない。

「私たち3年生は下級生のときから試合に出させてもらって多くの経験を積んできました。チームに与える影響についてもずっと考えてきたし、チーム全体を支えるための雰囲気作りや、チームをいい方向に持っていくために上級生が何をすべきかは後輩たちに残せたと思います」

 ウインターカップ初勝利は達成できなかった。しかしウインターカップに出場するために、そしてそこで勝利を挙げるために日々取り組んできたことは勝利以上に大切な、チームの財産となる。

 清實自身の目標は「札幌山の手を倒して全国に出る」ことだったと明かす。その目標も、ウインターカップ初勝利の夢も、彼女の背中を追ってきた後輩たちがきっと叶えてくれるはずだ。

次は北海道1位として全国の舞台へ[写真]=須田康暉

文=三上太

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