2020.11.02

【動き出した高校バスケ】開志国際のエースとWキャプテンが語るウインターカップへの思い。「冬に強いところを見せたい」

開志国際を支える左から小畠一真、ジョーンズ大翔、石原史隆、オコエ・ピーター・ジュニア [写真]=小永吉陽子
スポーツライター

 高校バスケが動き出した。インターハイが中止になった今年、高校バスケ界の希望となっているのが12月に開催する『ウインターカップ』だ。日本一を目指す強豪校はコロナ禍の中、どのようにチーム作りを進めているのか。チーム紹介の第3回は、冬の初優勝を目指す開志国際高校(新潟)。富樫英樹コーチとエースのジョーンズ大翔、ダブルキャプテンの小畠一真石原史隆にここまでのチーム作りとウインターカップにかける意気込みを聞いた。

富樫英樹コーチ「前向きな選手たちに助けられた」

富樫コーチはコロナ禍の中で成長した選手たちに「逆に励まされた」という [写真]=小永吉陽子


 10月上旬。新潟県胎内市バスケットボール連盟が主催する交流会が開催された。昨年は交歓大会として『胎内カップ』の名称で行われたが、今年は感染症対策のために一般の観客は入れずに規模縮小しての開催。そして、福岡第一が3勝、開志国際が2勝、東山が1勝、福島南が3敗という結果で幕を閉じた。

 どのチームにも負傷者がいたために万全な状況ではなかったこともあり、勝敗そのものより「現在地の確認」の要素が強い試合となったと言えよう。それでも参加チームからは「やっぱり真剣勝負は楽しい」との感想が出てきて、高校バスケの日常が戻りつつあることに感謝することに。地元胎内市から参加した開志国際の富樫コーチは、「ようやく、全国的なレベルを把握できる試合ができました。どのチームもここからどう伸びていくかだと思います」と笑顔で答えた。

「ようやく」の言葉の裏には、ここまでの苦労が垣間見えた。開志国際の場合、富樫コーチが同校の教頭を務めるため、管理職として感染予防対策の会議や学校のカリキュラム変更等の職務に追われて多忙を極めていた。「バスケットを指導する疲れとは違い、未知のことで正解がわからない中での手探りだったので、充実感のない疲労でした」と語る。

 そんな中、選手たちは全体練習ができない時期に自主性を身につけてきた。ほとんどの選手が寮生活を送っている開志国際では、3月には生徒を一時帰省させ、待機期間を経たあと、4月中旬からは学校の方針によって体育館を開放。人数制限や時間制限、換気や消毒などの感染症対策をしながら、選手たちが自主的に体を動かしてきたのだ。

 こうした、選手主導で動く姿を見て富樫コーチは、「逆に選手に励まされた」と言う。

「大会の有無もわからず、自分たちの実力もわからず、日々の感染症対策に追われ、どうやって強化していこうかと暗闇の中にいたとき、子どもたちが自主的に動く姿を見て元気づけられたのが本音です。インターハイがなくなり、ウインターカップに関しては『開催する』ことを信じるだけでしたが、選手たちは誰一人としてあきらめていなくて、前に進んでいたのがうれしいですね」

 ここまで開志国際は、学校の方針で県外遠征は禁止だったが、他県から迎え入れることは可能だったため、県内の新潟医療福祉大や、北信越の東海大学付属諏訪(長野)、北陸学院(石川)、北陸(福井)と練習試合を行ってきた。そして10月上旬に行われた胎内市バスケットボール連盟が主催した交流会にて現在地を知り、ウインターカップ予選に挑む。

「ここに来て、1年半もの長い間、負傷でコートに立てなかったセンターのオコエ・ピーター・ジュニアが復活して大きな戦力となっています。ガードとのコンビネーションはこれからなので、ここから面白いチームを作りますよ」と語る富樫コーチだ。

小畠一真「日本一の景色を後輩たちにも見せたい」

 インターハイ中止と聞いたときはショックで悲しい気持ちもあったんですけど、いろいろな報道を見て「中止だろうな」と思っていたので、そこは気持ちを切り替えて、ウインターカップだけはやってほしいと願って練習をしてきました。

 県外に出ての試合はできませんでしたが、県内の大学生や、東海大諏訪、北陸学院、北陸といった北信越の強豪チームが来てくれて試合ができました。そこで自分たちのダメなところを改善する話し合いができたので、いいモチベーションでやれていると思います。チームの課題はもっとトレーニングをして体力をつけることと、シュート力を上げることです。

 今年はアウトサイドが強いチームで、そこにセンターのピーター(オコエ・ピーター・ジュニア)が復活したので、チームは強くなったと思います。今年はバランスがいいチームで、そんな中で僕と石原がダブルキャプテンとしてチームを引っ張っていく役割をしています。

 僕たちは1年生のときにインターハイで日本一を経験しました。優勝を経験したのは自分たちの代で最後なので、後輩たちにも日本一の景色を見せたい思ってやっています。

石原史隆「ダブルキャプテンの僕たちが引っ張ります」

ダブルキャプテンの一人でPGの石原史隆 [写真]=小永吉陽子


インターハイがなくなったときは本当に残念な気持ちでした。でも、そこまで落ち込むことはなく、ウインターカップがあることを信じてやってきました。1年生のときにインターハイで優勝させてもらったけど、これまで開志は冬に勝てていないので、自分的には冬にかける思いが強いです。今年こそは冬を獲りたい思いでやっています。

自粛期間中は時間ができて、普段やっていなかったことを練習できるいい機会だったので、ウエイトトレーニングやストレッチをしっかりして、当たり負けしない体を作ろうとやってきました。

 今年は自分と小畠がキャプテンをしています。僕ら2人があと5点ずつ取れればチームはもっと強くなれるので、キャプテンの2人が積極性を出してチームを引っ張ろうと言いながらやっています。これからウインターカップ予選、そしてウインターカップに向けて、チームが一つになって戦います。

ジョーンズ大翔「今年は自分がチームを支える」

「僕たちは今まで冬に勝てていないので、ウインターカップで勝ちたいです」とジョーンズ大翔 [写真]=小永吉陽子


 インターハイが中止になりましたが、中止になったことはあまりネガティブには考えていません。自分は練習を始めた時に捻挫をしてしまい、練習ができない期間があったんですけど、その間はトレーニングをしていたので体作りができたし、今は体力が戻ってきて、ウインターカップに向けて頑張っています。

 自分は1年生のときから試合に出ているので、今年は自分がチームを支えることを意識しています。チームの課題は後半にオフェンスの流れが止まってしまうときがあるのと、自分の課題はポイントガードとしてターンオーバーが多いので、ゲーム全体の流れをもっと見ることです。ウインターカップまでみんなで練習して課題を克服していきたい。僕たちは今まで冬に勝てていないので、ウインターカップで勝ちたいです。

文・写真=小永吉陽子

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